第4回「自分の意見を通したいときは、まずは相手の意見を肯定する」を読む
社会人になると、謝らなくてはいけない場面に何度となく遭遇します。自分に落ち度があることもあれば、まったく落ち度がないにもかかわらず、謝らざるを得ないシチュエーションにも出くわすこともあるでしょう。
そんなとき、あなたはどう振る舞うでしょうか。ミスや謝罪の場面で、「相手を納得させる謝罪ができるかどうか」はその後の評価を大きく左右する、重要なファクターです。
謝るときに大事なのは、「謝罪の気持ち」「経緯と理由」「今後の対処」の3つが、きちんと相手に伝わることです。
これら3つが伝わることで、相手の怒りもトーンダウンし、着地点が見えてきます。ただし、話の順番や伝え方を間違えると、怒りの炎に油を注ぐことになるので細心の注意を払う必要があります。
自分に落ち度があった場合の謝り方
では、自分に落ち度があった場合と、そうでない場合の2パータンに分けて見ていきましょう。まずは自分のせいで相手を怒らせてしまった場合。
順番としては、最初に「謝罪の言葉」を伝え、次に「なぜ、こんなことになってしまったか」という理由を伝えます。この順番は決して違えてはいけません。謝るより先に事情説明をしても、「なるほど。君にはそんな事情があったのか。だったら仕方がないよ」などと言ってくれる人はいません。相手はより一層腹を立て、「謝りもせず、言い訳するとは何ごとか」と叱られるのがオチです。
まずは相手が納得するまで、ひたすら謝る。このとき、表情や声のトーンにも気をつけましょう。決してかっこつけたり、ふてくされたりしてはいけません。
不祥事を起こした企業の謝罪会見を思い出してください。普段は偉い立場にあるであろう人たちが集まり、うなだれ、深く頭を下げますよね。その姿はみっともなければみっともないほど、「しかたない、許してやろうか」という気持ちにつながりやすくなります。逆に顔色ひとつ変えずクールに「はい、誠にすみませんでした」と言われても、多くの人は納得しません。
相手の気持ちに寄り添い、徹底的に謝るところから始めるのは、決まり切った“お約束”と考えましょう。
なお、謝り方には2パターンあります。
②「今回、納品が遅れたことによって、さぞかし気を揉まれたことでしょう。ヒヤヒヤさせてしまって申し訳ありません」
①は事実ベース、②は気持ちベースの謝り方です。仕事の場面では多くの場合、①が求められることが多いかと思いますが、なかには②を好む相手もいます。誠心誠意言葉を尽くして①のトーンで謝っているのに、「こいつはビジネスライクに片づけようとしている!」と不機嫌になられたときは、情緒=“エモさ”を足してみてもいいかもしれません。
ともあれポイントは、真剣に謝り倒して、謝り尽くして、相手の怒りのエネルギーをトーンダウンさせること。理由の説明や今後の対応策について話をするのは、その後のことです。
相手の質問の真意を見極めよう
ときには謝罪をしている最中に、相手から「どうしてそんなことになっちゃったの?」と、厳しく問い詰められることもあるかもしれません。ここで気をつけたいのは、相手が本当に理由を聞きたくて質問しているのか、それとも抑え切れない怒りの表現としての質問なのか、という点です。
相手が「謝罪なんて時間のムダ。知りたいのは原因と対策だけだから!」と心の底から思っているタイプであれば問題ないのですが、怒りの表現として「なんで?」と質問するタイプも少なくありません。
その場合、相手の言葉を真に受けて事情を説明すると、相手は「だから言い訳するなと言ってるだろ!」とまた怒り出してしまいます。こっちとしては「いや、聞かれたから説明しただけなのに」とぼやきたくなるのはやまやまですが、もちろんそんな素振りを見せてはいけません。
とはいえ、聞かれた質問に答えないのもそれはそれで怒りに拍車をかけますから、「実は担当者との間に連絡の行き違いがありまして」などとごく短く伝えたあと、一転、「本当にお詫びのしようがありません」「ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」「言い訳のしようもありません」と謝り倒します。相手の怒りの温度がだいぶ下がり、腹の虫も納まりつつあるなと見て取れたら、ようやくそこで、経緯を説明できると考えてください。
謝るときの連絡手段・ツールも重要です。最近は仕事相手とTwitterやFacebookなどのSNSでつながっていることも珍しいことではなくなりました。しかし、何らかの理由で仕事相手を怒らせてしまったときは、まずはすぐ電話して謝るのがベターです。
Twitterでリプライを飛ばしたり、メッセンジャーで謝ると「軽んじられた」「ないがしろにされた」という印象を相手に与える可能性が高いからです。この初動でしくじると、気持ちがこじれ、ちょっとやそっとの謝罪では話が収まらなくなることもあります。
また、ときには「気持ちをおおげさに伝えるポーズ」も必要です。例えば、遅刻したときは「汗をかいて走って行く」のがスタンダードな対応です。事前に「申し訳ありませんが少し遅れます」とお詫びの連絡をしていたとしても、特に急ぐ様子もなくのんびり現れたら、温厚な相手でもムッとします。
「すいません!!!」とゼーハー息を切らしながら15分遅れるのと、「お疲れっす~~」とニコニコしながら5分遅れで登場するのでは、前者の方が許されやすいのです。こうした「一生懸命汗をかいている」ポーズも、時と場合に合わせて駆使しましょう。
自分に落ち度がないときの謝り方
一方、「相手の勘違い」によって怒られたときにはどう対応すればいいでしょうか。
たとえば、こちらはきちんと会議の時間変更を伝えてあったのに、上司が「聞いてない」「どうして、きちんと連絡しておかないんだ!?」と勘違いして怒るケース。つい「ちゃんと伝えましたよ」と弁明したくなるかもしれません。
しかし、ここは我慢のしどころです。まずは「申し訳ありません」と謝り、相手が冷静になるのを待ちます。そのうえで、「3日前に口頭でお伝えしていたのですが、お忙しそうでしたのでお耳に届いてなかったのかもしれません」と経緯を説明し、「次回からはメールでもお伝えするようにします」と、今後の対処を伝えましょう。
相手も気持ちが落ち着けば、「あれ? もしかして俺の勘違いだった……?」と気づき、ゴメンゴメンと謝ってくれるかもしれません。
その時には「わかってくれてよかった」と相手の勘違いを許してあげるぐらいの心の広さは持っておきたいところ。「アンタが勘違いしたせいで、こっちは20分も説教されたんだぞ」と怒りの炎を燃やしたところで、まったく得にならないからです。むしろ、根に持たずに「こちらこそすみませんでした!」とカラっと対応することで株を上げつつ、内心「ひとつ貸しだぞ」ぐらいに思っておきましょう。
自分に落ち度があるか否かに関わらず、謝らなくてはいけない場面では、まず相手に寄り添った謝罪の言葉を尽くし、相手の気持ちがやわらいだところで、経緯と今後の対策を伝える。これが基本です。
まずは、反省していることが伝わるようおおげさなぐらいに振る舞い、心を無にして徹底的に謝り続けましょう。そうすればいつか相手が「もういいよ、十分だよ」というタイミングが訪れます。そうなれば相手との関係がこじれる心配もなく、むしろ好感度を高めることもできるでしょう。ピンチはチャンス。きちんと正しく謝ることで、相手との関係をよりよいものにしましょう。
●まず最初に謝罪の気持ちを伝え、相手がトーンダウンしたところで経緯と今後の対処を伝える
●謝り方には「事実ベース」と「気持ちベース」の2パターンがある。相手のタイプによって使い分ける
●謝るときの連絡手段はSNSやメッセンジャーよりも電話がベター。ときには「気持ちをおおげさに伝えるポーズ」も必要