PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
新市場にチャレンジする企業はPERが高い!?
新型コロナウイルスの影響で外出の機会が減り、逆風が吹いている飲食業界。そんな中でも高いシェアや得意分野を活かして、新たなマーケットにチャレンジしつづけている企業のPERは高くなる傾向があります。そこで今回はそんな新市場を常に切り拓いている「開拓者」ともいえる企業のケースを見てみましょう。
case56:伊藤園
今回ご紹介するのは、緑茶飲料の最大手でタリーズコーヒーなどを傘下に持つ「 伊藤園 」です。「お~いお茶」は2018・2019年と2年連続で世界販売トップのお茶ブランドとして、ギネス世界記録の認定を受けています。
逆風と追い風が入り混じる
新型コロナウイルス流行による同社への影響は、逆風になっている面と、追い風になっている面があります。逆風になっている面から見ると、人々の外出の機会が減ったことから、自販機・コンビニ販売が低迷しています。
緊急事態宣言が解除されてからはスーパー経由の販売は回復基調にあるものの、依然として厳しい状況にあります。
巣ごもり需要とワクチン期待でPERは上昇
一方で、巣ごもり需要から大型のペットボトル飲料は販売が増えているようです。また、足元では海外におけるワクチン開発進展の報道により、自販機などの飲料販売が持ち直すのではないかという期待が高まっています。株価も上昇しており、予想PER(東洋経済予想)は66.3倍と、ここ数年での高値圏に位置しています。
成長マーケット「むぎ茶」のトップシェアを握る
PER上昇の背景には、コロナ禍以外にも理由があると考えられます。その1つがむぎ茶市場の拡大です。ここ数年、緑茶市場は頭打ち状態が続いていますが、むぎ茶の市場規模は伸び続けており、ここ10年で3.4倍にも伸びています。同社の「健康ミネラルむぎ茶」はシェア45%でトップとなっており、成長分野への期待が投資家の背中を押している可能性もあります。
「抹茶」で健康ニーズ取り込みへ
また、11月18日には抹茶を使った日本初の認知機能の精度を高める機能性表示食品を発売すると発表しました。健康への関心の高まりを追い風に、消費者のニーズをどこまで取り込めるかに今後は注目が集まりそうです。
むぎ茶以外にも新しい飲料のマーケットをさらに開拓できるとなれば、さらなる株価やPERの上昇にもつながりそうですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①③から伊藤園を見てきました。コロナによる影響もある中、新しいマーケットをうまくとらえて追い風に乗りつつある同社。これからもお茶で培った技術・ノウハウを軸に、新しい市場に挑戦する伊藤園に注目が集まりそうですね。
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