コンセプトは「世界一ハードルの低いお金問答」。金利や保険、株の話から仮想通貨やスマホ決済まで超・マネー初心者が元国税局のおカネのプロに聞き倒しました。対話形式なのでサクッと読めて世の中の仕組みもザクッと見えてくる本です。
大人なのに、よくぞ聞いた! お金の超基礎がわかる本
「大人なのに、お金のことがわからない!!」
本書は28歳の文系編集者、梅田くん(あえて「くん」づけで呼びたい)の長年の悩みからスタートしました。今さら聞けない系の入門書はよくありますが、無知に徹した姿勢ではぶっちぎりのナンバー1だと思います。何しろ、梅田くんの質問は「大人なのに、よくぞ聞いた!」というほどに初歩的すぎるのです。
たとえば、こんな感じ。
「ちょくちょく気になってたんですが、上場ってなんのことですか?」
「そもそも銀行って『預ける、引き出す』以外に何ができるんですか?」
「稼げば稼ぐほど、税金を取られるのが腑に落ちないのですが……」
とはいえ、真っ正面からこう聞かれてちゃんと答えられる大人はどれだけいることでしょう。本書の企画に唯一(?)賛同したのが著者(国税局出身のライター)だったそうですが、解説がこれまたわかりやすいのです。上記三つ目に対する答えは「税金のない世界を想像してください。警察や消防署もなく街は大荒れ。災害がおこっても救助は来ません」。これなら、梅田くんも読者も納得です。
その構成上、完全にお金素人向けですが「(こんな質問を)よくぞ聞いた」「(こんな質問に)よくぞ答えた」と、コントのような問答もあり、ノウハウ本なのにキャラ立ちもしているという、1冊で二度おいしい本です。日本の企業総数は170万社で東証上場企業はそのうちの0.1%しかないとか、1982年までは「犬税」なるペットの税金があったとか、プラスαの雑学ネタも多いです。
(編集部注:日本の企業総数(約385万社 出所:日本の統計2020 総務省統計局)に対する東証上場企業数(3,729社)の割合は0.1%(11月20日現在))
感想をもう一つ付け加えるなら「わからないことをわからないといえる大切さ」でしょうか。どれだけ長く仕事をしても、どれだけ歳を取っても、われわれにはわからないことの方が圧倒的に多いのです。梅田くんのピュアさと相まって、どこか初心に戻れるような読後感でした。