PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
商品・サービスが使われる場面を想像する
企業の業績を考える上で、企業から発表される四半期決算や月次データをチェックすることは、とても重要です。ただ、私たちの生活に密着した商品・サービスであれば、普段の生活からも想像力を働かせてイメージすることで、業績を見通すことがある程度可能です。そこで今回は、企業の公開情報と、私たちの身の回りの両面からPERや株価を考えるケースをご紹介します。
case54:森永製菓
今回ご紹介するのは、チョコボールや、ハイチュウ、inゼリーなどでおなじみの 「 森永製菓 」です。日本で初めてカカオ豆からのチョコレート一貫製造を実現し、いまでは「おやつ」に欠かせない企業の1つとなっています。
過去最高営業利益も、予想PERは低迷
足元の予想PER(東洋経済予想)は16.4倍と、業種平均(21.7倍)以下にとどまっています。新型コロナウイルスの流行に伴う株価下落で、予想PERもやや低迷している様子がうかがえます。
一方、業績は前期まで好調が続いていました。冷菓の好調や海外収益改善などにより、2020年3月期は営業利益が過去最高益になりました。また、企業の稼ぐ力を示すといわれる営業利益率も10.2%と2ケタ乗せを達成しています。
外出の機会増加で売上は回復?
2021年3月期第1四半期はコロナの影響を受け、前年同期比で減収減益となりました。主な商品の売上高を見ると、森永ビスケットは巣ごもり需要などから好調だった一方、外出や通勤機会の減少などからinゼリーなどは前年を下回りました。
ただ、減収の要因のうち、外出機会の減少については、出社比率の上昇やGo To トラベルなどのキャンペーン効果もあり、足元では戻し始めている可能性があります。詳しくは第2四半期決算発表を待つ必要がありますが、身の回りの環境をウォッチすることで、ある程度予想することができます。11月11日発表予定の第2四半期決算と併せてイメージしてみましょう。
今後はinゼリー事業や海外事業にも注目
中期的な目線では、同社が力を入れているinゼリー事業の売上回復や、黒字化を達成した米国事業などに注目が集まるものと考えられます。国内だけでなく海外利益の伸びがさらに明らかになってくれば、投資家の見直し買いも増え、PERも上向く可能性があります。これからの森永製菓の成長戦略に期待したいですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①から森永製菓を見てきました。前期は最高益を更新したものの、コロナ禍による外出機会の減少で売上が落ち込んでいる同社。しかし、足元では出社比率の上昇やGo To キャンペーンなどからその影響は薄らいでいる可能性もあります。国内事業に加えて海外でも売上が伸び続ければ、株価やPERが反転するかもしれませんね。
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