「お腹の中から息リフレッシュ!」の宣伝でおなじみの、ブレスケア。飲み会の後などに残る、キツイお口のニオイを何とかしたいときの強い味方です。岡田麻美さんは、ブレスケアのブランドマネージャーになって5年目。顧客から「最終兵器」と評されるブランドの重みを実感しつつ、さらに新しいニーズを開拓しようと奮闘しています。
ブレスケアは「最終兵器」。 裏切りたくないから、現場は体を張っています【前編】を読む
女性客へのハードルを下げる
私がブレスケアのブランドマネージャーになったのは、5年前。これまでいろんなマネージャーが担当してきましたが、女性では私が初めてでした。ですから最初に自分の使命は何か? を考えたときに、やっぱり女性にもっと使ってほしい! と思いました。
現在、ブレスケアの購買層は男女比が半々くらい。十分多いと思われるかもしれませんが、エチケットに関する調査を見ると、女性は男性以上に、食事由来のお口のニオイを気にしているという結果が出ています。そうした特性を見ると、まだまだ伸び代があると感じます。
ブレスケアという「最終兵器」を手に取らない女性がいるのは、そこに何かしらのハードルがあるから。たとえばそれは、「ブレスケアはおじさんが使うもの」という先入観かもしれません。
そこで、美少女戦士セーラームーンや不二家のペコちゃんなど、可愛らしいキャラクターをお借りして、ブレスケアとのコラボレーションを定期的に行なっています。年に2、3回ニュースに取り上げられれば、売り場で目に入ったときに手にとってくださる女性が増えるのではないかと期待しています。
また、2017年には「お口の香水」というコンセプトで、「ブレスパルファム」シリーズを3種類発売しました。これは私が担当になる前からあったアイデアで、市場調査がちょうど終わったところで、具体的に商品化を進めました。
そう思いますよね? 「ニオイを消す」という発想から、「お口が香る」というさらにポジティブな発想に転換した、画期的な商品だと私も感じていました。ところが、発売当初はかなり苦戦したんです。
シリーズ第一弾として開発したのが、リンスタイプのブレスパルファム。お口に含んですすぐ、洗口液でした。小売のみなさんへの発表会では、「新しい!」ととても評判が良かった。実際、たくさん注文していただき、これはいける! と手応えを感じていたのですが……。
いざ発売されると、売上が全然伸びない。期待してくださった小売店の方々も、「あれ?」という感じになりました。そのうち、「ブレスケアは男女ともに売れているのに、ブレスパルファムは女性だけにターゲットを絞っている。それが売れない要因じゃないか」と言われるようになってしまって。この結果には、がっくりしましたね。
毎週、成績表を出される感じ
市場調査などから、「お口の香水」というコンセプト自体は間違ってないと思っていました。だとしたら、問題があるのは商品設計のはず。だから悪いところを直して次に活かそうと、頭を切り替えました。実際、すぐに第二弾、第三弾の開発があったので、落ち込んでいるヒマなんてなかったんです。
味がイマイチでした。「お口の香水」なのだから、何よりもしっかりと香らなくてはいけない。そう思い、効果実感を求めるあまり、少し苦い味になっていました。おそらくそれが原因で、リピートにつながらなかったと思います。あとは値段も、500円とちょっと高くしすぎました。
そこですぐに、リンスタイプの味と値段を変えることに着手しました。開発チームが何十個ものフレーバーを作ってくれて、みんなでそれを全部試して……。最終的には、意見が集中した2つに絞ってもう一度販売しました。値段も400円に落ち着きました。
同時に、開発中だった第二弾の「噛んでお口に香りが広がるカプセルタイプ」も、「とにかくおいしく!」と、第一弾の失敗を念頭に置いて。
第一弾がダメだと、小売のみなさんの期待度が一気に下がってしまう。それでもめげずになんとか第二弾を出したら、問題点をクリアしたのが良かったのか、今度はたくさん売れました。ああ、これで信頼を回復できたと、すごくうれしかったですね。
さらに第三弾の「飲んでお腹から香る、カプセルタイプ」も好評で、今に至ります。コンセプトにこだわるのは大事ですが、それだけじゃなくて、使いやすさ、おいしさといった、お客様の利便性も忘れてはいけない。このシリーズは、とても学びが多かったです。
毎週、売上の数字が出るたびに、成績表を出されている気分です。ダメなときは落ち込みますが、改善すればまた伸びてくるので、やりがいがありますね。
聞くだけ、見るだけで伝わるCM
いわゆる「かっこいい」パッケージって、うちの会社にはないんですよね。ファッショナブルなことより、「一目でわかる」ことを優先しているので。パッケージも広告も、すべては「わかりやすさ」が基準です。
例えばCMを作るときは、洗い物をしながらテレビをつけている方を想定します。そういう状況で、流れてきた音を聞くだけ、または画面をなんとなく見るだけで、「何をしてくれる商品か」がわかる。それくらい簡潔な表現を目指しています。
さらに、テレビを見ない方々に対しても、電車の広告や、ドラッグストアでぱっと目に入るパッケージを見て、「何をしてくれる商品か」がわかるようにする。常にそうやって、少ない接点でも必要な人に必要な情報が届くように、意識していますね。
うちは社長が同じフロアで、机を並べて働いていますから。意思疎通はかなりしやすいです。
はい。それこそ、男性はトイレも一緒じゃないですか。会議で社長と直接お話しする機会が月に3〜4回あるメーカーって、この規模ではなかなかないと思います。
ブレスパルファムが不調だったとき、すぐに気持ちを切り替えて次に挑戦できたのも、「どうするんや! 売れてないけど」って社長が発破をかけてくださったおかげです。うちの社長、物腰は柔らかいですけど、結構はっきりおっしゃるんです(笑)。それが私にとって、いい起爆剤になりました。
そもそもブレスケアは、みんなで楽しく飲んだり食べたりするときのお守りであり、安心アイテム。その機会自体が失われることはどうしようもないし、やみくもに「外食しましょう」と勧めることはできません。ですから時勢を鑑みながら、今、できることを全力でやるだけです。
例えば、12月に発売される「ますくちだま」という商品。マスクをすると、自分の口臭をダイレクトに吸ってしまう。このときのニオイがきついと辛いですよね。ニオイは、口が乾いて雑菌が繁殖することで起きる。そこで、殺菌成分(CPC)とメントールが入った飴を、マスク装着時の口臭対策として開発しました。
これは5月に、「コロナ時代の商品」をテーマに、全社でアイデアを出した中の1つです。社長が「すぐやろう!」と即決し、そこから2ヵ月ちょっとでパッケージまで完成させました。
これは私の経験上、最短の開発でした。通常、開発にかかる時間ですか? うーん、ブレスケアだと15ヵ月くらいかな。異例のことでかなり大変でしたが、OEM(編集部註:受託製造)先にすごくご協力いただいたり、いいこともたくさんありました。
ありがとうございます! そうそう、今年の4月に発売した「ブレスケア スパークリングタブレット」。これは噛んだ瞬間、お口の中でシュワシュワ発泡するんです。脂っこいものを食べた後、水でもすっきりしないお口の中を、ブワーッと洗い流すような爽やかさで、小売のみなさんにも大好評でした。
自信作なのですが、これもコロナ外食自粛の影響で思うように売上が伸びず……。でも少しずつ世の中が落ち着いてきたら、また注目していただけるかなと期待しています。ぜひ、この機会にお店でチェックしてみてくださいね!