PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
赤字予想だとPERは使えない!?
1株あたり利益がマイナスになると、PERもマイナスとなってしまい、過去との比較や同業他社との比較ができなくなります。利益がマイナスになる企業へは、一般的に投資の検討自体をそもそも避けるべきだと考えられています。しかし、その赤字が一時的なものだと予想される場合は、その企業の割安感などをどのようにして考えればよいのでしょうか。そこで今回は、今期の業績予想が赤字となっている企業のPERの考え方について見ていきたいと思います。
case53:JR東日本
今回ご紹介するのは、新幹線や鉄道事業、駅直結の商業施設などを運営する「 JR東日本 」です。足元では外出の機会が減っていることなどから、株価は下落。今期営業利益は赤字転落が予想(東洋経済予想)されているため、予想PERは算出できません。
今期予想が赤字でもPERは活用できる
一般的には赤字予想になってしまうと、PERの計算式の分母がマイナスになってしまい、正しく割安・割高感を測ることができなくなります。しかし、だからといって赤字予想の企業の分析をそこで止めてしまうのは時期尚早と言えます。
広く使われる予想データは今期の予想ですが、四季報などでは来期予想も開示されており、それを活用することで、予想PERは計算することができます。来期の予想1株あたり利益(609円)で直近の株価を割ると、11.1倍となります。2010年以降の予想PERの平均が16.3倍であったことを考慮すると、足元で業績が不透明になっている分、投資価値が大きく割り引かれている様子がうかがえます。
月次情報も併せてチェック!
もちろん、来期の業績予想なので、今後のコロナウイルスの感染状況などによっては、現時点の予想から大きく変わる可能性があることには注意が必要です。そのうえで、併せてチェックしたいのは月次データです。
同社の場合は、「鉄道営業収入(月次)」が公表されています。四半期決算よりも前に、だいたいの事業環境を把握できるので、投資を検討する際はチェックするように心がけましょう。まだまだ現状ではかなり厳しい収入状態が続いている同社。10月からはGoToトラベルキャンペーンで東京発着がスタートすることもあり、収入がどの程度回復していくのかに注目です。
1560億円のコストダウンを計画
単に収入が回復するのを待つだけでなく、同社では今期から来期にかけて大幅なコストダウンを計画しています。グループ全体で賞与削減や修繕費、成長投資の一部などを削減することにより、1560億円ものコストを削る計画です。
営業収入が徐々に回復し、コストダウンが計画通りに進めば、営業利益・純利益ともに黒字転換する可能性が高まっていきそうです。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①からJR東日本を見てきました。外出自粛の影響で、今期営業赤字が予想される同社。営業収入の回復とコストダウンの進捗によって、徐々に来期予想PERも切り上がっていくかもしれませんね。