PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
コアなファンが買いたくなる店とは
人気を集め、業績が好調なお店には、必ずコアなファンが存在します。そうしたファンを増やすことが運営する会社のミッションの1つであり、それを継続できている企業の売上は伸び続けます。
しかし、ひとたびそうしたファンを失えば、取り戻すことは容易ではありません。そこで今回は、そんなコアなファンの動向が業績や株価に大きく影響を及ぼしているケースをご紹介します。
case51:しまむら
今回ご紹介するのは、多品種少量の衣料品販売により、ほかの人とファッションが被りたくない主婦層を中心に人気の 「 しまむら 」です。郊外に出店している印象が強い同社ですが、最近では都市部にも進出し、主要駅近くなどでも見かけるようになりました。
コロナ前に営業利益が半分に
同社の株価は2017年以降下落傾向にあります。投資家の期待値を表すとされるPERは、今期予想PERが21倍と決して低い水準にはありません。しかし、ここ数年の業績を見ると、あまり楽観視できる状況とは言えないようです。
売上高や営業利益は2016年度をピークに減少し続け、営業利益にいたってはほぼ半分まで落ち込みました。
コアファン「しまパト」がカギに
理由はいくつかありますが、一番大きいと考えられるのが、「コアファンのしまむら離れ」です。
しまむらは多種多様な商品をそろえる一方で、品切れしても再仕入れをあまり行わない特徴がありました。それにより、売り切れる前に掘り出し物を見つける「しまパト(しまむらパトロール)」と称する、定期的に訪れるコアファンの存在がありました。品ぞろえが豊富なため、ユニクロなどと違ってほかの人と洋服が被らないこともあり、頻繁に来店するお客様が一定数いたと考えられます。
しかし、2014年の「裏地あったかパンツ」などPB(プライベートブランド)商品の登場以降、しまむらの品ぞろえに変化が出始めました。発売当初こそ業績に大きく貢献したPB商品でしたが、その種類が増えるにつれ、いわば「少品種大量入荷」の状態となり、コアファンである「しまパト」が減少したものと考えられます。
足元では「巣ごもり需要」が追い風
そんな逆風が吹いていたしまむらですが、直近では「巣ごもり需要」の増加などにより、6月・7月と既存店売上高が前年を上回っています。緊急事態宣言下では大きく売上が落ち込んだものの、解除された6月以降、ルームウェアや収納用品、調理用品などの売上が好調となりました。
秋のECの効果を見極める段階
withコロナを追い風にしつつある同社ですが、さらに秋には自社ECサイトの開設も予定しています。どこまでコストを抑えつつ、従来のように「しまパト」するファンを呼び込めるかがカギとなります。今後の同社の動向に注目したいですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①からしまむらを見てきました。コアファンのしまむら離れから業績が落ちこんでいた同社。「巣ごもり需要」の追い風と秋のECサイト立ち上げ等で、どこまで売上を回復できるかに注目が集まりそうです。