静岡vs和歌山「2020年宇宙の戦い」

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、静岡と和歌山で競うように行われている「宇宙」開発のニュースについてご紹介します。

トヨタの視線は「宇宙」へ?

6月末に「 スパークス・グループ 」が、宇宙空間の活用に取り組むベンチャー企業に投資する「宇宙フロンティアファンド」を設立しました。 「 トヨタ自動車 」、三菱UFJ銀行(「 三菱UFJFG 」)、三井住友銀行(三井住友FG)、みずほ銀行(「 みずほFG 」)が82億円を出資し、年内に150億円規模のファンドにするとのことです。

トヨタは1月に、ヒト・建物・車が情報でつながるコネクテッド・シティ「ウーブン・シティ」を静岡につくると発表しました。コネクテッド・シティには衛星による位置情報やリモートセンシング技術などが必要で、ファンドもそれが狙いだとみられています。またトヨタは、JAXAと月面探査機の共同開発も進めています。

その宇宙フロンティアファンドの関係者が7月14、15日に北海道大樹町の多目的航空公園を視察しました。ここは、元ライブドアの堀江貴文氏の“ホリエモンロケット”の発射場として知られています。同公園の運営会社に元トヨタ副社長の加藤光久氏が関わっており、今回の視察も加藤氏の仲介によるものだそうです。

資本力、政治力で「和歌山」が巻き返すか

話題のロケット発射場というともう一つ、和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」があります。「 キヤノン電子 」、IHIエアロスペース(「 IHI 」)、「 清水建設 」、日本政策投資銀行が設立したロケット会社「スペースワン」。そのスペースワンが立ち上げる小型ロケット発射場です。

昨年11月に起工式が行われ、なんとキヤノンの御手洗冨士夫会長やIHIの斎藤保会長(※当時)、清水建設の井上和幸社長、和歌山県の仁坂吉伸知事、さらに二階俊博自民党幹事長、河村建夫元官房長官ら有力政治家も駆け付けました。

「大樹町のロケット事業は1985年からじっくり取り組んでいるのでアドバンテージはあるが、和歌山は大手企業の資本力に加え、二階幹事長のような政治力も備えている。一気に巻き返されそうだ。こちらはもはやトヨタ頼みだ」(大樹町の関係者)

ところでスペースワンに清水建設が出資していますが、同社は1987年に宇宙開発室を立ち上げ「月面コンクリート基地構想」や「宇宙ホテル構想」などを発表し、ゼネコンによる世界初の宇宙構想と話題になったこともあります。

その宇宙開発室にかつて勤務していた大貫美鈴氏という女性が、現在は宇宙ビジネスコンサルタントとしてこの分野では第一人者となっています。その大貫氏が4月、スパークス・グループにて宇宙投資担当となり、大樹町の視察にも同行していました。

まだ歴史の浅い宇宙事業。ライバル間でも人材は重なり合い、進んでいるようです。

(出典:日本証券新聞)