PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
それって本当に割安?
一般的には、PERが50倍・100倍となれば割高で、10倍を割り込む場合は割安と判断します。しかし、過去の推移や投資家の「期待」を考えると、10倍を割り込んでいても決して割安とは言えないケースもあります。そこで今回は、そんな「ずっと割安」株になってしまう理由を、個人投資家に人気の銘柄を通して紐解いていきます。
case50:オリックス
今回ご紹介するのは、プロ野球の球団やレンタカーなどでおなじみの 「 オリックス 」です。同社は船舶や自動車、航空機のリース事業といった「モノ」にかかわる事業から、銀行や生命保険といった「金融」まで幅広い事業を手掛けています。
PER8.5倍でも割安じゃない?
オリックスの今期予想PERは8.5倍となっており、一見すると非常に割安な状態にも見えます。しかし過去の予想PERの推移を見ると、2016年以降ほとんど10倍以下で推移しており、いまが必ずしも割安な水準にあるわけではないことがわかります。
「ずっと割安」で放置される2つの理由
同社の場合、長い期間にわたってPERが割安に放置されている背景として、主に以下の2つがあると考えられます。
1つ目は2017年度をピークに売上高や営業利益がほぼ横ばいにあることです。PERは会社に対する投資家の成長期待の表れでもあります。業績が伸びていく可能性を感じにくければ、株は割安なまま放置されやすくなってしまいます。
2つ目は、同社の事業が分散していて、「商社」に近い企業と見られやすいためと考えられます。オリックスは現在大きく分けて10の事業を手掛けており、扱う分野は金融やリース事業を中心など幅広いです。
リスクが分散されているという意味では、安定した業績が見込めますが、限られた資本を成長分野に注いでいるとは言えません。同じように多くの分野に事業投資を分散して行う大手商社も、ここ数年PERが割安になりがちです。
こうした理由が重なり、PERや配当利回りなどから見れば割安でも、なかなか買われにくいという側面があると考えられます。
苦しい中でも底堅さは見られた
足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響で、空港や不動産賃貸、旅館、飛行機リースなどの事業でさらなる苦戦を強いられています。しかし、2020年4−6月期決算では全10セグメントで黒字を確保していることなどから、事業の底堅さも確認できました。
また、配当性向は従来より引き上げられ、2020年度は50%とすることも発表されています。配当を重視する投資家にとっては朗報と言えそうです。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①③からオリックスを見てきました。業績の頭打ち感などから「ずっと割安」銘柄となっている同社。足元でもコロナの影響を大きく受けていますが、全セグメントで黒字を確保するなど底堅さも確認できています。配当利回りの高さなどから株価が下がっても個人投資家に人気の銘柄ですが、業績が「最悪期を脱した」と判断されれば株価の反転・上昇も期待できるかもしれませんね。