アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

タイトル通り、アメリカの高校で使われている教科書の翻訳版。日本ではマネー教育をうさん臭いものと捉えがちですが、「高校生の時にこれを学んだら、経済がもう少し底上げされるのでは?」と思わず期待しそうになる良書です。

お金について考えることは「人生を構築すること」

マネー本は数多くありますが、本書をカテゴライズするなら、人生を考えるためのお金の本と言えるでしょう。「一生涯でお金が絡むすべての場面について、できうる限り伝えたい!」ーーそんな著者の思いがページの端々にひしめいている。個人的には、恩師からの長い長い手紙を読むような気持ちで読了しました。

マジメな本ですが、現実をはぐらかすようなことはしません。

キャリアとお金についての章では、適性や興味が大事だとしつつも、「生涯所得を決めるもっとも大きな要素はどんな職業を選ぶかだ」とズバリ切り込みます。学生にそれを言える大人は少ないですが、「あなたのお金についての決断があなたの未来を決める」というのが基本スタンス。

著者はまた、医者の給料はなぜ高く、小売店業者の給料はなぜ安いのかをわかりやすく説明し、成長産業を見極めるための物の見方も伝授します。全章を通じ、「経済的な自立」と「お金で人生を破綻させないための自律」とを学ぶ構成になっています。

というわけで、読者が若ければ若いほど有益な情報が多い本書。一方で、キャリアを積んだ人間が読むことにもまた意味がある。前述の通り、扱う範囲がかなり広いのです。

決算書の読み方や事業計画書の作り方、法律や契約の基本、保険や投資の話等々、お金にまつわる「今さら聞けない常識」が丸ごと再確認できます。高校生向けながら、老後の遺産相続にまで触れられていますし、変わったところでは「破産したらどうなるか?」なんて話もある。

さらに大切なのは、読んでいると襟を正されるような気分になることでしょうか。故郷の両親を思い出し「もっとしっかり生きなくては」と思う気持ちに少し近い。お金の本なのにどこか懐かしく、書き手の真心を感じさせる本でもあります。