「デジタル通貨」に利用拡大期待 Suicaと相互利用を検討

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、中央銀行が強い関心をよせる「デジタル通貨」をめぐる裏事情についてご紹介します。

動き始めた「デジタル通貨」

JR東日本 」や3メガバンクなどが、交通系ICカード「Suica(スイカ)」とデジタル通貨との連携に向けた検討を進めると6月3日付の日本経済新聞が伝えました。国内ではみずほ銀行(「 みずほFG 」)がすでに「Jコイン」の提供を開始しているほか、「 三菱UFJフィナンシャル・グループ 」も「coin(通称MUFGコイン)」の発行を目指しています。

世界では、国家主導のデジタル通貨で先行するウルグアイやスウェーデンに続き、中国が2022年の「デジタル人民元」の発行を目指しています。また、民間では20億人超のユーザーを抱える米フェイスブックもデジタル通貨「リブラ」の発行を計画。いずれも世界の経済勢力図を大きく動かす可能性があり、世界の中央銀行が強い関心を示しています。

これまで日銀は「中央銀行としてデジタル通貨を発行する予定はない」としていましたが、こうした各国の動向を受けて、今年1月にイングランド銀行など6行とデジタル通貨の活用可能性を検討するための組織をつくりました。なお、今回のJR東日本と3メガバンクの協議会には、日銀や金融庁、経済産業省もオブザーバーとして参加。今後、民間主導のデジタル通貨の取り組みが活発化する可能性があります。

仮想通貨連携や地域通貨プラットフォームに期待

関連銘柄を確認してみましょう。同協議会の事務局である「ディーカレット」は、「 インターネットイニシアティブ 」が18年に複数企業と合弁で設立した仮想通貨取引所。現在、セブンイレブン(「 セブン&アイHD 」)の「nanaco」や、「 KDDI 」の「au PAY」などの電子マネーに仮想通貨でチャージできるサービスなどを提供しています。

アイリッジ 」は、子会社が地産地消による地域活性化を目指した電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を展開。既に岐阜県・飛騨高山地域や千葉県・木更津市では商用利用されており、金融機関や行政との連携についても独自の実績を積み重ねています。今年3月末には「 セブン銀行 」とのシステム連携を果たしました。

また、「 チェンジ 」も子会社がデジタル通貨事業として、自治体向け地域通貨プラットフォームサービスを手掛けています。同社はアイリッジに比べて後発ではありますが、電子政府の先進国であるエストニアと行政サービスのデジタル化促進で提携関係にある点が強み。現在は行政手続きのデジタル化でエストニアのノウハウを活用しており、これが今後、デジタル通貨事業での業務提携につながることも期待されます。

このほか、取引システムの開発・保守や仮想通貨関連事業を手掛ける 「 インタートレード 」、みずほ銀行の「Jコインペイ」構想で思惑視される「 アイエックス・ナレッジ 」も注目です。金融機関向けシステム開発に強みを持つアイエックス・ナレッジは、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などメガバンクが主要顧客。企業向けブロックチェーン分野の事業展開でIBMとビジネス・パートナー契約を結んでいます。

これからのデジタル通貨をめぐる動きにマーケットでも注目が集まるかもしれませんね。

※インタートレード(3747)は記事執筆時点で、日本証券金融の注意喚起銘柄に指定されています。

(出典:日本証券新聞)