FACT FULNESS(ファクトフルネス)

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

投資判断をする時、自分なりに参考にしているデータをチェックしている人も多いのではないでしょうか? サブタイトルの「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」には、ハッとさせられるものがあります。ニュースの裏側をどう考えるか、世界の見方はこれで良いのか、考えさせられる一冊です。

どんな場合でも数字を一人ぼっちにするな! 世界を正しく見る方法

2016年、世界で420万人の赤ん坊が亡くなりました。多くは先進国なら助かる病気が原因。こうした絶望的なニュースを聞くにつけ、われわれは思うわけです。「世界の貧困はなくならない!」と。

そんな実は情報を右から左に流しているだけの、ぼんやりした人間に著者は言います。「どんな場合でも数字を一人ぼっちにするのは絶対ダメ!」だと。

赤ん坊の死自体は「絶望的」ではありますが「420万人」という数字は当時の計測史上で最少のものでした。1950年に亡くなった赤ん坊は「1440万人」もいました。つまり、貧困はなくならないどころか、ずいぶんと改善されてきたわけです。

こうした事実はあまり大きく語られません。有識者であっても「ネガティブな勘違い」をしている人たちが大多数。著者は親切にも「世界中で減り続けている良いこと」「世界中で増え続けている良いこと」を32個も集め、グラフ化しています。ちなみに、減っているのは「紛争の犠牲者数」や「オゾン層の破壊」、増えているのは「予防接種率」や「女子教育の割合」等々。

もちろん、本書は「未来は思うよりも明るい」と言うためだけの本ではありません。「なぜ、人々は『世の中は悪くなっている』と思い込むのか」を考察し、データを基に世界を正しく見る習慣について記しています。例えば、「数字を一人ぼっちにしない」とかね。

とりわけ、「責めるべきグループを捜してはいけない。犯人を見つけた途端、人は考えるのをやめてしまう」というフレーズは、こんなご時世にあって大変示唆に富んでいます。

文体はユーモアに溢れていて、著者自身の「とんでもない勘違い体験」からその人柄も伺えます。なので、難しい顔して読む必要はナシ。ぶ厚い本ゆえ、「中断しながら数ヵ月かけてじっくり読んで」といったことも書いてありましたが、すみません、数日で読了してしまいました。