少しずつ株価の変動が収まりつつある日本株市場。もちろんまだ油断はできませんが、1年後、2年後の世界をイメージしながら、次の有望な銘柄が何かを考え始めても良いのではないでしょうか。
PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
安定の中にも成長の芽
株式市場が大きく崩れる場面でも、業績の安定性などから相対的に株価が変化しにくい銘柄を「ディフェンシブ銘柄」と言います。そんなディフェンシブ銘柄の中でも、自社の強みなどを活用することで大きく成長する可能性を秘めている企業もあります。そこで今回は業績が安定している中、さらなる成長の機会を伺っているケースをご紹介します。
「ディフェンシブ銘柄」とは、景気の変化に対してその会社の業績がブレにくく、株価も大きく変動しにくい特性の銘柄を言います。業種でいうと、食品や電力・ガス、鉄道株などです。反対に景気に大きく左右される銘柄は、「景気敏感銘柄」や「シクリカル銘柄」と呼ばれ、自動車や電気機器などが挙げられます。
case47:森永乳業
今回ご紹介するのは、ビヒダスヨーグルトや、アイスクリームのpinoでおなじみの「 森永乳業 」です。1917年の創業以来、乳で培った技術を活かし、「おいしさ」と「健康・機能性」を備えた商品を数多く提供してきました。
2018年安値を割っていない安心感
2020年に入ってからは、新型コロナウイルス流行にともなう株価下落から、株価もPERもやや低迷しています。ただ、株価が2018年の安値を割り込んでいないことを考えると、同社のディフェンシブ性や業績に対する安心感を読み取ることもできます。
2つの成長ポテンシャル
同社の場合、安定した業績だけが特徴ではありません。投資を考える上で押さえておきたいのが、これからの成長をリードする2つの柱です。
②成長余地が大きい「菌体」
①海外成長ポテンシャル(潜在性)
まず1つ目は海外事業の成長性です。
森永乳業は、国内だけでなく海外でもBtoB事業を拡大させています。100%子会社であるドイツ・ミライ社は、ホエイたんぱく濃縮物、ラクトフェリンなど、育児用粉ミルクやスポーツ栄養食品の原料となる乳原料素材を製造販売し、グローバルメーカーに供給しています。
2015年以降、着実に海外の売り上げを伸ばしつつあり、2021年には2015年比で約2倍の売上高を目指しています。
②成長余地が大きい「菌体」
ビフィズス菌をはじめとした「菌体」の供給拡大にも力を入れています。
「菌体」とは、ビフィズス菌やシールド乳酸菌といった、整腸作用をもたらす菌のことを指します。こうした菌体は、お腹の調子を整えるだけでなく、免疫力を高める効果があります。免疫力が高まることで、感染防御や発ガン抑制、アレルギー症状の改善(花粉症など)など様々な効果にも通じるとされています。
もちろん「菌体を含んだ食品を食べれば病気にならない」ということは言えませんが、免疫力を少しでも高めるという効果はありそうです。まさに今、ニーズが高まっている特性と言えるかもしれません。
同社はこうした「菌体」を製造する工場ラインを増やす予定です。福井工場での増強が行われれば、2018年度に比べて約2倍の製造能力を持つ見込みです(会社想定)。こうした生産ラインが整ってくることで、同社は国内シェアや海外シェアをさらに拡大することが可能という試算をしています。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①②から森永乳業を見てきました。ディフェンシブの特性から株価がそこまで大きく落ち込んでいない同社。ただ、これからは安定性だけでなく、海外と「菌体」を軸とした2つの成長性にも注目が集まりそうです。まずは5月14日(木)に予定されている、本決算発表をチェックしてみてはいかがでしょうか。