第5回 図解の表現で避けるべきこと

3分でわかる・ ビジネスモデル図解のつくりかた/ 沖山 誠 、 近藤 哲朗 、 ウィスット ポンニミット

第4回「『誰が』運営する事業なのかを考える」を読む

1.わかりづらくなる表現について

第1回から第4回までは、ビジネスモデル図解の作成ルールについて解説してきた。基本的に、これまでの内容を踏まえれば、図解を作成することはできるだろう。しかし、忘れてならないのは、図解はコミュニケーションツールであるということ。

そのため、自分で思い通りの図解ができたと思っても、相手に伝えたいことが伝わらなければ、図解としての役割を果たしたことにはならない。

そこで今回は、どうしたらより相手に伝わりやすい図解が作れるのか、ということについて解説していこう。

ビジネスモデル図解(略して「ビジモ図解」)は、3×3のマス目でシンプルに事業を表現するツールである。

この図解を用いる利点は、そのシンプルさにある。つまり、詳細に情報を記載する他のツール群と異なり、情報が限定されているがゆえに、伝えたいメッセージが伝わりやすいのだ。

しかし、これは当然、伝わるように情報を整理している場合に限られる。ビジモ図解を使うだけでなんでもシンプルに伝わるというわけではない。実際に、ワークショップなどでビジモ図解をしてもらうと、ビジモ図解の強みを活かしきれず、情報が伝わりづらい図になってしまうことが多い。

わかりにくくなる原因

では、なぜこのようなことが起きてしまうのか?

情報が伝わりづらくなるパターンは、以下のようなことが考えられる。

①何を伝えたいのかメッセージがクリアになっていない
②読み手の理解度を考慮していない

それぞれ、どういうことかを説明していこう。

①何を伝えたいのかメッセージがクリアになっていない

ビジネスモデル図解は、コミュニケーションツールである。誰になんのために伝えるのか、ということが重要というのは、第1回で述べたとおりだ。

しかし往々にして、ビジネスモデル図解を作ることが目的となってしまい、図解を通して何を伝えたいのかを考えることがおろそかになってしまうことがある。

そうすると何が起きるか。複雑なビジネスについて何の指針もないまま図解していくと、情報に優先度がないため、たくさんの情報を図の中に入れたくなってしまい、結局何が言いたいのかわからない図になってしまう。これではビジモ図解の「シンプルでわかりやすい」という強みを活かせず、中途半端な図解になってしまうのだ。

②読み手の理解度を考慮していない

メッセージを明確にして情報を絞れたとしても、その図内で使う用語などがわかりづらいことが多々ある。業界用語や専門用語など、一部の人にしかわからないような表現を多発してしまうのだ。

これによって、図解を見る相手がその単語を知らなかったときに、理解が追いつかなくなり、そもそも見てもらえないという事態に陥ってしまう。これは、伝えたい相手がいることを忘れ、自分の視点だけで図解を整理してしまう場合に生じる問題である。

2.どうしたらわかりやすくなるのか

1で説明した問題は、誰にでも起こりうるものである。図解の表現として、これらはなるべく避ける必要がある。そこで、そうした状況に陥らないように、どのように図解を進めていくべきかを解説していく。

(1)その事業について一言で表現してみよう

1の①や②のようなことが生じる原因は、主に2つある。

・図解したい事業についての情報が不足している
・図解したい事業についての情報が整理されていない

前者については、そもそも図解にとりかかる段階ではないので、その事業について調べることから始める必要がある。

後者については、ビジネスモデル図解を作成するときに、結局その図で何を言いたいのか? その事業は端的に言うと何なのか? ということがわかっている必要がある。それができていないと、図解する際の焦点が定まらないため、よくわからない図になってしまう。

そこで、僕たちが図解をするときに行なっていることは、その事業の特徴について端的に表現する「一言説明」を必ず作成するということだ。

たとえば、「Mobike」というサービス。

「Mobike」を一言で説明すると、使用マナーによって使用料が変わる自転車シェアリングサービス。

使用マナーに該当する部分は、図の左にある信用スコア。自転車シェアリングサービスの部分は図の右の部分にある自転車で表現している。そして、サービスとして収益を生んでいる部分は中央に位置するスマホへの預かり金。

こうして、一言説明をもとに整理していくことで、ビジモ図解に必要な伝えたいメッセージやその優先順序がシンプルに表現できる。図解を作成する前に、情報を整理できているか確かめるためにも、「その事業は一言で言うと何か?」ということを考えてから図解に取り組んでみよう。

(2)素人力を持って図解を作成しよう

何度も繰り返すが、図解はコミュニケーションツールである。しかし、1の②で説明したとおり、図解を作成していくうちに読み手の存在を忘れてしまい、自分が気持ちがいいと感じる用語で整理するようになってしまうことがある。

そうした事態を避けるために心がけたいのは「素人力」を持つということ。素人力とは僕たちの造語で、専門的な知識を持ちながら、素人的な視点を持つ力のことである。

そもそも知識を持っていないと、図解は作成できない。でも、コミュニケーションツールとして活用するためには、どういう情報だったら相手が理解に苦しまないかを考える必要がある。そうしたバランスが重要ということである。

自分が専門性が高ければ高いほど、正確性を重視するあまり、こうした「素人力」を発揮することは難しい。しかし、自分の頭の整理のためではなく、他者に何かを伝えるためにビジモ図解を作成するなら、こうした視点は重要である。

ぜひ、「素人力」を持って図解を作成しよう。

今回は、図解全般についての表現で避けるべきことと、具体的な回避法について解説した。

次回からは、主体や矢印、補足といった、ビジモ図解の構成要素のそれぞれについて、より具体的な表現のコツについて解説していく。

<第5回まとめ>
・ビジネスモデル図解は情報をシンプルに整理するコミュニケーションツールである。そのため、メッセージを明確にして、情報に優先度をつけ、伝える相手がどうしたら理解してくれるのかを考えて図解を作成する必要がある
・メッセージを明確にして、情報の優先度付けをするためには、伝えたい内容をシンプルに一言で表現してみるとよい
・伝える相手のことを考えるために、僕たちは素人力を大事にしている。コミュニケーションツールとして、相手のリテラシーを考えつつ、どうしたら理解に苦しまずに伝えたいことが伝わるかを考えよう