1兆ドルコーチ

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

「1兆ドルコーチ」とはシリコンバレーの伝説的存在、故ビル・キャンベルのこと。師の教えを「なんとしてでも残そう!」とグーグル元CEOらが執筆したのが本書です。ここまで愛に溢れた自己啓発書はそうそう見当たりません。

シリコンバレーの天才たちを成功に導いたコーチの教え

「私は、ぼんくらフットボールコーチとしてキャリアを何年もムダにした」ーー本書の主人公であるビル・キャンベルは言います。実際、フットボールコーチ時代は「12勝41敗」やら「69対0」やらのボロ負け続き。そんな彼は39歳でビジネス界に入るや、1兆ドル以上の価値を生み出しました。

いちスタートアップに過ぎなかったグーグルを巨大企業に成長させ、潰れかかったアップルの立て直し。スティーブ・ジョブズがアップルを追放された時は最後まで抵抗した人物でもあります。

本書はそんな彼の成功法則をまとめたものですが、スゴイのはエピソードの語り部がシリコンバレーの天才たちであること。

著者のエリック・シュミット(グーグル元CEO)をはじめ、ラリー・ペイジ(グーグル元CEO)やジェフ・ベゾス(AmazonのCEO)やシェリル・サンドバーグ(FacebookのCOO)、マリッサ・メイヤー(Yahoo!の元CEO、Googleの元副社長)、アル・ゴア(元アメリカ合衆国副大統領)らが受けたアドバイスが次々登場します。

成功した企業の裏話を知ることのできる、のぞき見的な面白さもある本です。

いくつか挙げてみると。

「最適解が生まれない場合、君の仕事は決着をつけること。『この方針で行くぞ、以上!』と言うんだ」

「部下にすべきことを指図するな。まず、物語を語れ」

「トップよりも同僚の意見に注意を払え。チームメイトにどう思われているかが肝心なんだ」

シリコンバレーから日帰りで日本に出張(!)するような人だっただけに、ビルの言葉はパワフルで熱いです。けれど、もっと熱いのは彼の死後、その教えを本にすべくビジネス界のリーダーたちが協力し合った事実ではないでしょうか。

本書に『パワー・オブ・ラブ』というチャプターがあります。

※『パワー・オブ・ラブ』は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌タイトル

この本の存在そのものが、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが歌ったこの代表曲ほどの力を持っている気がします。

※ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、1980年代に数々のヒットで高い人気を博したアメリカン・ロックの代表的存在