チャートでわかる2つの「売りタイミング」

チャート分析キホンのキ/ 小泉 秀希とんぼせんせい

ちょっとコツを押さえるだけで大きな武器になる株価チャート。そんなチャートのキホンを紐解く本連載の第6回は、多くの投資家が悩む「売りタイミング」についてです。チャートを使えば、基本的な2つの「売りタイミング」を誰でもつかむことができます。具体例とともに見ていきましょう。

「売りが上手な人=投資やトレードが上手な人」

個人投資家の方からいただく質問で圧倒的に多いものがあります。それは、「売りタイミング」についてです。

たとえば、「せっかく良いタイミングを買ったのに、売りタイミングが上手くいかずに、ピーク時の含み益の半分しか利益を取れなかった」「損切りが遅れて、損失が大きくふらんでしまった」というような悩みであり、そうしたことに対する対処法です。

一方、投資やトレードで資産を増やすことに成功した人の大半は売りタイミングの大切さを強調し、実際に売り方針がしっかりしている人が多いです。「売りが上手な人=投資やトレードが上手な人」ということが言えそうです。そこで今回は、売りタイミングをどう考えたらいいのか、その悩みにズバリ答えたいと思います。

2つの「売りタイミング」

売りのタイミングには2種類あります。「目標に達して売る」のは、株価が想定通りの動きを続けた末に売るというイメージです。一方「売りシグナル」とは、基本的には想定から外れた動きのことです。たとえば、移動平均線に沿って上昇していたのにその移動平均線を割り込んでしまったというような動きが、売りシグナルになります。

つまり、想定通りの動きの末に売るか、想定から外れた動きになったから売るか、という2種類の売りがあるということです。

売りタイミング1:目標に達して売る
売りタイミング2:シグナルで売る

以下で、それぞれの売りタイミングについて具体的に説明します。

売りタイミング1:目標に達して売る

これは、「株を買う時に想定した目標に達したので売ること」なので、理想的な売りタイミングということになります。こうした売りができる前提としては、当たり前ですが、買う時に「このくらいまでは上昇しそうだ」という目標を想定しておく必要があります。

目標の想定はPERなどによってファンダメンタルズ面から行う方法もありますが、ここではチャートを使って目標を想定する考え方について見ていきましょう。

チャート的な株価の目標は、基本的には過去の株価の値動きのクセを観察して決めます。
例えば、以下の「 富士通 」の例について考えてみましょう。富士通は日本を代表するIT企業ですが、現在は企業や銀行のシステム構築の事業が好調であり、さらに、5GやAIなどのテーマにも乗る銘柄として好調な株価推移を続けています。

その富士通の株価の動きをよく見てみると、25日移動平均線に沿って上昇することが多く、25日移動平均線近辺で「買い」と考えられます。

また、25日移動平均線から800円ほど上方かい離すると目先の天井になることが多いので、それが目先の上値のメドになります。少し保守的に考えるなら、700円幅とか500円幅を利食いの目標にしてもいいと思います。

売りタイミング2:シグナルで売る

次に、想定した通りにいかなかった場合の「売りシグナル」について見ていきましょう。

これは「 TOPIX連動型上場投信 」というETFです。日経平均と並んで日本株の代表的な株価指数であるTOPIXにほぼ連動するようにできているETFであり、個人投資家が盛んに売買している銘柄です。この日足チャートを見ると、5日移動平均線が短期的なトレンドをよく捉えていることがわかります。

チャートを見ると、たとえば以下のルールでのトレードが比較的有効性が高いように思われます。

株価が5日移動平均線を上回る→買いシグナル
株価が5日移動平均線を下回る→売りシグナル
※終値ベースで判断

図中の点線部のように、膠着した局面では、細かい利食いや損切りを繰り返す形になりますが、買い1&売り1、買い2&売り2のようにトレンドが発生している局面では、大幅に利益が取れています。

この事例では、取引時間中に一時的に線を上回ったり下回ったりする動きは、あくまでも一時的なブレであることが多いので、売買シグナルは終値ベースで判断しています。もちろん、きめ細かく売買したいのであれば取引時間中の値動きにも対応して売買していく形でもいいと思います。自分に合う方法を探ってみましょう。

売買の根拠としてチャートを活用しよう!

相場は生き物ですから、完全に予測することや完全に値動きを捉えることは不可能です。そうした生き物としての相場にどのように対応したらいいか、投資家ごとに自分の性格やライフスタイルに合ったやり方を模索していく必要があります。

しかし、どの投資家やトレーダーにも共通して言えることは、チャートであれファンダメンタルズであれ、「売買するときの根拠をはっきりさせることが大事だ」、ということです。売買する時の根拠があいまいな投資家は、売りの判断をしっかりとすることができません。利食い売りならばどんなに利益が減ってもそれほど問題はないのですが、損切りの売りがきちんとできないと投資家として致命的な失敗に陥りかねません。

投資家やトレーダーとして成功するには、とにかく相場の中で生き残って成長し続けていくことです。そのためにも、一つ一つの売買にしっかりと根拠を持ち、きちんと売りができる投資家やトレーダーになることが大切です。

<まとめ>
・売りタイミングの考え方には、「目標に達して売る」と「シグナルで売る」の2つがある
・目標を定めて売るときは、過去のチャートなどから値動きのクセを観察して決める。たとえば移動平均線を使って、「それより500円上回ったら売る」というようなルールを決めておくとよい
・シグナルで売るときは、トレンドを示す移動平均線を終値で下回ったら売る、というようなルールを決めるべし
本記事は、チャート分析を解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。