30才で資産4億の投資術 ~かぶとーきょーさん前編

リアル投資家列伝・ 脱・ギャンブル投資! ロジカルなゲーム株投資で30才にして資産4億円/ かぶとーきょー

移動中や待ち時間はスマホでサクッとゲームで息抜きを――。そんな趣味が投資のタネになるかもしれません。実は、スマホ用のゲームを開発する会社には上場企業も多く存在します。そんな小型ゲーム株を中心に売買し、4億円以上を稼いできた投資家・かぶとーきょーさん。ゲーム株ならではの“攻略法”を教えてもらいましょう。

1銘柄で3億円を稼ぎ、川に飛び込む!

「会社の発表をスマホで読んだ瞬間、勝った! と。めちゃくちゃテンションが上がって川に飛び込んでました。奥多摩でバーベキューをしている最中だったんです。なぜか友だちもみんなワーっと飛び込んで。楽しかったなっていう(笑)」

1銘柄で3億円以上の利益をあげた1年半前の取引を、そう振り返るのは兼業投資家の「かぶとーきょー」さん。当時まだ20代。保有していたのは「 エクストリーム 」というスマホゲームを開発する会社だった。

「エクストリームの株価が急騰し毎日、+3000万円、+3000万円、+5000万円と含み益が増えていったんです。運もあったと思います、本当に――」

「運ゲー」としての株を卒業する

そう謙遜するが、決して運だけに頼った成功ではなかった。

「株を始めたのは2013年でした。新卒で入った会社の同僚と一緒に『働くよりも株で稼いだほうが早いんじゃないか』と。最初はギャンブル感覚だったし、株は『運ゲー』(運の要素で勝敗が決まるゲーム)だと思っていました」

それから数年は友人と交わした「この株、来そう!」という会話や有料情報を鵜呑みにしたりと、ギャンブル的な売買を繰り返した。資金を一気に失い市場から退場させられたこともあった。

「転機になったのが2017年。「 アエリア 」というゲーセク(ゲームセクター)の会社が17億円の特別損失を発表したんです。少し前までは時価総額数十億円ほどの会社でしたから、17億の特損ってかなり苦しいじゃないですか」

「買おう」とはとても思えないニュース。実際、発表翌日の株価はストップ安となった。

「でも、僕はストップ安となったまさにその日に買ったんです。なけなしの50万円を投じて、買えるだけ買った記憶があります。そうしたら6月には時価総額が500億円を突破するほどに株価が上がったんです」

「17億円の特損」から彼だけが見抜けた「未来の兆し」

時価総額にして10倍だ。ここで2つの疑問が湧く。17億円の特損という悪材料が出た直後なのに、かぶとーきょーさんはなぜ買ったのか? なぜ株価は急騰したのか?

「きっかけは友人との会話でした。彼によると『株は企業の開示が本当に意味することを読めればギャンブルではないし、ちゃんと勝ち続けられるんだよ』、と。本当だろうかと半信半疑でアエリアのIR(企業が行なう株主や投資家向けの発表)を読んでみると、特損の理由は過去に出したゲームや買収した会社に関連するものでした。それまでアエリアが出したゲームは、たしかにヒットしていなかったんです」

アエリアが計上した特別損失は、過去を清算するためだった。

「過去ではなく未来を見るのが株です。アエリアの未来を見ると、そのときは『A3!』というスマホゲームの事前登録者が50万人を超えていました」

スマホゲームはリリース前に、メールアドレスなどの事前登録を行なうことが多い。ユーザーの期待感を煽る目的があるし、またリリース直後に事前登録者が一斉に遊び始めることで、ランキングの上位に食い込みやすくなる。

「事前登録者数は、そのゲームがヒットするかどうかを予想する有力な材料のひとつとなります。『A3!』の50万人という数字は十分にヒットする可能性を感じさせる数字でしたし、実際にリリースされ良いスタートを切っていました。アエリアが過去に出したゲームはヒットしなかったかもしれませんが、それは過去のこと。『A3!』がヒットすれば株価は上がる。『たしかに大きな特損は出たけれど、それは過去の話。株は未来を見るのだから、買い以外ないよね』と、そんな話を友だちとしていたから買えたし、実際にその後『A3!』がヒットしたことによって、株価も急騰したんです」

ヒットする? しない? 「運」ではなく分析で予想

アエリアでの成功体験をきっかけに、ギャンブル感覚での株式投資を卒業。ゲーセク銘柄への特化を進めていく。

「アエリアの直後に売買したのが「 モブキャストホールディングス 」。ここもスマホゲームを開発していました。当時、発表予定だったゲームがあったのですが、わかっていたのは『大型IP(キャラクターやゲーム、マンガなどの知的財産)を利用したプロジェクト』であるということだけ。IPがもしドラゴンボールならヒットは間違いないだろうけれど、誰も知らないマンガなら株価は下がる。重要なのは『どのIPなのか』でした」

かぶとーきょーさんが行なったのは、「IPの予想」だった。

「可能性のあるIPをリストアップし『あのシリーズは続編が出たばかりだから、ない』とか、『あのマンガはまだゲーム化されていないから出るかも』と予想していき、有望なものは発行部数や直近のリリース状況、過去のゲームのセールスランキングなどから売上を予想しました。その結果、全体の期待値的に買いだな、と」

市場ではIPの発表を前に期待感が高まり、モブキャストの株価は上昇していった。

発表されたIPは――

その数日後、発表されたタイトルは人気マンガ「キングダム」のゲーム化だった。

「自分のリストにもありましたが、期待値からいうとハズレ。スマホゲームの世界では『初モノIPタイトルは売れる』が定説。キングダム初のスマホゲームだったら売れると予想しますが、すでにゲーム化されていた。そこまで売上は伸びないだろう、と」

予想通りに発表後の株価は下げていったが、かぶとーきょーさんはすでに決済していた。

仕事の経験、好きなものを活かす

じつはかぶとーきょーさんには、ゲーム業界についての「土地勘」があった。

「もともと子ども時代からゲーム好きでした。なかでも『スマブラ(スマッシュブラザーズ)』が好きで、小学生なのにインターネットで知り合った人とのオフ会を企画したりしていました。人間が生きる上でインフラや飲食も大事ですが、娯楽だってめちゃくちゃ大切です。だからゲームを作る人へのリスペクトはずっと持っていました」

自らがゲーム制作に携わったこともあった。

「勤務先はゲーム業界ではなかったものの、たまたま携帯ゲームに関連する仕事を任された。そのとき、携帯ゲームの制作フローやヒットしたときの爆発力を知ったんです」

まだスマホでなくガラケーの時代だったが、個人投資家としてゲームセクターへの集中投資を進めるきっかけのひとつになった。

「外部協力者」は誰か? の推理ゲーム

「同じ年に売買した「 enish 」では、新株予約権の発行がヒントになりました。最大18万株を『外部協力者』に発行するというんです。このIRが出た直後は話題にもなりませんでしたが、個人的に気になったのは『外部協力者が誰なのか』ということ」

過去に同じようなIRがなかったか、かぶとーきょーさんはゲーム会社のIRを総ざらいした。すると、見つかった。

「「 イグニス 」という会社が同じようなIRを出していたんです。イグニスの場合、相手が誰だったか――。秋元康さんでした」

イグニスが秋元康氏と手を組んで展開したゲームは市場の話題をかっさらい、株価も急騰した。

「秋元康さんがプロデュースするゲームなら売れるだろうし、市場にとって秋元康さんは神。このIRからの連想にみんなが気がつき始めたら期待だけで買われるだろうと思いました」

この時点で、かぶとーきょーさんは先んじてenish株を買っていった。

「さらにenishが欅坂46に関する商標を取っていることもわかった。これは『勝ち確定』だなと」

予想は的中。欅坂のゲームが出るとわかると、enishの株価はストップ高に。
かぶとーきょーさんが最初に買ったのは400円台。夏場には4000円近くまで上昇していた。

ギャンブル的な投資から脱却し、スマホゲーム銘柄を中心に手掛けることで分析の腕を磨いていったかぶとーきょーさんが出会ったのが、冒頭で紹介したエクストリームだった。1銘柄で3億円の利益をなぜ実現できたのか。次回、その詳細を聞いていこう。

※enish(3667)は記事執筆時点で、金融商品取引所の増担保銘柄に指定されています。