PERで読み解くマツモトキヨシHD

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部CHINATSU

イランなど中東問題により、年初から揺さぶられている日本株市場。いったんは落ち着きを取り戻していますが、まだ油断できない状況です。多くの投資家が不安を感じている時こそ、割安に放置されている株を探すチャンスでもあります。PERやチャートの基本などをチェックして、投資したくなる銘柄を探しましょう。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

「稼ぐ力」とPERのギャップを探る

一般的にPERは企業の将来の利益成長や、投資家の心理を表します。しかし、中には利益率が高かったり、事業成長にむけて着実に改善しているにもかかわらず、PERが低いままの銘柄もあります。そこで今回は、そんな利益率とPERにギャップがあり、割安感が感じられる企業をご紹介します。

case44:マツモトキヨシHD

今回ご紹介するのは、黄色い看板でおなじみのドラッグストア「 マツモトキヨシHD 」です。都市型ドラッグストアの先駆けとなる店舗を上野アメ横にオープンして以来、私たちの生活に欠かせない小売店の1つとなりました。最近では、訪日客にとっても定番ブランドとして定着しており、国内外で人気を集めています。

「稼ぐ力」はピカイチ

2020年3月期の予想PER(東洋経済予想)は17.5倍と、業種平均(24.4倍)よりも低い水準にとどまっています。しかし、「稼ぐ力」を表す売上高営業利益率を見ると、ドラッグストアの中では高水準に位置していることがうかがえます。

利益率が高い3つの理由

同社が高い営業利益率を誇っている理由として、主に以下の3つが挙げられます。

1.徹底したKPI管理による営業利益率の向上
2.海外ファンの獲得
3.デジタル化の推進

KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」とも言われます。つまり、会社として事業を営む上で大切にしている指標の1つであることを指します。同社はこのKPIそのものの管理を重視しており、営業利益率を上げるための施策をトコトン追及しているようです。

たとえば人件費。2020年3月期第2四半期決算の資料によれば、会社がコントロールできる人件費は、「人員構成」と「作業効率で変動する労働時間」。これらについて売上高を維持・底上げしつつ調整することで、コストを下げ、労働効率(営業利益率)を改善しています。

2つ目の海外ファンの獲得も、インバウンド客による売上のあるマツモトキヨシHDにとっては重要な要素です。単に海外の店舗数を増やすだけでなく、SNSによる情報発信も行い、フォロワー数の増加にも積極的に取り組んでいます。

また、お客様との接点を増やすためのツールとして、デジタル化の推進にも力を入れています。カード会員数が約2800万人いる中で、デジタル会員数は400万人程度にとどまりますが、デジタル会員は購買金額が約10%高いとのこと。お客様にとってデジタル会員になるメリットがあるとなれば、デジタル会員が増え売上アップにつながっていきそうです。

5期連続増配見込み

これからも営業利益率アップに期待ができそうな同社ですが、投資家にとっては増配傾向にあることも大きな魅力です。2017年末の株式分割を考慮した「1株あたり配当金」の推移を見ると、2019年度まで5期連続の増配が予想されています(予想は東洋経済予想)。利益率の改善とともに配当が増えれば、PERの上昇も考えられそうです。

ココカラファインとの統合にも期待

また、足元で「 ココカラファイン 」との経営統合を検討している同社。実現すれば売上高1兆円の業界トップとなります。統合後も徹底した利益率の改善や、海外売上の拡大、デジタルデータを活用したマーケティング施策により、さらなる売上アップや利益率の改善が期待できそうですね。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①からマツモトキヨシHDを見てきました。ドラッグストアの中で営業利益率トップを誇る同社。KPIの重視や海外ファン獲得、デジタル化などを活用して、さらなる収益の改善が見込まれています。経営統合の話が実現すれば、もう一段の収益アップを期待できるかもしれませんね。まずは経営統合に関するニュースに注目して、投資の是非を検討してみてはいかがでしょう。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。