第6回 親の終活のススメ、さらに「相続&贈与」税対策について聞いてみた

元国税局職員に聞く! 合法・節税マニュアル/ さんきゅう倉田日興フロッギー編集部

突然、親が入院したC江。「今はまだそんな話をする時期ではない」と思いつつも、いつかは経験することになるであろう「相続」の2文字がぼんやりと頭をよぎります。そして、相続と切っても切り離せないのが「相続税」。今から対策しておいた方がいいことがあるってホント? 今回は、いざという時に慌てずにすむために知っておきたい「相続」、相続まわりの税金&節税策について聞いていきます!

<まとめ>
・相続税にも基礎控除がある!
・最低3600万円以上の資産があったら、相続税がかかる
・110万円までの贈与なら贈与税はかからない
・贈与するときは「贈与した事実」を残す
・お金持ちではなくても使える「生前贈与」を活用すべし!

<登場人物>


さんきゅう倉田さん
よしもと所属の芸人。元国税局職員。


S子
フロッギー編集部員。フリーランスで青色申告5期目。節税に情熱を注ぐ。


C江
元経理。配偶者の扶養範囲内で働く、ちゃっかり屋。

金持ちでなくても相続税が発生!?

C江

最近、父が体調を崩して入院中でさ、「いざという時」のことを考えるようになってきたよ……(ショボン)。

S子

それは心配だね……。いつまでも元気と思っていた親が、いつの間にか高齢者の仲間入りしてるものね。私らも歳をとるわけだ。そろそろ「老い支度、終活」ってのも考える時期なのかもね。

倉田さん

C江さん、親御さんに「何かあったら」と思うと心配ですよね。いざという時になると気持ちの整理がつかずにバタバタしてしまうので、親御さんが元気なうちに「相続」について話しておくことは大切ですよ。

S子

そういえば、「相続」にも税金がかかるんですよね? 倉田さん。

倉田さん

はい。今回は「相続税」についてお話しましょう。
相続税とは、亡くなった人から財産をもらった時にかかる税金で、もらった人が収めるものです。

カエル先生の一言

相続の流れは、下記の通り。
1.死亡の事実が発生
2.故人の財産を明らかにする
3.法定相続人を確認する
4.財産価値の評価をする
5.相続税がかかるかどうか判断する
6.(相続税がかかる場合)申告
7.納税

カエル先生の一言

相続税は、下記の式で求められます。
[相続財産―(借入金や葬儀関連費用)-基礎控除]×税率(10%~55%)

S子

相続を受ける人は、みんな相続税を支払わないといけないんですか?

倉田さん

いいえ。相続税にもこれまでお話したような控除があります。

相続の基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)

C江

例えば、4人家族(夫婦+子ども2人)で、旦那さんが亡くなったとしたら、
法定相続人は妻と子どもの3人だから3000万円+(600万円×3人)=4800万円ということですか!
相続する財産が4800万円までだったら、相続税はかからないし、申告も必要ないってことになるのね。

カエル先生の一言

平成27年1月1日死亡分から基礎控除額が変更に。
従来、5000万円+1000万円×法定相続人の数だったのが4割減となり、相続税を支払う対象となる人が増えています。

S子

へー! それだけチャラになるのなら、相続税が発生する人ってそんなに多くないのかな?

倉田さん

それが、そうでもなくて。
東京など首都圏に家がある人の場合、相続税がかかるケースが増えているんですよ。

C江

家! たしかに東京は土地の値段だけで、この金額にいっちゃいそう(ガクブル)。
……万一、夫が死んでしまったらどうなるんだろう(泣)!

相続はキホン、直系の家族間で発生。配偶者には特例が充実

倉田さん

安心してください。ご主人が亡くなるケースでは配偶者には軽減の特例があります。また居住用住宅でしたら、不動産の評価が下がるので、基本的には多額の相続税が発生するなんてことはありません。心配しなくて大丈夫です。

S子

例えばですが、相続する人を増やせば、控除額も増えるんですか?

倉田さん

相続は基本、血のつながっている直系の家族間で発生するものです。「実子がいれば養子は一人までしか法定相続人になれない」など、控除に入れることのできる人数は決まっています

倉田さん

もちろん、遺言書などで他人に相続することもできますが、その場合の税率は2割加算。故人の配偶者や子、親に相続させるのが普通なので、それ以外に相続させるということは、それなりの理由あると思われますからね。

カエル先生の一言

配偶者が相続する場合には「配偶者の税額軽減」が適用され、1億6000万円もしくは配偶者の法定相続分のどちらか多い金額までなら、相続税がかかりません。こちらも申告が必要です。

倉田さん

ほかにも、配偶者は住んでいる家についての特例も充実しているんですよ。

カエル先生の一言

いずれかの要件を満たせば、故人が相続開始の直前まで住んでいた自宅の土地が対象となる「小規模宅地等の特例」では、自宅の価値の相続税評価額が80%減額されます。
要件1:配偶者が相続すること
要件2:同居していた相続人が相続すること
要件3:配偶者も同居人もいない場合に、相続開始前3年以上賃貸物件に住んでいた相続人が相続すること(通称:家なき子特例)

これって相続財産になる? ならない?

S子

相続の基礎控除額って、大きいですね。ところで、財産ってどんなものが対象になるんですか?

倉田さん

預金、現金、株や投信、家や土地、生命保険金、死亡退職金などですね。

C江

相続税がかからない財産もあるんですか?

倉田さん

先祖代々の墓地や墓石、仏具、神様を祭る道具など。また生命保険金や退職金は、500万円×法定相続人の金額分は非課税です。

S子

うっ、自分で判断するのは難しそうですね。

倉田さん

相続財産の評価方法は財産の種類によって異なります。例えば、上場株式だと評価方法は4つ。死亡日・死亡月・死亡前月・死亡前々月の終値の一番低いものから選べます。

倉田さん

さらに細かい条件のある特例などもあるので、個人で判断するのは難しいかもしれません。間違えて少なく申告しちゃうと、追徴課税となる可能性があるので、相続に強い税理士さんにお願いしたほうがいいです。

倉田さん

ざっくりとですが、相続税がかかるかどうかは国税庁のHPで調べられます。

カエル先生の一言

国税庁のHPにある「相続税の申告要否判定コーナー」では、相続財産の金額などを入力することで、相続税の申告のおおよその要否を判定することができます。

死後もらうのが相続、生前もらうのが贈与

C江

相続税の負担を軽くするために、生きているうちに贈与するというのを聞いたことがあるんですが……。

倉田さん

はい。生前に贈与することによって、相続のときの税金額を減らすこともできます。
相続税の補完として贈与税があって、贈与税は生きている人から財産をもらった時にかかります。贈与税も、もらった人が支払う税金です。

倉田さん

生前贈与は、王道の誰でもできる相続税対策ですので、しっかり理解したほうがいいです。

倉田さん

まず、暦年贈与。1年間に110万円までの贈与だったら、非課税です。人によっては、贈与の事実を明らかにするためにあえて申告する人もいます。暦年贈与は、受け取った側も認識しておくことが重要です。

S子

誰でも合法的にできる相続税対策があるのか! 万一これから印税などで爆儲けがあったときに(夢)、子どもに対してやってみたいです!!

倉田さん

その時は注意してください!!!

贈与するときに必ずやるべきコト

倉田さん

子どもに贈与する時に注意しなきゃいけないことは、その贈与したお金を親が管理してはダメ、という点。子どもに通帳、印鑑、キャッシュカードを渡して、子ども自身が使える状態にしておかなければ、贈与とはみなされないので、気を付けてください

倉田さん

贈与としてみなされるためには、以下のポイントを押さえておいてください。

・もらった人が認識していること
・もらった人が使っていること
・印鑑や通帳を口座を使う人が持っていること
・贈与契約書を作ること
・振り込みで入金すること

S子

贈与の事実があったということと、もらった人が使えているというポイントが大事なんですね。
せっかく110万円の生前贈与を進めたのに、あとから「認められないから相続税を払ってください!」と言われたら、ガッカリだろうな……。そのへん、詰めが甘いと痛い目を見るかも、と。しっかりメモしましたよ。

祖父母から孫への贈与特例がアツイ

C江

その他にも使える贈与の特例ってありますか?

倉田さん

子どもや孫の教育に使える教育資金贈与や、結婚・子育て資金の一括贈与。さらに住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税贈与があります。

S子

おじいちゃんが孫の習い事代を出すってやつですよね!

倉田さん

教育資金の対象となるのは、学校関連の費用。入学金や授業料。修学旅行費など。
学校以外では学習塾、ピアノなどの習い事、留学、ランドセル。野球グローブとか、通学のための交通費など、範囲は広いです。

C江

へー! 子育て世代にありがたいですね。これってたしか、金融機関に届けないといけないやつですよね?

倉田さん

そうです。信託銀行などの金融機関に届けを出して、贈与を受ける子どもや孫の口座を作ります。

S子

信託銀行!!! CMで見るし、存在は知っていたんだけど、役割をいま初めて知ったよ。贈与に関係してるのかーーー!

C江

信託銀行って、確かにこれまで全く馴染みがなかったね。
でも倉田さん、贈与の業務を扱っているのは信託銀行だけってわけでもないんですよね?

倉田さん

はい。証券会社や一般の銀行でも取り扱っていますよ。

倉田さん

教育資金は、子ども一人につき1500万円までが非課税になります。
ですので例えば父方と母方、両方の祖父母から750万円ずつを非課税で贈与してもらうことができます。

倉田さん

結婚資金で使える枠は300万円までです。
子育て資金の一括贈与では、保育園料やベビーシッター代なども負担してもらえるんですよ。こちらは1000万円まで非課税です。

倉田さん

あとは住宅を購入したり、増改築、リフォーム時に利用できる非課税枠。省エネ等住宅で3000万円まで非課税です。
それぞれ申告が必要ですので、お忘れなく。

倉田さん

この3つの贈与は2021年3月までだったものが2023年3月まで延長になります。少しずつ内容が変わっていたりするので、必ずご自身でチェックしてください。

S子

親に相続について切り出すのって、なんとなく気まずくてハードル高いけど、「かわいい孫たちのために~」という体裁でなら、話せそう!

どう考えてもお得なのは、110万円の非課税枠

C江

非課税枠もあるわけだから、こうした話を親と普段から話せるようにして、手元に残る金額を増やせるといいよね。

倉田さん

特例を使った生前贈与を進めておくのはいいと思います。とくに110万円までの、贈与税を払わなくてすむ額ならば、どう考えても得ですよね。
ご自身の生活に負担なく、贈与できる財産を持っている人はやっておいたほうがいいです!

S子

相続税対策って、お金持ちがやるものだと思っていたけど、普通の人がやってもいいものなんだね~。いざという時のために知識をつけておいて、今からできる対策は進めていこう!

<倉田さんからのワンポイント>
生前贈与を活用して、節税しよう!
本コンテンツは、SMBC日興証券が信頼できると判断した情報源に基づいて作成されますが、内容の正確性あるいは完全性について保証するものではありません。具体的な事案につきましては、税務署や、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家にご相談いただきますようお願いいたします。