このままいけば、2019年は昨年末と比較して2割近く日経平均株価が上昇して終わることができそうです。みなさんの投資成果はいかがでしたでしょうか。2020年もこのPERシリーズや、銘柄トレンドwatchなどを参考に、さまざまな企業を見つけてください。
PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
利益率の改善がPERを押し上げるケース
PERが上昇する最大の要因は、その企業の成長に対する期待の高まりです。特に、本業のもうけを表す営業利益が増えたり、売上高に対する利益率が上昇すれば、将来の業績に対する期待も高まりやすくなります。そこで今回は、そんな王道とも言うべき利益の着実な積み上げが、投資家の期待を高めているケースをご紹介します。
case43:ヤマハ
今回ご紹介するのは、世界首位の総合楽器メーカー「 ヤマハ 」です。1954年から始めた「ヤマハ音楽教室」を全国に展開すると共に、楽器ユーザーの生の声を活かした楽器作りをしてきました。いまや海外売上が約7割を占め、世界40ヵ国以上の国・地域で音楽教室を展開しています。
じりじりと上がるPERの正体
予想PER(東洋経済予想)は26.4倍と業種平均よりも高めです。また、過去の推移を見ても、ここ数年でじりじりとその水準を切り上げてきていることがうかがえます。なにが投資家の同社に対する評価を上げているのでしょうか。
営業利益は過去最高を更新!
予想PERが上昇している背景の1つに、着実な利益の伸びと稼げる体質への変化が挙げられます。同社の営業利益は2019年3月期に560億円と過去最高を記録しました。また、営業利益を売上高で割った営業利益率は12.8%と年々その水準が上昇していることがわかります。
所得が増える新興国の追い風吹く
着実に利益が伸びている背景には、中国をはじめとした新興国の追い風があります。
国内が減収となる一方で、中国の売上高は2019年3月期には前年同期比+9.3%と大きく伸びています。背景には、中間所得層が子供を音楽教室へ通わせるようになり始めたことが挙げられます。「一億総中流」とうたわれた日本の1970〜80年代に、ピアノ教室が流行したのと同じ現象がいままさに中国で起きつつあるのです。今後20−30年継続する大きなトレンドが始まった可能性があります。
ほかにも、中間所得層が増加しているインドにて、2019年春に楽器を生産する工場の操業をスタートしています。今後は、中国以外での収益アップにも期待が高まります。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①②③からヤマハを見てきました。営業利益や利益率の改善を背景に、じりじりと上がる同社の予想PER。中国をはじめとした新興国の楽器学習ブームをうまくキャッチして成長しているようです。中国だけでなく、人口ボーナス期をむかえるさまざまな国で楽器学習文化が広まれば、ヤマハのファンがもっと増えるかもしれませんね。