【2019年まとめ】カエル先生のマーケットハイライト

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

2019年も残すところあとわずか。今年は平成から令和に時代が移り変わった節目の年でした。また、消費増税やキャッシュレス決済の普及など私たちの生活も大きく変化した年でもありました。そんな2019年の株式マーケットではどんなことが起こったのでしょうか。また、どの銘柄が上昇し、一番日本株を買っていたのは誰なのでしょうか。カエル先生と一緒に今年の相場を振り返って、来年の株式投資に備えましょう!

【1−3月】米国金融政策の転換

2018年末に世界景気の先行きを不安視する見方から、1日で1000円以上下落した日もあった日経平均株価。しかし、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、それまでの「金融引き締め」スタンスを緩めると年明け早々に表明したことで、株価は上昇に転じました

カエル先生の一言

「金融引き締め」は、一般的に景気が良くバブルの懸念が出始めているときに、それを抑えるために中央銀行がとる金融政策の1つです。その逆は「金融緩和」。特に米国の金融政策は、世界の景気に影響を与える可能性があるため、投資家の注目度は常に高いです。今回のように株価が急落している場面では、「方針を見直す」と発表するだけで、投資家の安心感につながるケースがあります。

【4−6月】米中貿易摩擦で株価下落

株式市場に安心感が広がっていた中、いわゆる「トランプ砲」で 5月に投資家心理が一気に悪化しました。前年から米国と中国は貿易に関する協議を行っていましたが、その対応の遅さに痺れを切らしたトランプ大統領が約2000億ドル分の製品に対する関税を10%から25%に引き上げるとTwitterで宣言したのです。

一般的に、関税の引き上げは景気の減速につながる恐れがあります。世界の経済をリードする米国と中国の景気が減速するとなれば、企業業績も落ち込む可能性があり、投資家も投資に慎重な姿勢にならざるを得なくなります。

【7−9月】リスクを取りづらい雰囲気続く

国内ではラグビーW杯で盛り上がったこの時期。外交面では、7月1日に日本が韓国を「ホワイト国」から除外する方針を表明したことが話題となりました。韓国の輸出管理体制に懸念が生じたためと日本政府は発表しましたが、韓国政府はこれに反発。

さらには、北朝鮮による弾道ミサイル発射の兆候などの軍事情報を2国間で交換するための取り組みである「GSOMIA」を破棄すると、韓国が一方的に宣言しました。東アジア情勢の緊張をもたらすほか、日韓交流の冷え込みなどが懸念として浮上し、株式市場でもリスクとして意識されるようになりました。

【10−12月】米中協議再開と消費増税「アク抜け」が支えに

秋以降の日経平均株価は、春につけた年初来高値を更新するなど上昇トレンドが続きました。背景にあるのは、リスクとして意識されていた米中の貿易交渉に進展が見られ始めたことです。関税の引き上げ時期を見送るなど、少しずつではありますが歩み寄りの姿勢が見られました。これにより景気の先行きに対する懸念が晴れてきたことが株価を押し上げました。

また、国内では消費増税が10月から実施されたことも「悪材料出尽くし」と捉えられたようです。株式市場では、常に数ヵ月先、1年先の景気がどうなるかを投資家が予測して株が売買されます。そのため、過ぎてしまったことは悪材料出尽くしなら株価上昇、好材料出尽くしなら株価下落につながるケースがあります。

世界的に金融政策が緩和方向にある中で、国内外の悪材料が少しずつ消化されたことが株価上昇につながったものと考えられます。

約4分の3の株価が上昇

こうした相場環境の中、個別ではどんな銘柄が上がったのでしょうか。
東証一部上場銘柄2152銘柄ベースで見ると、約4分の3の銘柄が上昇し、2倍以上になった銘柄も58銘柄ありました(2019年12月13日終値ベース)。夏までは横ばい圏の推移でしたが、9月以降の投資家心理改善によって全体としては株価が上昇した銘柄が多かったようです。

半導体関連に追い風

個別では、ネットショップの一元管理などを手掛ける「 アイル 」や、企業のIR(投資家情報)やSR(株主情報)活動に特化したコンサルティング事業を営む「 アイ・アールジャパンホールディングス 」などが大きく上昇しました。また、半導体市況の回復を受けて、検査装置を手掛ける「 レーザーテック 」、工場の搬送装置を製造する「 ローツェ 」などが上昇。それ以外でも半導体関連銘柄に大きく上昇する傾向がありました。

一方、今年は台風や洪水による被害が大きかったこともあり、災害の危機管理調査を行う「 いであ 」も5位にランクインしました。市況が回復したものや、これから需要が増える分野を手掛ける企業に注目が集まった様子が読み取れますね。

日本株を支えたのは「自社株買い」

では、今年一番日本株を買っていたのは誰なのでしょうか。
毎週第4営業日に日本取引所グループから発表される「投資部門別売買動向」によると、2019年に一番日本株を買い越しているのは約4.1兆円の「事業法人」でした。これはつまり、企業による「自社株買い」によって株が継続的に買われていたことを表します。積極的な株主還元を行う企業が増えている様子がうかがえますね。

2番目に買い越しているのは、海外投資家です。約7割の売買シェアを握る海外投資家は、 一時期2兆円以上を売り越す場面もありましたが、先ほど見たような米中貿易交渉の進展などを背景に、再び買い越しに転じた様子がうかがえます。

年金に売り越しの傾向も

一方で、最も売り越したのは個人投資家です。毎年の傾向ではありますが、IPOで得た株や、上昇した株を利益確定する動きが継続してあった様子がうかがえます。

また、10月ごろから見られる特徴としては、年金基金の売買を表す「信託銀行」によって、株が売られていることです。12月1週目の時点で年間の売り越し額は9000億円超となっており、売り越し幅は2013年以来6年ぶりの水準です。

カエル先生の一言

私たちの年金は、納付したものがまとめられて「年金基金」として運用されています。その運用や管理を信託銀行が担っているため、年金基金の売買が信託銀行の勘定として、売買動向に表れます。

新たに令和の時代となり、海外情勢に左右されつつも、バブル後の高値(2万4270円)に近づいている日経平均株価。引き続き「トランプ砲」などには注意が必要ですが、市況の回復が目立つ半導体関連やニーズが高まっている分野では、株価も好調なようです。

2020年もこの「マーケットハイライト」で相場環境をチェックしつつ、「日興ストラテジーセレクション」「データから見つかる! 困ったときの投資アイデア」を読んで、気になる銘柄に投資してみましょう!