移動平均線のキホン「平均線買い」

チャート分析キホンのキ/ 小泉 秀希とんぼせんせい

ちょっとコツを押さえるだけで大きな武器になる株価チャート。そんなチャートのキホンを紐解く本連載の第3回は「移動平均線」についてです。実は平均線の見方がわかれば、基本的な売買戦略の1つをマスターすることができてしまいます。「売買のタイミングにいつも迷ってしまう!」という方、必見です。

移動平均線は、株価トレンドの道しるべ

株価チャートを使いこなすための2つの基本のうち、前回はローソク足による判断法を解説しました。ローソク足は株価の動きそのものをビジュアル化することで株価の勢いが確認でき、それによって「上昇トレンドがスタートした!」「株価が天井を付けた!」ということを直観しやすくしたものです。

それに対して今回紹介する移動平均線は、株価トレンドをよりハッキリと判断できるものです。
株価は日々上下していますし、それによって投資家も一喜一憂してしまいがちです。そうした短期的な動きに惑わされずに、「株価トレンドの道しるべ」となるのが移動平均線なのです。

具体例を見ながら詳しく説明していきましょう。

これは「 ソニー 」の週足チャートですが、ローソク足に「13週移動平均線」と「26週移動平均線」という2種類の移動平均線が添えられています。13週移動平均というのは、直近13週間の株価の終値の平均値のことであり、それを連ねた線が13週移動平均線です。

移動平均線はさまざまな期間のものを描くことができますが、週足チャートでは13週移動平均線と26週移動平均線を用いるのが一般的です。証券会社のサイトで表示される株価チャートでは、週足の場合はだいたいこの2つの移動平均線が添えられています。

移動平均線で株価トレンドを判断する2つのポイント

移動平均線で上昇トレンド・下降トレンドを判断するには、「平均線の向き」と「株価との位置関係」の2つに注目してみましょう。そのうえで以下のように整理することができます。

平均線が上向きで、株価がその線の上で推移する→上昇トレンド
平均線か下向きで、株価がその線の下で推移する→下降トレンド

もう一度ソニーの例で見てみましょう。
2018年9月頃から2019年3月頃にかけては、2つの移動平均線がともに下向きに転じ、株価はおおむねこの平均線の下で推移しています。つまり、下降トレンドにあることがわかります。

一方、2019年4月以降は、2つの移動平均線がともに上向き、株価はおおむねこの平均線の上で推移していますので、上昇トレンドに転じたことが読み取れます。

ソニーはゲームや音楽、家電など様々な事業を展開していますが、とくに今はCMOSセンサーで収益を拡大させています。CMOSセンサーは光を感じて電気信号に変える半導体センサーで、スマートフォンやデジタルカメラに多く使われています。今後は自動運転を実現するためのキーデバイスとして自動車向けのニーズ拡大が期待されています。ソニーはこの有望な製品で世界トップシェアを握っています。

2018年秋から2019年春にかけての時期は、ちょうど電機業界を中心に景気指標が落ち込んで、その中でソニーの株も売り込まれました。しかし、2019年春以降は、改めてソニーの収益力の強さとCMOSセンサーの将来性への評価が高まったため、株価が回復に向かったという背景があります。

チャート活用のキホン:「上昇トレンドの押し目買い」

移動平均線を活用することで、初心者でもカンタンに使える「チャート活用のキホン」とも言える、ある売買戦略が可能になります。それは、「上昇トレンドの押し目買い」という戦略です。

ローソク足や移動平均線から見て上昇トレンドの局面において、株価が一時的に下落し、移動平均線の近辺に落ちてきたところで「押し目買い」をするのです。「押し目」とは株価が上がっていく中での一時的な下落場面のことを指します。

ソニーの場合には、13週移動平均線が押し目買いのポイントになっていることがわかりますが、26週移動平均線まで下ブレしてくることも想定して、2段階構えの戦略を取ることをオススメします。

つまり、13週移動平均線近辺で買うのは予定金額の半分程度にとどめ、26週移動平均線近辺まで落ちてきても、慌てずに追加買いする余裕を持ちましょう。

万一、26週移動平均線を割り込んでも下げが止まらずに株価低迷が続くようなら、その場合には残念ながら損切りをしましょう。当たり前ですが、勝率100%の戦略は存在しません。ダメだった場合のことも考えて、慣れるまでは特に少額の資金で、練習のつもりでトレードに取り組むのがよいでしょう。

カエル先生の一言

「損切り」は投資を続けるうえでとても大切な行動です。人は損を抱え始めると、買った値段に戻ることばかり期待してしまい、冷静な投資判断が下せなくなりがちです。したがって、例えば「移動平均線から10%下落したら損切りをする」など、自分なりのルールを持つことをオススメします。
「大公開!  証券社員が考える「売り」のマイルール」を読む
「損切りできないのは当然! 「損失回避バイアス」の仕組み」を読む

最後に、移動平均線の使い分け方についてまとめて紹介します。
どんな期間の移動平均線でも、基本的にその使い方は変わりません。いずれもその平均線の向きと株価との位置関係でトレンドを判断して、押し目買いを狙うというのが基本です。

5日移動平均線と25日移動平均線

この2つは一般的に日足チャートに添えられることが多い移動平均線です。5日移動平均線は数日程度の株価トレンドを示すものであり、数日程度の短期トレードをするときに参考になります。25日移動平均線は1ヵ月程度の株価トレンドを示すものであり、数週間程度のゆったりしたトレードに用いるのに適しています。

13週移動平均線と26週移動平均線

これらは週足チャートに添えられることが多い移動平均線です。どちらも数ヵ月程度の株価トレンドを示しています。数ヵ月程度の期間で株をゆったり売買する場合に、2つの線を合わせて見ながら、大まかな株価トレンドを判断し、2つの線の位置を意識して2段構えで押し目買いの戦略を取る、というのが比較的オーソドックスなトレード方法です。

12ヵ月移動平均線と24ヵ月月移動平均線

この2つは月足チャートに添えられることが多く、どちらも1年から数年程度のトレンドを示します。1~2年に一度の押し目買いのチャンスを狙うのに適しています。

次回は、ローソク足と移動平均線を合わせて使うことで力を発揮する、より強力な売買戦略をご紹介したいと思います。

<まとめ>
・移動平均線は、日々の株価の動きに惑わされずにトレンドをつかむための「道しるべ」
・移動平均線を目安にして、「上昇トレンドの押し目買い」戦略を取るのがオススメ
・想定する「買い」から「売り」の期間に応じて、移動平均線の種類を使い分ける
本記事は、チャート分析を解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。