テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、大量のデータを保存できるHDD(ハードディスクドライブ)転売事件をきっかけに、ニーズの高まりが予想される「データ消去」「シンクライアント端末」関連をご紹介します。
HDDの転売でデータ流出か
12月6日、神奈川県の行政文書の管理に使われていたサーバーのHDDがネットオークションで転売され、データが流失していたことが発覚しました。
神奈川県は、富士通リース(「 富士通 」の持分法適用関連会社、「 東京センチュリー 」の子会社)から共有サーバーを借りていました。これが今春に更新期を迎えたため、当該HDDを取り外す作業が行われました。富士通リースが県との契約に基づき、復元不可能な状態にして廃棄する手はずでしたが、廃棄を委託されていたブロードリンク社がその指示に従わず、社内に保存されたHDDをブロードリンクの従業員が転売したとのことです。
HDD上のデータを完全に消すには、強い磁気を当ててHDDの磁気データを消去したり、乱数データなどの上書きを行ったり、物理的に壊すといった手段が必要になります。なお、ブロードリンク社の取引先の1つである防衛省は、自ら物理的に破壊した上で引き渡していたとのこと。こうしたことから、あらためて電子データの情報管理体制が問われることになりそうです。
「データ消去」「シンクライアント端末」関連に注目
この事件を受けて、「 パシフィックネット 」が大幅続伸し、年初来高値を更新しました。同社はIT機器管理サービスを展開し、データ消去サービスやデータ消去証明書の発行も行っています。足元の業績は好調で、2020年5月期第1四半期で第2四半期累計の営業利益計画の9割を確保している状況です。
また、手元のデータは最小限にし、主にサーバー側でデータを一括管理する「シンクライアント端末」へのシフトも進むと見られています。その影響からか、「 アセンテック 」の株価に動意が見られました。同社はデスクトップ環境を仮想化してサーバー上に集約する「シンクライアント」ソリューションを手掛けています。2020年1月期はテレワーク導入、サイバーセキュリティ対策、情報漏えい対策、災害対策などの需要増加を背景に、一般企業のほか、国内大手クラウド事業者、地方公共団体などからも受注し、業績は順調のようです。
シンクライアント関連としては、株価が高値圏でねばり強く推移している「 JBCCホールディングス 」なども挙げられます。大量のデータを小さな端末で保存できてしまうことは便利でもありますが、リスクも伴います。データ消去サービスやシンクライアント関連は、これからますますニーズが高まりそうですね。
(出典:日本証券新聞)