第12投・家のこだわりってありますか?
イチロー
子供のころに育った家が、町の中でも一番小さな家だったんですね。それがすごくコンプレックスで。
イチロー
中学時代ですけれど、仲の良い友達を家に呼ぼうと思って。
呼びたくなかったんですけれど、すごく仲良くなったので、家に呼ぼうと思って声はかけたんですよ。
イチロー
そうしたら、その子の家はその町で一番でっかい家だったんですよ。
それで呼ぶのを結局やめたんですよ。そういう、ちょっとこう……。
イチロー
コンプレックス……かな。ちょっと僕の中では嫌な過去なんですけれど。
だからプロ野球選手になったら、とにかくでっかい家を建てる、というわかりやすい目標は、それは絶対に達成すると、そのときに思ったんですよ。いつでも人が呼べるように。
イチロー
それはなんとなく分かるな。僕なんかもやっぱり狭い空間で育っているので、そこの方が落ち着くというのはよく分かります。
第13投・チームのスローガンってありましたか?
チームで、そういうのってありましたか?
イチロー
スローガンみたいな? 毎年なんか作られるんですけれど、変える必要はないんじゃないかとも思うんですけれどね、本当に。ブレてんじゃねーよ、と思うんですけれど。あれはあんまり好きじゃないんですよ、スローガンって。
イチロー
今年のスローガンは、バチっと、チームとしての球団としての一つの考え方を持っておけよと思うんですよね。
イチロー
自分のために、もちろんプロですからやるんですけれど、プラスαであの人のために俺は頑張るんだ、という気持ちが多ければ多いほど、どんどん良いチームになっていくと思うんですよ。
イチロー
トップが、経営する側がそういう気持ちを示してくれないと、プラスαは生まれないですよね。
第14投・もし社長だったらどんな社長になりますか?
イチローさんが何かの会社の社長だったら、どんな社長ですか?
イチロー
厳しさは優しさと捉えることもできるので、わかりやすい優しさはないと思いますよ。厳しいと思います。
ガミガミいう厳しさというよりは、もう黙っている厳しさでしょうね。
イチロー
あの社長、何も言わないけれど何考えているんだと、勝手に考えてもらう。
時間がかかると思うんですけれど、そうなったら勝ちですよね。
キレるときはわざとキレるという、そういうのをたまに見せておけば、うわ~、この社長もキレるんだと。
イチロー
それはテクニカルなことですよね。
イチロー
それはダメです! それはダメですね。
イチロー
ただの優しさはもう、何にも優しくないですからね。障害にしかならないですよ。
瞬間的には、その瞬間はなんとなく空気感で良かったとしても、ためにはならないですよね。