PERで読み解くエムスリー

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部きくちゆうき

過熱感からか、上値が重くなってきた日本株。9月以降、上昇トレンドが続いていたため、利益を確定する動きが少し出始めているのかもしれません。いったん利益を確定させて休んでから、またじっくり投資先を考えるのは、個人投資家の特権です。PERなどを参考にして、次に投資する先をゆっくり考えてみましょう。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

業種を越えて株価を考える

株価の割高・割安を図る指標であるPER。一般的には、業種ごとにその水準が異なるため、まずは同じ業種内でどういった評価をされているかを観察することが基本です。しかし、中には業種内にはライバルが少なく、異なる分野の企業と比較をしたほうが適切であるケースもあります。そこで今回は業界内にライバル不在で革新的な成長を遂げつつある企業をご紹介します。

case41:エムスリー

今回ご紹介するのは、日本最大の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営する「 エムスリー 」です 。市場規模が40兆円とも言われる医療業界。その業界の中心的役割を担っているのが医師ですが、そのうちの約80%、25万人以上を同社は会員として抱えています。

不必要な医療コストを1円でも減らす

同社のミッション(事業目的)は、インターネットを活用して、健康で楽しく長生きする人を一人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすことです。特に、これまで製薬企業が医師や病院向けにおこなっていたMR(製薬会社の営業職)の分野では、情報収集の時間に対して、大きなコストが課題となっていました。それをメールやポータルサイトを活用することで、圧倒的なコスト圧縮を実現しているのが同社のサービスなのです。

医療ポータルサイトを軸に大幅増収増益

同社は3つの国内事業と、海外事業を手掛けています。MRの営業コスト削減をきっかけに、日々の診療に役立つ医療情報サイトや、治験支援サービス、求職支援サービスなど幅広く医療分野のサービスを展開しています。また、国内では約8割の医師が同社サービスの会員ですが、海外でもまもなく世界の半分の医師を網羅する勢いです。

こうした国内外のさまざまな医療ニーズを吸収することで、2019年3月期の決算では、売上収益が1131億円(前期比+19.7%)、営業利益が308億円(同+12.1%)と大幅増収増益となりました。2020年3月期もその勢いは続く見込みで、特に海外における伸びしろは大きそうです。

PERは高水準も、割高とは言い切れない

さまざまな医療分野に横断的に活用できる点や、海外でのさらなるシェア拡大のポテンシャルなどから、予想PER(東洋経済予想)は88.1倍と非常に高水準にあるといえます。業種平均と比べてしまうと割高感を感じますが、弊社アナリストによれば、同社のPERは米国のアマゾンや日本のLINEといった成長中のデータプラットフォーマーと比較することが妥当であり、その評価は適切な水準であるとも考えられます

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②からエムスリーを見てきました。不必要な医療コストを1円でも減らすことをミッションに掲げ、増収増益を続けている同社。医療業界におけるグローバルスタンダードとして、まだまだ成長の伸びしろは大きそうですね。今後の同社の海外展開と、新たなコスト削減策に注目です。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。