「適応ビジネス」の輸出に期待

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、猛威を振るった台風19号など自然災害から私たちを守ってくれる企業についてご紹介します。

自然災害増でニーズが高まる適応ビジネス

過去最大級と称された台風19号。海水温の高い海域を進んだため「急速強化」されたとのことでした。日本近海の海水温が高い理由の1つとして、温暖化が進んでいることが挙げられます。

一般的に、温暖化対策には「緩和」と「適応」の2タイプがあります。「緩和」は、温暖化の原因であるCO2など温室効果ガスの排出削減などにより進行を食い止めるものです。「適応」は、気温の上昇や海面上昇といった起こっている変化への対策や、以前とは変化した気候条件を利用する取り組みのことを指します。

後者の適応について日本政府は2018年11月、「気候変動適応計画」を閣議決定し、「適応ビジネス」を推進する方針を掲げています。適応ビジネスで国内の気候変化に対応するだけでなく、その技術を海外に輸出する意欲も示しています。また、国連環境計画(UNEP)は、途上国の適応に掛かる費用は2050年時点で年間最大50兆円に達すると推定しています。

世界で活躍する「適応ビジネス」企業たち

具体的に適応ビジネスとはどういったものかをいくつかご紹介します。例えば「 ユーグレナ 」は、海水面上昇で塩害が発生したバングラデシュ南部の沿海地域で、もやしの原材料となる緑豆を生産。塩害で劣化した土地はより多くの温室効果ガスを排出するとのことで、ユーグレナの取り組みは緩和策にもつながっています。

富士通 」は農業ICTシステムを開発し、IT技術で牛の繁殖支援サービスなどを展開。またゲリラ豪雨対策のために、マンホールの蓋にセンサーを取り付ける下水道氾濫検知ソリューションも開発しています。

日揮HD 」はサウジアラビアやオマーンで海水淡水化事業を展開しています。また、中国にてオゾンによる水質浄化も行なっています。「 ヤマハ発動機 」は、インドネシアやベトナム、カンボジアで小型浄水器「クリーンウォーターシステム」を販売。シンプルな仕組みなためランニングコストが低く抑えられ、途上国自身が給水所を自主運営しています。「 オプテックスグループ 」はベトナムで簡易水質測定キットを使った水環境管理の調査を実施しています。

気温が上昇すると蚊の繁殖地域が拡大するため、マラリア対策も必要になります。「 シャープ 」は薬剤を使わず蚊を捕獲する空気清浄機「蚊取空清」をASEAN(東南アジア諸国連合)に提供。「 住友化学 」も防虫剤を練りこんだ蚊帳「オリセットネット」を開発し、タンザニアなどで使われています。

一方、「 デクセリアルズ 」は、屋内と屋外の暑熱環境を緩和し、災害時のガラス飛散も防止する窓用遮熱フィルムである熱線再帰フィルムを開発しました。

日本だけでなく、世界でもニーズが高まりそうな「適応ビジネス」。日本企業のこれからの活躍が期待されますね。

(出典:日本証券新聞)