今年も残すところあと2ヵ月。買った株などの利益が非課税になるNISAの枠はもう活用済みでしょうか。「まだ今年の分が残っている!」という方は、本連載や億超え投資家の投資テクを参考にして、ぜひNISAで買いたい銘柄を探してみてください。
PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
ニーズがありすぎて業績が圧迫されるケース
一般的に、人々や企業からの需要が大きいサービスは、売上や利益も伸びやすい傾向があります。しかし、企業側が処理できる能力を超えるような状態が続くと、人件費や外注費などが嵩み、利益が出なくなってしまうことがあります。今回はこうしたニーズがありすぎて業績が圧迫されてしまっているケースをご紹介します。
case39:ヤマトHD
今回ご紹介するのは、クロネコマークの宅急便でおなじみの「 ヤマトHD 」です。同社は1976年に小口宅配の「宅急便」を、1988年に冷凍・冷蔵便の「クール宅急便」を開始するなどしている宅配の草分け的な存在です。ここ10年では、Amazonなどネット通販の拡大が追い風となり、宅急便取扱数が大きく増加していました。
営業赤字に陥った2つの理由
しかし、直近の業績を見ると、2019年4−6月期まで2四半期連続で営業赤字に陥っています。その影響で、2019年に入ってから株価やPERは軒並み下落基調にあります。主な理由として、以下の2つが考えられます。
①働き方改革を推進するための人員の確保による人件費の増加
②大口法人顧客の回復遅れ
ヤマトHDは2017年1−3月期から3四半期連続で営業赤字に転じたことがありました。このころから自社の配送能力を超える荷物の量になったことで、人件費が増え、収益を圧迫するようになりました。その後、同社は単価を上げたり、採算が取りづらい案件を削減したことで収益の回復を実現することができました。
2018年度に入り、ようやく人員確保や、働き方改革を進めた同社でしたが、いったん削減した荷受けの回復が想定より遅れていると考えられます。特にAmazonをはじめとした大口のネット通販の企業が、配送コストの安い小口の配送業者に委託するようになったため、配送の品質が良くても、同社に再依頼しないことなどが背景にあるようです。
正念場を迎える宅配業
また、そのほかの理由としては、これまでヤマトHDをはじめとした宅配会社を利用してきた楽天やヨドバシカメラなどの小売業者が、自前で配送まで一貫して行う流通網を整えてきたことも背景にあると考えられます。
宅配業界全体としては、まだ宅配量が増える可能性はあるものの、こうした流通網の変化が大手宅配企業にとっては売上の抑制要因となっており、人件費というコストの問題と売上高の鈍化という両面で正念場を迎えていると言えそうです。ユーザーや委託業者にとって、より便利なサービスの開発などが今後は課題となるのではないでしょうか。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①②からヤマトHDを見てきました。ネット通販が増え、宅配に対するニーズが急増したことで人件費の増加が収益を圧迫した同社。ようやく配送体制が整ったところで、大口顧客による荷受けの回復の鈍さがさらに業績を圧迫し、PERや株価を押し下げているようです。今後のコストコントロールと新たな配送サービスなどに注目が集まりそうですね。