テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は南アフリカ戦で敗れたものの日本代表がベスト8の活躍を見せたラグビーに関するニュースです。熱狂の裏にある、ビールを巡る企業の動きを読み解きます。
一晩でなくなった3日分のビール
日本代表がアイルランドから大金星を勝ち取ったあたりから、日本国中が一気にラグビー・フィーバーで沸きました。そして、試合会場やファンゾーンではラグビーファンが試合前からビールを飲み、観戦中にも飲み、試合後はノーサイドで相手チームのファンと一緒に飲む光景が見られます。
「イングランド戦があった静岡のファンゾーンでは3日分のビールが一晩でなくなってしまった。ビール会社の営業も『機会損失のないようにしましょう』と店を回り、飲み屋でも急遽ビールを発注し、大きなサーバーのレンタルを申し込んだ店もあった」(大手紙静岡支局記者)
このため、英国風パブを展開する「 ハブ 」の株価は反応し、英国発祥のガストロパブなどを展開する「 DDホールディングス 」はW杯オリジナルメニューを投入。「 串カツ田中 」は、TBS系で放送されたラグビードラマ「ノーサイド・ゲーム」とコラボした串カツを出し、W杯を盛り上げています。
売り子投入で新型サーバーにも出番
こうしたラグビーファンによるビール需要拡大に対応するため、大会組織委員会は急遽、観客席でビールを販売する「売り子」の投入を決めました。ラグビーは野球と異なり、前半と後半の間のハーフタイムぐらいしか観客が離席できません。ビールを席まで売り歩く売り子の投入により、試合会場でのビール消費に拍車がかかることが予想されます。これに合わせて「 フルキャスト 」など人材会社は、こぞって売り子のバイトや派遣を募集していました。
ちなみにプロ野球が行われる球場のビール売り子の中には、「おのののか」などタレントに転身する売り子も複数いるほどです。海外では中年男性が売り子を務めるのが一般的なため、昨年の日米野球の際には日本のビール売り子が米国でクローズアップされました。今回のW杯であらためて、日本のビール売り子が世界中から注目を浴びることになるかもしれませんね。
重いビールサーバーを背負う売り子の負担を軽減すべく、「 アサヒグループHD 」は「 デサント 」らの協力を得て、人間工学に基づき設計した「楽しょうサーバー」を開発。人間工学グッドプラクティス賞を受賞しています。ラグビーW杯を機に、同サーバーが海外にも普及するかもしれませんね。
(出典:日本証券新聞)