テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は9月11日に行われた内閣改造にまつわる裏事情と、関連企業について解説します。
デジタル化に反発するハンコ業界
第4次安倍(第2次改造)内閣が9月11日に発足しました。マスコミは恒例の新入閣大臣の“粗探し”を行っていますが、その中でもIT担当大臣に就任した竹本直一代議士が話題となっています。背景として、竹本氏がハンコ議連(日本の印章制度・文化を守る議員連盟)の会長を務めていることが挙げられます。
政府は、いわゆる「電子政府」を推進するべく「デジタル・ガバメント実行計画」を策定し、今年5月には「デジタルファースト法」を成立させました。同法では当初、法人登記での印鑑届け出を任意にし、会社設立のデジタル化を進める方針でした。
「が、これに反発したのがハンコ業界。昨年2月に内閣府へ反対の要望書を提出し、7月に全国印章政治連盟という政治団体を設立。その上で11月にハンコ議連が設立された」(ハンコ議連のメンバー)
その効果があったのか、印鑑届け出義務の廃止は「再考する」と先送りされました。その当事者が、電子政府を推進するデジタル担当大臣に就任したのです。この点について大臣就任会見で質問され、竹本大臣は「対立でなく、共栄のため知恵を絞る」と玉虫色の回答をしました。
「デジタルファースト法」で追い風が吹く企業とは
これが話題となり、そのためなのか「 AmidAホールディングス 」の株価が一時上昇しました。同社は印鑑の通販サイトを運営しており、竹本大臣によって印鑑廃止が先送りになるとの思惑で買われたと見られています。
いずれにしてもデジタルファースト法が成立している以上、行政のデジタル化は進んでいく見通しです。そうなると、「 NTTデータ 」や「 NEC 」、「 富士通 」といった政府情報システムの開発でおなじみの会社が思い浮かびます。また、それ以外にも確定申告等作成コーナーや法務省の登記情報、経産省の職員名簿などを受注している「 クロスキャット 」といった会社にも商機となります。
政府による公文書の電子化が進めば、各地の地方公共団体のデジタル化も進むことが想定されます。関連企業からすれば、こちらの方が間口は広いです。たとえば、石川県の加賀市は行政サービスのデジタル化を打ち出しています。それに対し、「 スマートバリュー 」が「SMART L-Gov(スマート エルガブ)」という自治体向け情報プラットフォームを提供し、ブロックチェーンを活用した行政サービスの開発に取り組んでいます。
(出典:日本証券新聞)