宇宙旅行はすぐそこに!? 宇宙関連に注目

データから見つかる! 困ったときの投資アイデア/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

「20XX年9月27日、ニュースの時間です。昨日、月面観光局は8月の地球から月への観光客数が単月で初めて10 万人を超えたと発表しました。………。次はスポーツです。男子宇宙ゴルフは………」

我々人類の日常の舞台が「地球」を飛び出して、「宇宙」へ広がるのは、そう遠くない未来かもしれません。2016年に米スペースX社の創業者であるイーロン・マスク氏が火星移住計画を発表。国内では、宇宙スタートアップ企業のispaceが月面に街をつくり、2040年に1000人の居住と年間旅行者1万人を目指すなど、人類の生活拠点を地球から月や火星といった宇宙へと広める動きがあります。

2050年、エレベーターで宇宙へ!?

火星や月への移住には、人の移動にとどまらず、物資の輸送が不可欠です。スペースX社や、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏が創業したブルーオリジン社では、コスト低減のための再利用可能なロケットが開発されています。ロケット発着の様子は各社のホームページ上で公開されており、垂直に発射されたロケットが垂直で帰還する様子は、さながら自動車を駐車するかのようなスムーズさです。

スペースX社の大型ロケット「ファルコン・ヘビー」ブースターを回収し再利用することでコスト低減が可能となる      出所:各種資料より

 

 

 

また、国内の大手建設会社である大林組は「宇宙エレベーター」建設の構想を立て、2050年の運用開始を目指しています。完成すれば、人類の宇宙への移住をより近づけるものとなるでしょう。

宇宙エレベーターのイメージ図   出典:大林組「季刊大林」

居住スペースなどのインフラ関連の整備も必要です。宇宙の過酷な環境に耐えうる設備を構築しなければ安全に住むことはできません。そのための素材や工法の研究も進んでおり、宇宙で住宅を含む設備を製造する手段として、3Dプリンター(3次元データをもとに立体造形することができる機器)が注目されています。資材を地球から運ぶのではなく、現地調達した材料から3Dプリンターで作成することが想定されているのです。

宇宙食として注目される「ミドリムシ」

食料問題も重要なポイントの1つです。宇宙では、宇宙線の影響で生育可能な植物などが限定的となることが想定されます。そのため、宇宙でも生産可能な食料の開発などが求められます。

そこで注目されているものの1つが「ミドリムシ」です。ミドリムシは植物性と動物性の栄養素を59種類持っており、効率的な栄養の摂取が可能です。また、宇宙線に対する耐性もあります。生育には光合成をするための光、水、二酸化炭素と窒素やリンなどの栄養素があれば可能です。酸素の供給源にもなることやバイオ燃料としても活用できることから、一石何鳥もの役割が期待されています。

人工衛星関連など宇宙ビジネスは拡大

今年はアポロ11号が月面着陸してから50年ということもあり、最近は報道等で宇宙ビジネスについて目にすることが多くなりました。宇宙ビジネスの中心である人工衛星関連の市場規模は拡大傾向にあり、デジタル社会において人工衛星が果たす役割も大きくなってきました。

人工衛星利用の一例として、GPSのような衛星測位システムがあります。例えばカーナビは、GPSによる位置情報と地図情報の組み合わせにより道案内をしています。今後到来するであろう自動運転社会においても、位置情報は必須と言えますね。

人工衛星は宇宙からの「目」にもなります。農業分野では人工衛星からの画像データで作物の生育状況を確認するなど、収穫時期の最適化に活用されています。また、気象衛星は天気予報の精度向上に貢献しています。このように、人工衛星がもたらす宇宙からの情報は、我々の生活に密接に関係しているのです。

地球の軌道上は過密状態に

地球上で人口過密が問題となるように、宇宙でも人工衛星の過密問題が発生しています。これまで世界各国で打ち上げられた人工衛星は2017年2月時点で7600機を超え、既に落下したものを除いて軌道上には約4400機以上の衛星があります。人工衛星の増加とともに、地球の軌道上の狭い範囲に複数の衛星が共存することになり、2009年には人工衛星同士が衝突する事故が起こったほどです。

秒速8kmで飛び回るゴミ問題

また、人工衛星が増加し問題になっているのが「スペースデブリ」です。スペースデブリとは、故障した人工衛星やロケットの上段等が爆発・衝突し発生した破片等のことを指します。現在、宇宙空間には1㎝以上のスペースデブリだけで75万個以上あると言われています。

小さな破片であっても、高度2000㎞以下の低軌道では秒速7~8㎞以上の速さで地球を周回しているため、同様の速さで周回する人工衛星と衝突し、破壊された事例もあります。今後の宇宙利用の拡大には、軌道上の安全確保のため、スペースデブリの除去システムが欠かせません。

無重力環境での科学実験

宇宙利用は、無重力環境などを活用した科学技術の実験場としても有用です。例えば、創薬の分野でペプチドリームはたんぱく質の結晶化実験を進めています。将来的には、宇宙空間を利用した「宇宙創薬」の薬が販売される可能性があるかもしれません。

5800万ドル宇宙の旅

また、観光ビジネスも既に始まっています。スペースX社は2023年に月旅行を計画しており、その搭乗客が「ZOZO」の創業者・前澤友作氏であることが大きな話題となりました。購入金額は公表されていないものの、地球の大気圏外への旅行は大金がかかります。

一方、大気圏内では、今年の6月にNASA(アメリカ航空宇宙局)が早ければ2020年にも国際宇宙ステーションへの民間人の旅行を認めると発表しました。滞在費は食事代も含め1泊3万5000ドルとのこと。ただし、それとは別に往復の移動費約5800万ドルが必要なのだそうです。

このように、現状では一般人には宇宙旅行になかなか手が届きそうにありません。しかし、無重力を体験するだけであれば、サブオービタル(準軌道)旅行があります。こちらは、弾道飛行による数分間の無重力を体験できるというもの。こちらは数千万円で可能ということなので、比較的手を伸ばしやすい宇宙旅行と言えるかもしれませんね。

宇宙を目指すにあたって、解決すべき問題はまだまだあります。しかし、遠い未来と思われていた人類の宇宙への進出も着実に前進し、宇宙までの「距離」は近づいていると言えるのではないでしょうか。


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