新聞やテレビでは毎日、様々なニュースが取り上げられています。マスメディアやSNSにニュースが取り上げられることで、関連する企業の株価が大きく動くこともあります。しかし多くの人にとっては、その「ニュース」を見ただけでは表面的な情報しか知ることができず、製品発表や企業間提携に至るまでの経緯などを詳しく理解することはできせん。そこで本連載ではそんなニュースの裏側を、日本証券新聞の連載「ニュースの裏事情」を通して見ていきます。
会社帰りに、「移動バー」で一杯やる時代
「 ソフトバンク 」と「 トヨタ自動車 」の共同出資会社であるモネ・テクノロジーズ(以下モネ)。国内で合計8割のシェアを持つ国内自動車メーカー8社が出資し、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)のプラットフォーマーを目指すべく、全国の自治体や民間企業との取り組みを進め始めています。
「MaaSのプラットフォーマー」と言われてもイメージしづらいかもしれませんが、スマートフォンのアプリを操作して、自動車を絡めたサービスを提供する「次世代ビジネス」を開発するとのこと。
例えばサントリーもモネに参画していて、「移動バー」を検討していると伝えられました。会社帰りにアプリで車内がバーになっているクルマを呼び、一杯やりながら帰宅する。各社がこうしたクルマ(モビリティ)を使った新サービスを構築し、世の中に提供していくのがモネの狙いです。
「
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス
」は「移動自動販売機」を検討しているとのこと。アプリを操作するとコカ・コーラの自販機がクルマに乗ってやってきます。それどころか、呼んでいなくても自販機がやってくる仕組みも構想しています。
AI(人工知能)でヒートマップ解析(編集部註:アクセス解析を視覚化したもの)し、イベント会場で大勢が集まるゾーンを予測することで、自販機をそこに送り込むのです。人のいない場所にある自販機はロスでしかありませんが、これなら稼働率アップも期待できます。”攻め”の自販機といったところでしょうか。売り切れるとステーションに戻り、自動で缶飲料を補充するとのこと。
MaaSは既存ビジネス脱却のチャンスに
現在、モネに参画している企業は200社超。なかには、物品販売やサービス提供などとは、関連が薄いように見える建築会社や不動産会社も多数参画しています。
MaaSは、スマートシティ(編集部註:IoTを用いてリソースの最適化配分などを行い経済発展も目指す新しい都市構想)とも関連してくるので、そうした新ビジネスを見越しているのものと推察することができます。
例えば「 三菱地所 」は「オンデマンド通勤シャトル」の実証実験を行っています。アプリで自動車を呼び、職場まで運んでもらう。車内はWi-Fi環境を整え、小さなデスクも設置し、コーヒーや軽食も販売するとのことです。
「三菱地所はデジタルトランスフォーメーション(DX)を唱え、『建物を作って売る』『床を貸す』というプロダクトアウト型のビジネスから脱却し、『サービスを提供する』ビジネスモデルに転換するという。いわば不動産会社から“可動産”会社にシフトするとしています。モネでの取り組みは、その第一歩です」(不動産業界アナリスト)。
MaaS時代になれば、裏通りも一等地となる可能性を秘めています。街づくりの発想が、根底から覆るのではないでしょうか。
(出典:日本証券新聞)