PERで読み解くTOTO

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部サトウ リョウタロウ

「PERで読み解く電通」を読む
「PBR1倍」水準にあたる20000円を底に、反発し始めた日経平均株価。本格的な株価上昇に備えて、まずは直近の四半期決算資料とPERをチェックするところから始めてみてはいかがでしょうか。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

case36:TOTO

今回ご紹介するのは、トイレやお風呂など住宅設備でおなじみの「 TOTO 」です。2023年3月期までの中期経営計画では、海外を中心に拡大することで売上高を7200億円(2019年3月期:5860億円)にする目標を立てています。

落ち込む中国事業

同社は海外の中でも、特に中国事業に力を入れています。ただ、2019年3月期は中国における売上高の伸びが芳しくありませんでした。その影響もあり、同社の直近の予想PER(東洋経済予想)は業種平均よりは高いものの、過去平均よりも低い状態にあります。

中国事業がこのように不調な理由は、主に2つあると考えられます。

1つ目は「現地生産の遅れ」です。
TOTOは2018年春に中価格帯の新製品「ウォシュレットプラス」を予定していました。しかし現地工場における品質の問題から販売の延期を余儀なくされ、結局生産ラインを他の工場へ移し、販売が2019年にずれ込みました。複雑な構造の衛生陶器を製造するためには、適切な温度管理や粘土の成分調整が欠かせません。計画通りに商品販売が進まなかったことが売上の足かせになった模様です。

2つ目は「景気減速による設備投資の減少」です。
中国の不動産市場は、2017年ごろから投資過熱を抑えたい政府による転売規制と、景気減速を防ぐための投資支援策が交錯するまだら模様の状況が続いています。そうした中、都市によっては不動産市況が悪化しているところもあり、住宅に必要なトイレに対する設備投資ニーズが減少しているものと考えられます。

PER上昇には中国事業回復がカギ

国内で大幅な売上拡大が見込めない中で、PERや株価の動向を握るのは、やはり海外事業にあると考えられます。特に足元で停滞している中国での売上がこれからどうなるかが肝になります。2019年4ー6月期には、現地法人の売上高が前年同期比+11%と底打ちしていることが確認されましたが、今後もこのペースが継続するかどうか要注目ではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①からTOTOを見てきました。新商品の生産遅延や、中国の不動産市場の停滞から売上が芳しくない中国事業。4ー6月期に回復の兆しが見えた中国事業ですが、この勢いが今後も続くかどうかにPERや株価の動向がかかっていると言えるのではないでしょうか。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。