社会の動きや投資環境をもとにホットな銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。9月号の新規採用銘柄は、世界の医薬品メーカーも認めるバイオベンチャー企業の「ペプチドリーム」です! ペプチドリームの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてはいかがでしょうか。
全世界の患者に治療の夢を届けたい!「ペプチドリーム」
一部のがんなど、これまで罹患すると治療が難しいと考えられていた病気に対する治療薬が市場に出てくるようになりました。患者に希望をもたらす一方で、1度の投薬で数千万円と高額なものも増えています。
そもそも、新薬の開発には10年以上の長い年月と膨大な研究開発費がかかるものです。そしてバイオ技術によってつくられる「抗体医薬品」は、製造するためのプロセスでたくさんのコストがかかります。
抗体医薬品は特定の免疫システムやたんぱく質をターゲットとして病巣を狙い撃ちでき、副作用も少ないメリットがあるのが特徴です。しかし高い効果が望めても、薬価が高すぎては使用できる患者が限定されてしまいます。
高効果&低コストのペプチド医薬品
そこで近年、創薬業界の注目の的となっているのが「ペプチド医薬品」です。
ペプチドと聞くと、なかには学生時代に生物の授業で習った「ペプチド結合」という言葉を思い出す人もいらっしゃるかもしれませんね。ペプチドとは、複数のアミノ酸が一定のルールに基づいてつながったもののこと。このペプチドをもとにつくられるのがペプチド医薬品です。抗体医薬品同様、病巣に作用する可能性が高く、副作用も起きにくいのに加え、製造コストも抑えられるなど多くのメリットを持っています。
実は、ペプチド医薬品は創薬が困難とされ、これまで多くの研究者が実用化を諦めてきました。そこに創薬業界の救世主となるべく、2006年に東京大学先端科学技術研究センター内に設立されたのが、バイオベンチャー企業の「 ペプチドリーム 」です。
独自開発した特殊ペプチドを基盤とする、創薬プラットフォームシステムPDPS(Peptide Discovery Platform System)をビジネスの核とし、ペプチド医薬品の市場への提供に向け、「創薬共同研究開発事業」「PDPSの技術ライセンス契約」「戦略的提携による自社パイプラインの拡充」の3事業を行っています。
高速スクリーニングで世界の製薬企業からひっぱりだこ
そもそも創薬のプロセスは、薬の候補となる物質の探索から始まります。創薬における製薬会社との共同研究開発のなかで、このプロセスを担うのが同社。PDPSにより、無数にあるペプチドの中から、新薬の候補となる化合物を探し出すことを役割としています。
数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングすることができる同社の技術。これにより従来2~3年かかっていたヒット候補化合物の探索プロセスが、わずか2週間ほどでできるようになりました。この高い技術が世界中で認められ、メガファーマといわれる世界の大手製薬会社を含め、累計34社とパートナー契約を提携しています。
新薬候補数も多く、業績拡大が期待される
2013年の上場以降、赤字未経験であるという同社の事業展開の上手さにも注目です。創薬の進捗に応じて報酬を受け取る同社のビジネスモデルが奏功し、開発費用が先行するバイオベンチャー企業に多い、新薬ができるまでの赤字を免れています。
2019年6月期は、売上72億円(前年同期比12%増)、営業利益35億円(同23%増)と増収増益。売上高およびすべての利益項目で過去最高益を更新しています。
今期(2019年12月期)は決算期変更による7月~12月までの6ヵ月間の変則決算であることと、同社のビジネスの特性上、売上高の大部分が1月~6月に集中することから、会社予想は業績赤字となっています。とはいえ、同社が抱える新薬候補数は19年6月末現在で101(前年同期は84)にのぼり、今後の業績拡大に期待が持てるのではないでしょうか。
研究開発技術で人々に希望をもたらす
効果が高く、副作用も起きにくく、かつ製造コストも抑えられるペプチド医薬品。その市場供給に向け、独自開発の特殊ペプチドを基盤に創薬プラットフォームシステムPDPSを展開するペプチドリームの高い技術は、創薬プロセスが効率化できると世界でも注目されています。病気で苦しむ多くの人に希望を届ける同社の活躍を応援していきたいですね。
2020年3月期第1四半期決算では、「人材派遣」セグメントにおいて、費用が先行したことや欧州の経済環境悪化などを受けて減収減益となりました。株式市場の高い期待感とかい離があると判断し、除外しました。