残高10万円…フリーランス夫婦の家計簿

敏腕ファイナンシャルプランナーが診断! あなたの家の家計事情/ 横山 光昭吉玉サキ三輪もーにんぐ

DINKSと言えば、“夫婦別財布でリッチな生活”と思いきや、貯金残高は10万円(!)の吉玉家。なぜなら、二人は「フリーランス夫婦」。年収200万円のフリーター生活からプロを目指した二人。しかし、世の中は甘くなかった! 夫も妻も月3万円しか稼げないーー。頼みの綱の貯金も残りは10万円……。しまいには「お金恐怖症」となってしまったライター・吉玉サキさんは、家計を把握していない状況で、家計再生コンサルタント・横山光昭さんの家計診断を受けることに。果たして、吉玉さんの「お金恐怖症」は、横山さんの診断によって救われるのか?!

通帳残高を見ると過呼吸に?! 家計管理に苦手意識を持つ人に読んでほしい

初めまして。ライターの吉玉サキです。
一年半前のフリーランスになりたての頃、あまりにもお金が稼げなくて、「お金恐怖症」になってしまった。正式な病名ではなく、私がそう呼んでいるだけなのだけど。

当時の私は、通帳の残高を見たり、ATMでお金を引き出したりができなくなった。恐怖でパニックになり、過呼吸の発作が起こるのだ。そんな状態だから、もちろん家計管理なんてできない。
その後、なんとか生活できるくらいには収入が増えたものの、相変わらず家計管理はできないまま。

けれど今回、フロッギーの企画でFPの横山光昭さんの家計診断を受け、「誠実に向き合えばお金は怖いものじゃないんだ」と勇気をもらった。そして、お金恐怖症を克服し、家計管理を再開することができた。

この記事は、私が家計を見直し、無駄な支出を少し抑えられるようになるまでを書いた。着地点が低くて申し訳ないけど、どうか、家計管理に苦手意識を持つ人に読んでほしい。

年収200万未満のフリーターからフリーランスへ。軍資金は87万円

まず、私がお金恐怖症になった経緯からお話したい。

私は一年半前まで北アルプスの山小屋で働いていた、年収200万未満のフリーター。ちなみに夫も同業だ。

子供のときからお金への関心が低く、自分たちの生活水準が低いことは知っていたけど、特に改善しようとはしなかった。お金を貯めて夫婦で半年ほど旅をしたり、必要なときは我慢せずに使っていたので、あまり困っていなかったのだ。夫は私以上にお金への執着がなく、低収入の自覚すら危うい。

しかし、私はライターを、夫はイラストレーターを目指して山小屋勤めを辞めた。もちろん、簡単にはうまくいかないだろうと覚悟はしていた。しばらくは貯金で生活することになるだろう。

貯金は、生活費の口座に150万円。あとは、定額貯金と一括で払い込んだ生命保険があるから、いざとなったら解約すればいい。だけどそれは最後の手段。150万円が尽きるまでには仕事を軌道に乗せたい。

その150万円から、まずは家賃を一年分前納した。私の住む団地は家賃前納制度があり、割引がきく。割引後の家賃は一年分で63万円。どうせ払うんだから、先に払っておいたほうが安心だ。というわけで、貯金は残り87万円となった。

ここから、食費、光熱費、国民年金や健康保険、医療保険や個人年金(某保険会社のものに加入している)を支払っていかなければいけない。

お金恐怖症!? 家計管理ができなくなり、貯金も残りわずか

クラウドソーシングで仕事を請けはじめたものの、私も夫も3万円しか稼げない月が続く。フリーランスになって3ヵ月目、私はストレスで体調を崩してしまった。前述の「お金恐怖症」の症状が表れたのはこの頃だ。

それまでの私はわりとマメに家計簿をつけていたし、節約も家計管理も苦ではなかった。しかし、お金恐怖症になってからは家計簿がつけられなくなった。お財布からお金を取り出すだけで発作が起こるため、食材や日用品の買い物は夫に任せた。

転機が訪れたのはフリーランスになって6ヵ月目。コンテストに入賞し、メディアでの連載が決まったのだ。それをきっかけに少しずつ仕事が増えていった。
もともと遅筆な上に体調を崩していることもあり、ひと月に書ける本数は多くない。それでも、秋にはようやく月収が10万円を超えた。

一方、夫はというと、私よりも稼いでいなかった。私経由でポツポツ仕事が来るようになったものの、自分から仕事を得ようとしない。
イラストで稼げないならバイトしてほしい。けれど、それは言わなかった。優しさからではない。言い訳を与えたくなかったのだ。

私がここで「生活費のために働け」と言えば、彼は嬉々として「本当は絵をやりたいのに生活のために働かなきゃいけない」と言いながらバイトするだろう。以前にも、そんな言い訳をする彼を見てきた。夫が夢を諦めるのはかまわないが、「嫁に言われたから」ではなく自分で決断してほしい。パートナーに言い訳されながら生きるのはストレスだ。そう思い、動き出さない夫を静観していた。

この頃にはお金恐怖症はやや治り、買い物はできるようになっていた。しかし、相変わらず口座の残高を見られない。生活費は貯金から出したり、私の収入から出したり。お金の流れが不透明なのは良くないと思いつつ、改善できずにいた。

冬になると、軍資金だった87万円が残り10万円にまで減っていることを知り、ショックを受けた。この顛末を書いたエッセイが「お金ライターコンテスト」に入選。エッセイでは「貯金が尽きた」と書いたのだけど、それは私の勘違いで、実際はまだ10万円ほど残っていた(しかし、10万円では焼け石に水だろう)。

それからは、残りの10万円には手をつけず、私と夫の収入から生活費を出すようにした。恩着せがましいことは言いたくないが、ほとんど私が支払っている。
年が明け、連載の書籍化が決まった。2019年分の家賃は、定額貯金を解約し、私の原稿料をプラスして支払った。

働かない夫についにブチ切れ。そのとき……

今年の5月、ついに夫にキレた。
きっかけはスカートの色落ち。夫が漂白剤のついたカーテンを私のスカートと一緒に洗濯し、色落ちさせてしまったのだ。そのスカートは5000円の品が値下がりして3500円で購入したもの。それだって、今の我が家の家計からすれば、すぐに買い直せるものではない。
お恥ずかしい話だけど、私は泣いた。

「今すぐ働いて3500円稼いで弁償して。イラストでもいいし、違う仕事でもいい。なんだっていいから、今すぐ」

夫のくっきり二重の瞳がみるみる一重になっていく。精神的に動揺したとき、そうなるのだ。

「ずっと言わなかったけどさ、この一年半、何してたの? なんで努力しないの? あなたはどう生きたいの?」

この一年半ずっと溜め込んでいた言葉がするすると口をついて出てくる。夫は一重のまま、「ちょっと頭冷やしてくる」と言い残して出て行った。

フロッギー編集部からメールが来たのは、ちょうどそのときだった。


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かくして私は、家計を把握していないのに家計診断を受けることになった。