第2回「コピーはパクリではなく、リスペクトだ! BAKE成功の裏側」を読む
中国トレンドマーケターのこうみくさんが中国のリアルをお届けする本連載。日本企業にも大きな影響を与える中国経済の動向は、投資をする際にも参考になるはずです。第3回は、中国インバウンド最新情報についてお伝えしていきます。
爆買いの終焉。それでも訪日客は減らない
訪日外客数は、2019年1月〜6月の半年間で、1663万3600人、また2019年6月の訪日外客人の数は前年同月比+6.5%と増加の一途をたどっています。2019年6月の訪日外客数288万人のうち、75.1%を占めるのが韓国・中国・台湾・香港といった東アジア。中でももっとも数が多いのが、全体の30%を占める中国で、2019年6月の1ヵ月間で88万700人が日本を訪れています。
近年、街中の家電量販店やデパートで中国人による「爆買い」を目にする機会が減ったと感じている方も多いと思います。それは、2018年から2019年にかけて、爆買いによる外貨流出を懸念した中国政府が対策を強化してきたためです。
具体的には、海外での現金引き出し限度額を年間10万元(約160万円)に制限し、さらに代理購入規制(事実上の密輸規制)による税関検査の厳格化を行いました。個人消費あるいは転売ヤーによる買い付けが制限されたことで、事実上、「モノの爆買」に終焉がもたらされたのです。
観光地としての日本。モノではなく体験を消費する中国人
中国政府の規制によってモノの消費が制限される一方で、2019年1月、日本政府によって中国人に対する訪日観光ビザの発給要件が大幅に緩和されました。
たとえ爆買いができなくても、中国人にとって日本は「近い! 安い! 安心!」の三拍子が揃う人気の観光地であることは変わりません。これら日本の魅力に惹かれて、多くの中国人が日本を訪れているのです。
では、都心の家電量販店や百貨店に押し寄せなくなった中国人は、日本のどこにいるのでしょうか。その一つが地方のスキー場です。雪質も良く、温泉にも入れるという理由で、近年中国で大人気! 中国屈指の口コミアプリ「RED(小紅書)」では、「日本 スキー」と検索すると、4000件を超える口コミが表示されます。それだけ日本のスキー場に中国人の関心が集まっているのです。
モノの消費から体験消費へ。中国人の需要により売上を伸ばし、市場を拡大していくチャンスは、東京都心だけではなく、地方の観光資源にもあるのです!
北海道を中心に進む、中国人による「土地の爆買い」
中国人に需要があるのは観光先としてだけではありません。日本を投資先と捉えている中国人もいます。世界中の多くの国は、外国人が土地を所有することを認めていません。中国政府もそうですが、日本政府は違います。日本は、外国人が土地を所有することができるのです。
こうした背景から、日本の広大な土地に目をつけた中国の投資会社によって「土地の爆買い」が起きています。特に北海道のゴルフ場や農地、森林などが買われているとのこと。たとえば、経営破綻したゴルフ場を中国の投資会社が購入し、中国人オーナーを立てて、中国人のためのゴルフ場を運営するなど、日本に「中国人による、中国人のため」の施設がつくられています。
こういった開発に関して、アレルギー反応のように異を唱える日本人は少なくありません。一方で、冷静に考えると、開発地の地元、および日本にメリットがあるとも考えられます。
例えば、少子高齢化、人口の大都市集中と地方の過疎化が課題となる日本では、活かされていない土地や建物があります。こうした場所に対する中国からの資金流入は、現地での雇用創出や行政の税収アップなどにもつながる側面があるのです。
拡大する中国人投資家による日本の不動産投資
実は都心においても、中国人投資家による不動産投資が広まりつつあります。
その理由は、まず、中国に比べて日本の不動産は、利回りが高いこと。中国における利回りは2〜3%であるのに対し、日本は都心の賃貸ワンルームマンションなど利回りが10%程度ある物件もあります。
次に、所有権を持てること。さらに、安定していること。たとえば、株式市場はアメリカとの貿易戦争をはじめとするマクロ的な政治状況によって、大きく浮き沈みします。アメリカの不動産市場も、元来ボラティリティが大きい上に、外国人投資家に対する規制に締め付けが強まる場合があります。しかし、日本の不動産市場は、これらの世界的なマクロ要因に左右されにくく、ほぼ日本経済の動きに依存する傾向があります。そういった安定さは投資先として大きな魅力となるのです。
日本の不動産アプリも人気
中国人による不動産投資が活況となっている事例として、2017年に元楽天の執行役員であった何書勉(ほう・しゅうめん)氏が創業した、中国人向けの日本不動産アプリ「神居秒算」をご紹介します。
中国における不動産の成約率は約0.3%、1000件の物件情報に対して成約件数がわずか3件ほどで、「千三(せんみつ)」と言われています。そんな中、神居秒算の成約率はなんと約10%で、圧倒的な人気を誇っています。中国とアメリカの貿易戦争が加速する今、安定資産を求める中国人投資家は増加の一途をたどっていると何CEOが語るように、その勢いは止まりません。
神居秒算が急成長する背景には、中国人の日本における不動産の買い方があります。日本人は、不動産を購入する場合、いくつかの物件を見て、数ヵ月〜1年ほどの時間をかけることが多いでしょう。一方、中国人は、投資家として「この予算内で、ぜったいに買うぞ」という確固たる意思を持って、物件を買いに日本へ訪れます。
神居秒算のアプリは、街を歩いて気になるマンションにスマホのカメラを向けると、AR機能によって、そのマンションの情報が表示されるようになっています。物件情報を確認し、赤いボタンを押せば、オペレーターへと電話がつながり、その場で購入することもできるのです。まさに、不動産のウインドーショッピング!
中国人投資家のなかには、日本を訪問することもないまま、中国国内でアプリを通して通販のように不動産を買う人も少なくありません。
中国人を魅了する日本マーケット
このように、中国政府の規制によって「モノの爆買い」は減少傾向にありますが、観光地として、あるいは投資先としての中国から日本へのインバウンド需要は勢いがあります。そうした視点で、日本の投資先として、地方の観光資源、土地、都心の不動産に注目するのも良いでしょう。
次回は、中国テクノロジー情報をお伝えします。
・モノの爆買いから、体験のコト消費へ。都心だけではなく、地方の観光資源にもチャンスあり!
・北海道を中心に進む「土地の爆買い」。地方の広大な土地も中国人には売れる!?
・急成長の中国発不動産投資アプリが促し、都心における不動産投資が加熱中!