「PERで読み解く村田製作所」を読む
トランプ大統領の発言により、またもや大きく左右されている株式市場。中には、必要以上に売られすぎている銘柄も散見されます。こんな時は、あのウォーレン・バフェットも愛用するPERを、業績と合わせて確認することで、投資のヒントが見つかるはずです。
PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
業界トップであるがゆえのジレンマ
特定の業界・マーケットにおいて大きなシェアを持っている会社であれば、価格決定力も高く、PERなども高くなる傾向があります。しかし、マーケットのトレンドそのものが変化し、既存の市場が縮小する場合は、業績も連動して落ち込んでしまうため、投資家の評価も低くなりがちです。そこで今回はトップシェアを握りつつも、既存マーケットの縮小に直面しているケースをご紹介します。
case35:電通
今回ご紹介するのは、国内最大手の広告代理店である「 電通 」です。オリンピックやFIFAワールドカップなどに強く、またテレビ分野における影響力は圧倒的です。ただ、ここ数年は国内マスメディア市場が低調で、収益全体の足を引っ張る構図が続いています。
テレビ・新聞広告縮小でPERも過去平均下回る
2019年8月9日に発表された2019年12月期の第2四半期決算では、収益4970億円(前年同期比+3.2%)、営業利益180億円(同-55.4%)と、増収減益。ネットなどのデジタル広告が好調であった一方で、新聞やテレビなど既存メディア向けが振るいませんでした。
こうした既存メディア向け広告の縮小と、デジタル広告の拡大は今に始まったことではなく、ここ数年の広告業界のトレンドとなっています。テレビ業界において圧倒的なシェアを握る同社だからこそ、こうした業界全体の流れに業績が左右されやすく、株価やPERも低迷しやすい状況が続いているものと考えられます。
今後の注目点①デジタル事業の成長
こうした状況に対して、同社もデジタル分野を強化しています。2019年1ー6月期の売上総利益に占めるデジタル分野の構成比は、48.9%にまで上昇しており、期を追うごとにその比率は高まりつつあります。こうした成長分野にいかに投資資源を振り向けていくかが、今後の注目点の1つとなりそうです。
今後の注目点②海外事業の成長
また、今後の業績や株価を考える上では、海外事業の成長にも注目です。足元では海外事業の拡大に伴う金融費用が先行しがちではありますが、着実に売上総利益に占める海外比率は高まり、すでに約6割を占めるまでになりました。国内マーケットは伸びる余地が少ないため、海外へ収益機会を求める方針を示している同社。今後の海外事業の収益拡大ペース等によっては、株価反転のキーポイントになる可能性もあります。電通の海外戦略にこれから注目ですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①から電通を見てきました。テレビなど広告市場で圧倒的なシェアをもつ同社ですが、新聞など既存メディア広告市場の縮小で、業績は足踏み状態。株価やPERも低下傾向にあります。しかし、デジタル事業の強化や、海外事業の拡大など対策を着々と進めており、こうした強化策が既存メディア広告事業の縮小をどこまでカバーできるかに今後の注目が集まりそうです。