学資保険は非効率? どうなる「30年後」の家計

敏腕ファイナンシャルプランナーが診断! あなたの家の家計事情/ 砂東 真実横山 光昭三輪もーにんぐ

メスを入れろ! ダブルインカムゆるふわ家計を読む
ダブルインカムの砂東家は、ご夫婦のお財布が別。これまでゆるふわな家計管理でやってきました。ところが、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに指摘を受け、ブラックボックスだったお互いの支出をまず明らかすることに。さらに支出を削減して、より多くのお金を貯蓄に回すことを決めました。次なる横山さんのアドバイスは、「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の利用について。戸惑う砂東さんに横山さんが示したのは、30年間の投資シュミレーションでした!

使わないお金、放っておくのはナンセンス!

横山さん

さて、こちらのまったく手を付けていない貯蓄ですが……。

砂東

あ、私、一部を保険に回したいんです! 息子のために学資保険に入りたくて。

そもそもこうして家計の見直しをしているのも、半分以上は息子のため!
いつか医者になりたいとかフィギュアスケーターになりたいとか言い出すかもしれない彼のためにも、資金を確保しておきたい!

しかし、横山さんはキッパリと言いました。

横山さん

非効率なので、おすすめしません。

えええええーー! そうなの!?
私自身、幼少期から積み立ててもらっていた学資保険を使い、高校、大学と進学したのですが……。

横山さん

ご両親の世代なら、保険や預貯金で十分だったんですよ。昔は銀行の利回りが良く、預けるだけで年に7%くらい利息があったんですよね。けれど現在、普通預金の利回りは0.001%程度。まったく増えないといっても過言ではありません。これからの資産形成には、貯蓄という足し算だけでなく、投資というかけ算が必要不可欠なんです。

砂東

でも、たとえば私が100万円持っていたとして、それを投資に回したらお金が減る可能性がありますよね? 保険や預金なら、100万円から減ることはないじゃないですか。

横山さん

砂東さん、30年前の100万円と、現在の100万円。価値は同じですか?

はっ……!

砂東

ちがいます……!

平成元年に導入された消費税ですが、いよいよ10%になろうとしているところ。食料品や日用品をはじめとした物価も上がっています。
かつて100万円で売られていたものも、今はもう100万円では買えないでしょう。

横山さん

数字的には減りません。けれど、価値は下がる可能性があります。預けているだけで損してしまうんです。

砂東

しょ、衝撃的……。

横山さん

1億円預金していながら、焦っている方もいますよ。資産が目減りしてしまう、これからどうしよう、って。

砂東

いちおくもってるのに!?

「投資は怖い」? 正しい知識で確実に増やせ!

ここまで聞いても、やっぱり私には不安があり……。

砂東

投資って、なんだか怖い印象があるんです。一晩で全財産を失った!……みたいな。

横山さん

それはギャンブル性が高い投資のことですね。FXや仮想通貨などがそれにあたります。

仮想通貨が大暴落して無一文……。
そんなニュースが毎日のように流れていた時期もありました。

横山さん

砂東さんには、ローリスク・ローリターンの投資信託をおすすめします。しっかり勉強して確実に伸びていく市場を選べば、大きく損をすることはありません。一つの商品に様々な会社の株が入っているので、極端な話、一社の株価が大暴落しても、ほかの会社によってリカバリーができます。

砂東

無一文になる、なんてことはないんですね。

横山さん

ただし、きちんと勉強してから始めることが大前提ですよ! まずは、20年の間、非課税で年間40万円の投資信託を購入できる『つみたてNISA』や、自分で掛け金や運用商品を決めて積み立てる私的年金制度『iDeCo(個人型確定拠出年金)』を利用して、少額から始めてみてはどうでしょうか。

砂東

CMで見たことあります!

横山さん

たとえば今後、教育資金だけでなく老後資金を貯めるとしても、今から始めれば、30年以上積み立てを行うことができます。ローリスク・ローリターンの投資は、長く運用することで資産を増やすことができるんですよ。最初はあまり利益が出ないのでおもしろくないかもしれませんが、続ければ確実に資産を作れます。

いざ、投資シミュレーション! 30年後にどれだけ増える?

横山さん

具体的な数字で見てみましょう。たとえば、月々10万円を、毎年3%の利回りで、30年積み立てるとします。

砂東

普通に預金していくだけなら、3600万円になりますね。

毎月積立額:10万円×期間:30年
=投資元本:3600万円
最終積立金額:5801万円

砂東

2200万円増えた!

横山さん

砂東家には不動産収入がありますから、家計を圧縮すれば、もっと投資に回していくことができると思います。たとえば……。

毎月積立額:30万円×期間:30年
=投資元本:1億800万円
最終積立金額:1億7000万円

砂東

6000万円以上増えるじゃないですか!!

以前話題になっていた、「年金以外に必要な老後資金」ってやつも、らくらくクリアしてる!

横山さん

これは30年という時間を味方につけているからこその収益。たとえば、毎月90万円ずつ、10年間積み立てを行っても、元本は同じ1億800万円ですが、最終積立金額は1億3000万円にとどまります。

砂東

なるほど、時間を味方にして資産を大きく増やしたいなら、早めに投資を始める必要があるんですね。

横山さん

ただし、手元にある程度使えるお金を残しておくことは絶対です。急な病気になったり、お子さんが留学に行きたいと言い出す可能性もあります。

横山さん

投資は、収入から日常的に使うお金(=生活費)と、緊急用に手元に持っておくお金(=貯蓄)を除いた、使わないお金(=余剰)を用いて行うようにしてください。

うう、ものすごく勉強になりました……!

夫へ報告……今後の我が家、どうします?
2時間という短い、けれど濃密な面談を経て、私の貯蓄や投資に対する価値観はガラリと変化していました。
今手元にあるお金を、何もせずにじりじり減らしていくか、きちんと勉強して運用し、少しずつでも増やしていくか……。
とるべき道は一つしかありません!

その日の夜。さっそく夫に診断内容を報告しました。
我が家の支出が一般家庭より大きい、という診断には「マジで!?」と驚愕していました。しかし今後の家計管理、圧縮すべき項目(お小遣い削減については、苦渋の表情で小さくうなずく)、投資の勉強が必要なことなどを話していくうちに、真剣な顔で「なるほど……」と首を何度も縦に振ってくれました。

砂東

とりあえず支出を減らしていこう。

夫:
俺も頑張って家計簿つけるわ。

まずはすぐに取り組めるところから。そして年内には、二人で投資についての相談へ行こう、というところまで話はまとまっていきました。
投資までゆるふわになったら大変……!

砂東

じゃあ次に食費と日用品費の予算を決めたいんだけど……。

……そばですやすやと寝息を立てている息子の未来のためにも、ゆるふわ家計からの脱却を目指す――!
そう決意した夫婦二人による家計会議は、夜更けまで続いていったのでした。