PERで読み解く村田製作所

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部トツカケイスケ

「PERで読み解くDeNA」を読む
世界的に金融緩和にシフトしつつある中で、最高値圏にある米国株。一方、日経平均株価は円高や輸出関連企業の業績先行き懸念から、まだ年初来高値には届いていません。日本の株式市場も早く「梅雨明け」してほしいものです。そんな今こそ日本株の梅雨明けに備えて、PERや個別業績をチェックしておきましょう!

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

マーケットが注目する「受注残」

投資家が注目する企業業績といえば、売上高や営業利益などがまず頭に浮かびますが、それにつながるさまざまな販売指標も投資の大きな手がかりとなります。たとえば、「受注残」。

これは、顧客から注文を受けたものの、まだ商品の引き渡しなどが済んでいないものを指します。製造や販売スピードよりも注文を受ける量が多ければ、受注残は拡大しますし、それは目先の業績が安泰であることを表します。つまり、受注残は目先の業績動向や、その会社の製品・サービスの人気度合を示しているのです。そこで今回は、そんな受注残の動向で株価やPERが左右されているケースをご紹介します。

case34:村田製作所

今回ご紹介するのは、パソコンやスマートフォンに欠かせない電子部品を作る「 村田製作所 」です。特に電気を蓄えたり放出したりするコンデンサの開発に強みを持っており、積層セラミックコンデンサ(MLCC)では世界トップシェアを握っています。

2019年4ー6月期決算は好調

2019年7月31日に発表された4ー6月期の決算では、売上高が3575億円(前年同期比+3.5%)、営業利益が625億円(同+29.9%)と良好な結果となりました。自動運転などカーエレクトロニクス向けや、高機能スマホ向けの電子部品が好調だったことなどが追い風となった模様です。

ただ、昨年末以降は株価の上値も重く、予想PERも16.9倍と過去平均(2010年以降の平均:23.2倍)から比べても比較的低い状況が続いています。

受注残はそろそろ底打ち!?

株価やPERの上値が重い理由の1つとして、受注残の減少が挙げられます。
昨年から続く米中貿易摩擦により、中国を中心としたスマートフォンの製造が減少したことで、その部品を作る同社に対する注文が減少しました。その影響で、すでに注文を受けている残高を表す「受注残」が少しずつ減っているのです。ただ、足元では徐々に受注が回復しつつあるという報道もあり、今後はいつ受注残が底打ちするかに注目が集まりそうです。

拡大する自動車部品マーケット

今後の村田製作所の業績動向を見極める上では、カーエレクトロニクスの動向がポイントの1つになります。

同社の主力製品である積層セラミックコンデンサ。高級スマホ1台に約1000個搭載されていると言われていますが、自動運転車には、なんと1台当たり3000〜8000個も搭載されるとのこと。足元ではスマホの製造・販売動向が大きく同社の業績を左右していますが、これからは自動運転車の普及度合いなどが大きく寄与してくるかもしれません。

JEITA(電子情報技術産業協会)によると、自動運転を支える電子部品の世界生産額は、2017年の3.5兆円から2030年には13.2兆円にまで拡大する見込み。これからも同社の電子部品に対するニーズは高まると考えられ、今後の販売動向に注目です。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①から村田製作所を見てきました。直近の決算は好調なものの、依然として米中貿易摩擦や受注残の減少などからPERはやや低下している同社。ただ、スマホや次世代自動車には同社が手掛ける電子部品が多く搭載される見通しで、これからも追い風が吹く状況には変わりなさそうです。株価やPERを見るうえでは、四半期ごとに公表される受注残の動向に加え、次世代自動車などの普及度合いにも注目したいですね。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。