PERで読み解くDeNA

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部トツカケイスケ

東証1部の売買代金が節目である2兆円を下回るなど盛り上がりに欠ける日本株式市場。しかし、個人投資家にとっては、マーケット全体の売買代金のボリューム減で被る影響はさほどありません。マーケットの雰囲気に流されずに、企業業績の先行きや株価のバリュエーションを1つ1つチェックしていきましょう。

PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

ヒット作かどうかを見極める局面

収益の柱がヒット作への依存度が高い事業であれば、その販売状況によって株価やPERが大きく左右されるケースがあります。たとえ販売前に人気がなくても、ふたを開けてみて売り上げが好調ならば、その事実を確認してからその会社への投資を検討しても遅くはありません。また、逆に事前予想の期待が高い場合は、そのハードルを実販売が上回れないこともあります。今回は、そんな「投資家が固唾を呑んで販売状況を見守っている」局面にあると思われるケースをご紹介します。

case33:DeNA

今回ご紹介するのは、モバイル向けゲームの制作や横浜DeNAベイスターズのオーナーとしておなじみの「 ディー・エヌ・エー 」です。売上高の7割以上をゲーム事業が占めていることから、既存ゲームのユーザー数や、新作ゲームの発表などによって業績、PER、株価が連動しやすい傾向があります。

ユーザ消費額の減少はネガティブ

そんなDeNA社の2019年3月期は、ゲーム事業の不振が続き、減収減益となりました。ゲーム事業の収益の目安となるユーザの消費額推移を見ても、減少傾向が続いており、抜本的な対策が必要となっている様子がうかがえます。

新ポケモンゲームに期待

ただ、こうした状況に対して、同社は新しい施策を打ち出しています。2019年3月期決算発表と同時に、「株式会社ポケモンと協業し、ポケモンを活用した新アプリゲームを今期配信予定」であることを公表しました。世界的にも人気のコンテンツであるポケモンを活用することにより、ゲーム事業の巻き返しを図る考えのようです。

同時に発表された500億円の自社株買いも追い風となり、発表の翌営業日(2019年5月13日)に株価は大幅上昇しました。主力であるゲーム事業の底上げが今期できるかどうかに、マーケットの注目が集まりそうです。

足腰がしっかりしてきたスポーツ事業

一方で、スポーツ事業は好調を維持しています。同社が手掛けるのは主に横浜DeNAベイスターズの運営。本格的に運営を手掛けた2012年以降、観客動員数は伸びています。現在、球団創設70年目をはしる横浜DeNAベイスターズですが、2018年シーズンの観客動員数は球団史上最高の200万人超を記録しました。主催72試合のうち52試合でチケットが完売し、通年の動員率も90%超と、高水準を維持しています。

スポーツ事業での観客動員増に向けて、新聞に掲載されるための話題作りに着手したり、またターゲットを20〜30代のサラリーマンに絞った戦略を練るなどなどさまざまなデータ分析を駆使した模様。セグメント別営業利益は15億円(2018年度)と決して大きくはないですが、同社の安定した業績貢献の1つとしてこれからも期待できるのではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①②からDeNAを見てきました。新作ゲームや自社株買いなどの発表によっていったん持ち直しているかに見える同社の株価。しかし、2018年度までゲーム消費額が減少傾向にあり、本格的な業績回復の兆しが見えるまでは投資家も安心できない状況が続きそうです。安定した業績を残しているスポーツ事業にも期待しつつ、柱であるゲーム事業でどこまでユーザの心をキャッチできるかに今後注目したいですね。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。