米中通商問題は一旦、落ち着きの気配を見せています。そんな中、中国での人件費上昇などを背景に、中長期的には世界の生産拠点は中国からアジア新興国へシフトする可能性があります。そこで今回は、中国からの生産拠点シフトで恩恵を受けやすいベトナム関連銘柄にフォーカスします。
米中問題で漁夫の利を得るベトナム
米中問題で中国から米国への輸出が急減速している一方で、その“漁夫の利”を得ているのがベトナムです。ベトナム、そして中国からの米国へ向けた輸出動向をみると、2018年末以降、中国が前年を下回る一方で、ベトナムが大きく輸出額を伸ばしています。
6月29日の米中首脳会談では、中断していた通商協議の再開で合意し、制裁関税第4弾(3000億ドル分)の発動は先送りとなりました。しかし、今回の交渉期限は明確でなく、いつ問題が再燃するか不透明感が残ります。つまり中長期的には世界の生産拠点が中国からベトナムなどのアジア新興国にシフトする可能性が高まりつつあるといえます。
安定的な経済成長率を誇る
ベトナムの人口は1億人弱(2017年時点)。18年の1人あたり名目GDPは約2500ドルで中国の07 年ごろに相当します(IMF<国際通貨基金>データ)。2000年以降の実質GDP成長率の平均は約6.5%です。また6月28日発表の19年4ー6月期でも、前年同期比+6.7%となり、世界経済が米中通商摩擦などを背景に減速懸念が高まる中、ベトナム経済は高い成長率を維持しています。08〜09年のリーマン・ショックや12〜13年の欧州危機の際も、国内景気の減速が限定的だったことを踏まえると、今後もベトナムは力強い成長が続くのではないでしょうか。
ベトナムで活躍する日本企業
こうした状況の元、ベトナムに進出し活躍している日本企業があります。
「
共英製鋼
」はベトナム内需型。ベトナム経済の成長とともに鉄鋼需要が増加することで、恩恵を受けることが予想されます。
「 日本トムソン 」「 メイコー 」「 マニー 」などは外需型。米中通商問題が再燃し、中国製品の対米輸出が制限されれば、相対的な優位性を示す可能性があります。
「 JUKI 」は海外のアパレルメーカーが生産拠点を中国からベトナムなどに移転させれば、工業用ミシンの需要が高まるかもしれません。米中問題による追い風に加え、中長期視点からもベトナム経済の成長に注目しておきたいですね。