「PERで読み解く味の素」を読む
米中貿易摩擦の影響から、なかなか上がりづらい状況が続いていた株式市場。週末のG20サミットで米中首脳会談が予定されていると報道されたことから、少しずつ解決の糸口が見え、株価の下支え要因になりそうですね。こんなときこそ、過去のPERやROEシリーズを読み返して、これから期待できそうな銘柄をチェックしてみましょう。
PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
PERがほとんど変化しないケース
会社の成長性や、投資家の期待を表すと言われるPER。景気や、その会社の事業環境によって大きく上下することがありますが、一方で持続的な成長が長く続くと思われている企業ではPERの水準がほとんど変わらない場合もあります。今回はそんな安定的な成長を投資家から期待されているケースについて取り上げます。
case31:ユニ・チャーム
今回ご紹介するのは、国内紙おむつや生理用品、ペットケア用品などでトップシェアを握る「 ユニ・チャーム 」です。2019年5月13日に発表された、2019年12月期第1四半期決算は、売上高1686億円、コア営業利益201億円と、前年同期と比べて増収減益となりました。国内は原材料費や物流費の高騰によりコストが収益を圧迫した一方で、海外はアジア向けなどが収益をけん引しました。
予想PERは過去平均水準に留まる
同社の予想PER(東洋経済予想)は31.6倍と業種平均より高いものの、過去平均(2010年以降の平均:31.1倍)とほぼ同水準であることがわかります。持続的な成長期待があることで高い水準を保ちながらも、2016年以降は大きく割安・割高な水準にはなりにくいことがうかがえます。
株価=PER×1株あたり利益
一方、株価は右肩上がりの推移が続いています。これは、PERを株価ベースで分解するとよくわかります。株価はPERと1株あたり利益を掛け合わせることで計算できます。つまり、投資家の心理や期待を表すPERに変化がなくても、その企業が着実に利益を増やしていけば、株価は上昇トレンドになります。
同社の場合は、業績は好調なものの、すでに成熟化しつつある企業であることから、PERが50倍、100倍というような水準になることは稀です。一方で、1株あたり利益は着々と積みあがっていく分、株価も上昇している事例と言えます。
では、同社はなぜ安定して利益を稼げているのでしょうか。
収益はアジアがけん引するステージに
日本国内の人口が減少傾向にある中、同社はアジアなど人口が増加し続けている国での事業に力を入れています。利益率はまだ国内事業のほうが高い状況ですが、弊社アナリストによれば、今後はアジアやその他地域が収益を押し上げていくことが見込まれています。これが同社の収益拡大の源泉です。
インドでの事業に注目!
アジアの中でも、特に注目したいのはインド市場です。国連の推計によると、0-4歳の人口は、中国が一人っ子政策などをやっていたことなどから1990年以降大きく減少している一方で、インドはほぼ横ばい状況であることがうかがえます。赤ちゃんの人口が多ければ、その分紙おむつなどの売上も拡大する余地があると言え、同社にとってはインドが魅力的な市場となっています。
2019年3月期決算発表資料でも、同社はインドでの売上高成長率(現地通貨ベース)を20-25%と想定しており、これからの業績のけん引役として期待を寄せていることをうかがい知ることができます。現時点でインドでのベビーケア事業の市場シェアは2位ですが、シェアトップを目指すこれからの動向に注目したいですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①③からユニ・チャームを見てきました。PERはほぼ横ばいである一方で、アジアでの収益拡大が着実に利益成長につながり、株価を押し上げている同社。足元では原材料費などコスト増が収益を圧迫していますが、長い目で見れば、増収増益トレンドが続くかもしれませんね。高成長が期待されるインドでの事業展開など同社に関するニュースにぜひ注目してみましょう!