ROEで読み解くセコム

水曜日はROEをトコトン!/ 日興フロッギー編集部AN

「ROEで読み解く東レ」を読む
今月末に開かれるG20サミットにて、米中首脳会談が行われるのではないかと予想されています。その行方次第で大きく景気が左右されるだけに、株式市場では膠着感が強まりやすい展開が続いています。株価が動きづらいときこそ、ROEやPERなど様々な角度からじっくりと投資の是非を考えるようにしたいですね。

ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。

ROE(%)=1株あたり利益(EPS)÷1株あたり自己資本×100
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)

case12:セコム

今回は、ホームセキュリティのパイオニアである「 セコム 」を取り上げます。同社は1962年に日本初の警備保障会社として創業。オンライン・セキュリティシステムの普及が進む1973年に、新ブランド「セコム(SECOM)」を制定し、国内では警備保障会社としてトップシェアの地位を確立しました。

初の売上高1兆円突破も、先行投資で営業減益に

セコムの2019年3月期決算は、売上高は1兆138億円と初の1兆円台にのり、過去最高を記録しました。ただ、営業利益は1302億円と減益。この理由としては、競争力のある人材を確保するなど「人への投資」に60億円、業務品質を向上・効率化させるためなど「システム投資」に40億円拠出したとのこと。

ただ、いずれも2018年5月に公表した「セコムグループ ロードマップ2022」にて示されていた「攻めの投資」であり、2020年以降の業績拡大のための先行投資であると会社側は説明しています。具体的には、テレワークの導入やテレビ会議の活用で生産性を向上させたり、警備基幹システムのキャパシティを拡張したりするなど、積極的な投資をおこなっています。

収益拡大のタネは蒔かれている

足元では、投資の一巡が本当に2019年度内に終わるのか、その後の利益が本当に拡大するのかといった不透明感から、株価はやや方向感に欠ける展開が続いています。ただ、顔認証検知システムの開発でさらなる警備の省人化を進めたり、セキュリティニーズが高まるトルコへの進出を実施するなど、着実に収益拡大のタネを蒔きつつあります。

2020年3月期の予想ROE(QUICKコンセンサス予想)は8.4%と昨年度より低下することが想定されていますが、攻めの投資や、こうした収益拡大のタネが成長するにつれ、株価は再び上昇基調に戻るのではないでしょうか。今後の着実な事業拡大に期待したいですね。

<ROEの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①からセコムを見てきました。足元では過去最高の売上高を記録するも、投資先行で不透明感が漂っている同社。ただ、中身を見ると、計画に沿った成長投資を実施しており、来年度以降の業績に期待が高まります。投資の成果が見えてくれば、更なる株価上昇も視野に入ってくるかもしれませんね。

本記事は、ROEを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。