前回は、過熱するメンズのストリートファッションについて、スケートブランド「シュプリーム」などを例に挙げながらご紹介しました。今回は、億り人を生み出した「スニーカー投資」と市場拡大を後押しした転売市場について解説していきたいと思います。
事件化するストリートファッション【前編】を読む
億り人まで登場する「スニーカー投資」
ストリートファッションの三種の神器と言えば、現在なら「スニーカー・パーカー・Tシャツ」でしょうか。特にメンズストリートファッションで欠かせないのがスニーカー。スポーツ選手だけでなく、アーティストがプロデュースするモデルも登場したため、ここ数年は世界的に空前のスニーカーブームです。アメリカでは7兆円規模、日本では1600億円規模にまでマーケットは成長を続けています。
このスニーカーは「投資対象」とまで言われています。なんとアメリカでは、このスニーカー投資で億万長者まで出現しているそうです。新品の状態なら確実に購入時より価格は上がりますし、中古品でさえ価格が上がる傾向があり、値下がり知らずのモデルもあるほどです。
急成長のアメリカの転売サイト「StockX」は、別名「スニーカーの株式市場」とも言われています。スニーカーなどを人気度合いによって株価のように価格を変動させて、売買しているからです。その流通総額は2018年だけで1000億円を超えるほどに。 投資するなら「1株より1足」という時代もくるかもしれませんね。
ストリート・オンリー! 特化型転売サイト
日本国内で転売に使用されているサイトと言えば、古くはYAHOO!オークション、最近ではメルカリやラクマが該当すると思います。ただこの 3つのサイトは、ありとあらゆるジャンルを販売しているため、雑多なフリーマーケット的なサイトだと言えます。
一方、アメリカではストリートファッションに特化したサイトが活気を見せています。前出のStockXやGOAT、Grailedといったサイトがあります。各サイトにはそれぞれ特徴があるので少しご紹介します。
StockXは株価のような価格変動だけではなく、一度販売者の商品をすべてStockX本部に送ってもらい真贋鑑定後、鑑定書をつけて購入者に配送するという仕組みで、安心して本物だけを購入できるように運営されています。
GOATでは販売者が画像をサイトにアップする際の撮影写真枚数、撮影角度を指定していて、購入者が一番気になるところがちゃんと画像でアップされる仕組みを導入しています。サイト指定のアングルのみでの撮影なので、ECサイトのように商品が見やすい設計になっているのが特徴です。
Grailedはメンズストリートファッション版メルカリ的なUI設計ですが、単なる転売サイトではなく、トレンドやブランドを解説するコンテンツを制作・配信することでサイトへの流入促進をはかっています。
転売サイトに投資する投資家たち
スニーカー過熱を投資家たちが見逃しておくはずがありません。たとえばGOATは2017年に約25億円の資金調達をして、サイトを運営しています。2016年にデトロイトで誕生したStockXは、旧グーグル・ベンチャーズやバッテリー・ベンチャーズなど、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルから約49億2800万円の資金提供を受け運営しています。またStockXの成長を見込み、エミネムやマーク・ウォールバーグといったセレブリティたちからも出資を受けました。
億り人まで誕生させたスニーカー投資。ファッションとして魅力的なだけでなく、転売サイトの登場がさらにスニーカーマーケットを成長させているようです。
次回は、なぜメンズファッションのトレンドが、ストリートファッションになったのか? を解説したいと思います。
・スニーカー転売だけで億り人が誕生するほどの規模まで、転売市場は活性化
・アメリカでは、ストリートのアイテムやカテゴリーを絞った特化型の転売サイト数が増加している
・転売市場の成長を見越したベンチャー企業やセレブリティらが出資をし、さらなる成長が見込まれている