少子高齢化の進展や新興国の経済発展など、今の投資環境をもとに旬な銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。6月号の新規採用銘柄は、心臓血管向けの医療機器でトップシェアを誇る「テルモ」です! テルモの投資ポイントをチェックして、これからの投資判断の参考にしてみてはいかがでしょうか。
家庭から世界へ活躍の場を広げる「テルモ」
社会が発展するから医療が進化するのか、その逆かーーニワトリと卵の話ではないですが、社会の変化と共に日々進化している医療の世界。その一端を担っているのが大手医療機器メーカーの「 テルモ 」です。
テルモは、1921年第一次世界大戦の影響によって輸入が途絶えていた体温計の国産化を目指し、「近代医学の父」といわれる北里柴三郎博士らが発起人となり設立されました。いまや、体温計の売上はわずかとなりましたが、病院向けの最先端医療機器を中心に、世界中の医療現場で活躍しています。
人生100年時代で高まるニーズ
「人生100年時代」といわれるように、高齢化が進む日本ですが、世界でも同様に進行しています。そして、加齢と共に発症する確率が高まる病気のひとつに心臓疾患があります。
人の血管は、加齢や生活習慣病の進行で弾力性が失われたり、血管壁が厚くなるといわれています。すると、血液の流れる血管の内側の空間が狭くなって血流が滞りがちになり、心筋梗塞など心臓や血管にまつわる病気につながりやすくなります。
つまり、高齢化の進行で心臓疾患の患者数が増加すると考えられているのです。
この傾向は同社にとっては、ニーズ拡大という追い風となっています。心臓外科手術で使用される機器やカテーテルという血管に通す細い管などを製造・販売する「心臓血管」事業に強みを持つ同社。輸液ポンプや輸液剤、各種測定器など幅広い製品を扱う「ホスピタル」、血液バッグや成分採血システムなどの「血液システム」などの事業も手掛けており、心臓疾患をはじめとする病気を様々な面でサポートする企業と言えます。こうした背景から、いまや世界160ヵ国以上で事業を展開しています。
カテーテル治療の機器で世界シェアトップ
こうした同社の事業機会を強固にすると考えられるのが、心臓疾患治療などにおける外科手術からカテーテル治療へのシフトです。
心臓血管分野のなかでも同社の主力はカテーテル関連製品。カテーテルとは、検査や治療などを行うために体内に挿入する柔らかい細い管のこと。そのカテーテルを心臓や脳の血管に挿入して血管の詰まった部分を治療するのがカテーテル治療です。患者の身体的負担が少ないなどのメリットがあり、世界中で普及しています。
カテーテルを血管に挿入するには「イントロデューサーシース」と呼ばれる機器のほか、曲がりくねった血管や複雑な岐路を通ってカテーテルを目的の場所まで運ぶ「ガイドワイヤー」が使われますが、同社はこれらの製品で世界シェアトップを誇っています。品質の良さはもちろん、長さや太さなど様々な治療ニーズに応える同社の生産体制が、他社にとって高い参入障壁となっています。
「日本発のグローバル企業」としてさらなる飛躍に期待
同社の2019年3月期決算は、売上収益5,995億円と前期比2.0%増加しています。一方、上期に発生した愛鷹工場(静岡県富士宮市)での出荷遅延が影響し、営業利益は前期比1.8%のマイナスとなりました。
それでも出荷遅延問題の早期正常化に取り組み、上期の「心臓血管」カンパニーの18%減益を、通期で3%減まで回復した同社。20年3月期では、生産性向上かつ安定供給に向けた組織体制強化費用を計上したこともあり、小幅ながら売上収益で5.9%増、営業利益で1.5%増を計画しています。
人にやさしい医療を届けて世界のニーズをがっちり掴む
高齢化による心臓疾患増加の追い風を受けながら、世界中の医療現場に高品質の製品を届ける同社。患者の身体的負担が少ないカテーテル治療は世界中で普及していますが、高齢者の患者が増えればそのニーズはますます拡大することが見込まれます。「人にやさしい医療」を世界に提供する同社を応援していきたいですね。
100円ショップ業界における同社の優位性はゆるぎないですが、既存店月次売上高の低迷が続いており、利益成長が鈍化するリスクを考慮しました。