保険料を節約して投資し隊~医療保険って入らなくてもいいってホント?

オレたち、お金のムダ省き隊!/ 日興フロッギー編集部

うっかり「やっちまっている」ムダを省けば、出費を抑えながらオイシイものを食べたり、趣味や旅行に回したり、将来に備えて投資したりがラクラク実現する! そんな夢をかなえるために結成された「お金のムダ省き隊」。この連載では、お金のムダ省き隊の隊員たちが、“お金のプロ”にコストカットの秘訣・裏ワザを聞きまくります。
「保険料を節約して投資し隊 ~治療費が高額になりがちながん。『がん保険』には加入した方がいいの?」を読む

意外と知らない医療保険の仕組み

ーーこんにちは、フロッギー編集部員および「お金のムダ省き隊」1号のS子です。前回、がん保険について伺いました。今回は、“それほど重要だとは言い切れない”とおっしゃった「医療保険」について聞いていきます。教えてくださるのは、ファイナンシャルプランナー・千﨑慶一さん。“手間をかけずトクすること”が大好物な隊員2号のC江と共に、いざ突撃!

S子

前回は、がん保険についての、アドバイスをありがとうございました。今回は、医療保険について教えてください!

千﨑

はい、わかりました。医療保険って、そもそもどんな時に保険会社が給付金を払ってくれる保険だと思いますか?

C江

病気になって医療費がかかった時です。病気になって医療費を払った後、領収書を請求して出した時に払われますよね?

S子

後は手術をした時や入院した時かな??

千﨑

正解です。医療保険は入院時と手術時しか保険金は出ません。そもそも、それすら分からない状態で保険料を払っている方が結構いらっしゃいます。テレビなどでたくさんCMが流れているので、皆さん入りたくなるようですね。

千﨑

医療保険は、保険業法では「第三分野」の保険に分類され、生命保険業(第一分野)と損害保険業(第二分野)のどちらの保険会社でも取り扱うことができます。また、会社によっては面談なしでも簡単に加入できるため、売りやすいという面があります。

医療保険の特約の種類を確認せよ

千﨑

基本は、医療保険は入院時と手術時しか保険金が出ないということ。これは必ず覚えていてください。医療保険には「主契約」と「特約」があって、主契約は「入院」「手術」に関してのみなんです。手術給付金は手術の種類によって倍数を分けている会社もあって、5倍、10倍、20倍、40倍と設定されている場合が多いです。

千﨑

また、入院給付金に関しては、通常、30日型や60日型、120日型、180日型、360日型、720日型などの設定があり、保険会社によって様々です。ここでも、自分のニーズを把握する必要があります。あとは、特約でオプションをつける形になります。どんなオプションがあると思いますか?

C江

えーっと、CMでよく見る、三大疾病に関する特約でしょうか?

千﨑

その通り! がん、脳梗塞、心筋梗塞の三大疾病は、日本の三大死因の上位3項目ですね。

千﨑

三大疾病の特約として、入院給付金の日数を無制限にできるオプションがあります。例えば、脳梗塞で倒れて2年間入院し続けても、特約があれば無制限で保険金が受けとれます。

千﨑

さらに、三大疾病になると、払い込みが免除される特約も付けられるようになりました。期間にもよりますが、終身タイプならば一生涯保障してくれる「三大疾病払い込み免除特約」もあります。

S子

なんかスゴイですね! ほかにも特約ってあるんですか?

千﨑

「先進医療特約」というものがあります。先進医療とは、保険がきかない治療の中でも、厚生労働省が先進医療と定めたものが対象となります。歴史が新しく、2007年から登場した特約なんですよ。

千﨑

2007年当時の先進医療特約では、通算1000万円まで、そして、2010年ごろからは、なんと保障額が2000万円までに変更されたんですよ。保険料は会社によって変わりますが、プラス月100円前後で付加することができます。
その他にも、通院特約や就業不能特約、女性疾病特約などがあります。

S子

前回、がん保険について伺ったのですが、医療保険でも、女性特有のがんに対する特約(女性特約)があると聞いたことがあります。こちらは、いかがでしょうか。

千﨑

がん保険に加入していれば、がんの種類を問わず、治療に関する治療や入院、手術などの保障を受けることができます。女性特有のがんだけが特別に治療費が高いわけではないので、がん保険に加入していれば、ある程度はカバーできますよ

千﨑

女性特約の加入費用は保険の保障内容や加入時の年齢によっても変わってきますが、500円程度から加入可能な商品もあります。ただ、保険に加入している間はずっと支払うことになるので、長い目で考えていく必要があるでしょう。

時代によって変わる医療保険

S子

色んなタイプの医療保険があるんですが、どう違うんですか。

千﨑

医療保険の内容はどんどん変わってきています。例えば、以前の医療保険では、入院について、10日間が免責で11日目から保障していました。医療機関側も入院が長くなる分、利益が出ていました。しかし、国の社会保障費の抑制方針に従い、現在は入院期間が短くなる傾向にあります。

千﨑

それにともなって、現在は入院1日目から保障されるように変わってきています。ただ、1泊2日をして初めて給付金が出るパターンもあれば、日帰り入院でも出るパターンもあるので注意が必要です。

千﨑

また、三大疾病特約の対象疾患にも会社によって変化が見られます。これまでの「がん、脳梗塞、心筋梗塞」から「がん、心疾患、脳血管疾患」に変ってきています。この違いは分かりますか?

C江

対象が少し広がった、ということですか?

千﨑

対象範囲がだいぶ広がっています。例えば、バイパス手術をした際、心筋梗塞の対象にならないケースもあります。一方、心疾患には狭心症なども含まれて範囲が広くなっています。また、脳血管疾患では動脈瘤、静脈瘤も含まれるようになりました。三大疾病特約が付いているか安心といっても、対象疾患の内容によっては保障も異なってきます。

C江

ここまで理解して加入するのは、正直難しいですね。

千﨑

保険会社や保険の商品によって対応が全く違ってきますので、この点は医療保険を選ぶうえで重要なポイントになるんですよ。

S子

明日の相場もわからないのに、将来なんの病気になってどの保障がどれだけ必要かなんて……わかるわけがない……。

ぶっちゃけ、医療保険は加入しなくてもいい?

千﨑

私の考えとしては、極論かもしれませんが、医療保険は加入しなくてもいいかなとも思います。少なくとも、企業で働いている間は必要性が低い。病院での診療に少し補える分があればとも思います。S子さん、1日の保障額はどれくらいあればいいと思いますか?

S子

うーん、1万円あったら嬉しいかな。差額ベッド代が出ればいいというイメージです。

千﨑

S子さんのように、1日1万円として、1ヵ月あたり30万もらえるというイメージをする人が多いです。CMの影響もあると思いますが、結論から言うと1万円以下の最低限の保障で問題ありません

C江

おお! 「高額療養費制度」を利用するということでしょうか。

千﨑

はい、その通りです。例えば、70歳未満の方が入院して100万円かかったとします。そもそも負担するのは3割なので「30万円」を支払うことになると思われますが、この制度を利用すると、年収約370万円〜約770万円以下の人ならば、自己負担額は87,430円で済みます。

千﨑

ここまで下がったら、医療保険は本当に必要かな? という気がしませんか。月々、保険料を払っているのも考えてしまいますよね。私自身は「医療保険は基本、無くてもいい派」です。どうしても加入していたいのならば、お守りとして、一番安い保険でいいのではないでしょうか。ぜひ見直してみてください。

千﨑

また、お勤め先によっては健康保険組合の「付加給付制度」という、高額医療費に上乗せして医療費を払い戻してくれる制度もあります。

千﨑

例えば、医療費の総額が100万円で、自己負担額が30万円(3割負担)のケースの場合、標準報酬月額が26万円以下の人の場合、自己負担限度額が5万7,600円となり、窓口で支払った医療費から24万2,400円が戻ってきます。

千﨑

さらに、付加給付制度のある健康保険に加入している人は医療費の負担がさらに軽減され、例えば、付加給付の自己負担限度額が2万5,000円に設定されている場合には、3万2,600円が追加で戻ってくる計算になります。こうした制度が適用できるかを確認してみてください。

C江

公的な保障だけでこんなに医療費を抑えることができるなんて! さっそく夫の勤め先の健保組合の保障内容を確認してみます!

“保険貧乏”にならないために保険を見直そう

千﨑

例えば、月々5000円の保険料を25年間払い続けたとしましょう。医療保険に150万円払った場合、何日入院したら元が取れますか? また、実際に入院する人の可能性はどれくらいあると思いますか?

千﨑

統計では、医療保険で払った金額の元が取れる人はほぼいないと言われています。また、日本人が生涯で入院する可能性は20%程度だとのことです。その分を投資に回すということも有効な選択肢だと思います。

千﨑

今後怖い病気は何かを考えると、すぐに思い浮かぶのは?

S子

がんです。

千﨑

そうですね。私は医療保険よりも、がん保険に入っておいた方がいいと思います。医療技術はどんどん上がり、入院日数は少なくなっています。その分、保険料は安くなっている。医療保険は抑えて、数千円のがん保険に入っていた方がいいでしょう。

C江

いやー、誰もが病気やケガになるリスクを抱えているので、医療保険って必ず入るべきものだと思っていました

千﨑

そうした思い込みを持っている方は多くいますね。たとえば、お子さんが生まれたら多くの方が「学資保険」に加入されると思います。教育費の貯蓄を目的として、あらかじめ設定する満期に向けて保険料を積み立てていく商品です。

千﨑

ただ、現在は元本割れする商品も多く、また途中解約すると損になるなどのデメリットもあります。それならば、自身で運用するという選択肢もある。「学資保険」という商品に頼ることだけが正解ではありません。多くの選択肢と比較して、自分に合う方法で教育費を準備できるといいですね。

千﨑

「医療保険」「学資保険」など、保険料を支払っていすぎて、貯金をできないという“保険貧乏”の人も少なくありません。そうならないためにも、不要な保険を見直して、賢くお金と付き合っていくことが大事だと思います。

S子・C江:どうもありがとうございました!

後日談・「隊員たちのやってみた!」

S子

・まず夫の加入している保険について、実は理解していなかったことを反省して、改めて「どんな保障内容なのか、また以前と比べて良い条件の商品があるならば知りたい」と、担当者に伝えました。その際に、収入や家族の状況の変化も伝えて保険を見直しました。
・将来「どんな病気になるのか」「いくら必要なのか」を、ざっくりとでも見積もることが難しすぎると感じました。そこで、自分がどんな病気にかかるリスクが高いのかを調べるため遺伝子検査を受けたり、健康寿命を伸ばすために運動を始めました。
・なるかどうかもわからない病気のために、お金を払って備えるよりも、健康をキープするためにお金を使った方がいいんじゃないかしら。

C江

・夫の勤め先の健保組合に確認したところ、かなり保障が手厚いことが判明。加入している商品は払済保険にすることにしました。
・ほかにも、自分で勉強しないと、知らず知らずのうちに余計なことにお金を払ってしまうことを痛感して、FPの勉強を始めました。保険の仕組みって本当に難しい。理解して加入している方はどれぐらいいるのでしょうか? 世の中のお金の仕組みを知る勉強を始めるきっかけになって本当に良かったです。