ROEで読み解く日清食品HD

水曜日はROEをトコトン!/ 日興フロッギー編集部AN

「ROEで読み解くファーストリテイリング」を読む
3月期決算発表のまっただ中ですね! 気になっている企業の今期予想が発表されたら、ROEをチェックして、これからの業績を考えてみましょう。
ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。

ROE(%)=1株あたり利益(EPS)÷1株あたり自己資本×100
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)

生産コストに正面から向き合っている企業

売上は好調であるにもかかわらず、利益やROEが伸び悩んでいる企業があります。そういった時は、その企業がいま、どのような種類のコストに課題を抱えているかをチェックしてみましょう。きちんとそのコストに向き合って、解決する兆しや、追い風となるイベントがあれば、低迷する株価も上昇に転じるかもしれません。今回はそんな生産コストにしっかりと向き合っているケースをご紹介します。

case9:日清食品HD

今回取り上げるのは、誕生60年を迎えた「チキンラーメン」や「カップヌードル」でおなじみの「 日清食品HD 」です。NHKの連続テレビ小説「まんぷく」で、創業者の安藤百福(ももふく)氏が取り上げられていたのは記憶に新しいところです。カップラーメン分野では国内トップシェア。2018年3月期まで、3期連続で増収営業増益を達成しています。

ROE10%が中長期目標に

同社の2018年3月期ROEは8.2%、2019年3月期のQUICKコンセンサス予想ベースでも8.6%と、それほど高い水準とは言えません。ただ、中期経営計画では、中長期の目標としてROE10%を掲げているほか、2020年度に時価総額1兆円を目指しています(2019年4月24日時点で8065億円)。カップヌードルを中心にグローバルでの収益拡大を実現することで、目標達成を目指しています。

コスト増を補うため、6月に値上げも

そうした中、ここ最近の課題として浮き彫りになっているのは、「原材料費の高騰」と「物流費の上昇」です。エビや肉などの具材や包材価格の上昇がコストアップに繋がっているほか、トラック運転手の不足などにより輸送費が上昇し、利益を圧迫しているものとみられます。また、その影響で株価も2018年以降伸び悩んでおり、コスト増の解消と、さらなる収益の柱を生み出すことが急務となっています。

上記のような状況を受け、日清食品HDでは6月1日(土)出荷分から4%~8%値上げすることを発表しました。食品メーカーでは小売価格を据え置き、内容量を減らすことで「実質値上げ」、つまりコストダウンで利益を確保することがあります。しかし、同社では小売価格そのものを引き上げて、売上アップ、利益の確保を狙う模様です。

消費増税はむしろ追い風?

秋に消費増税を控える中、コスト増が理由とはいえこの時期に価格を引き上げると、販売数量が減少する可能性ももちろんあります。ただ、主力のカップヌードルのコンビニ販売価格はそれでも200円弱にとどまるとみられ、1食あたりの商品価格としては依然として低価格のグループに入る見込みです。消費増税後は、低価格商品はむしろ売上が伸びる可能性もあり、カップ麺をはじめとした同社商品のニーズは高まるのではないでしょうか。

新スマート工場でコストダウンへ

さらに同社では、生産工程のコストコントロール力を高めるために、滋賀県栗東市に「次世代型スマート工場」を建設しました。この工場ではカップヌードルがほぼ無人で生産されており、不良品発生率は100万分の1にまで抑えたとのこと。約700台のカメラで品質管理し、従来と比べ人員コストを半分以下にできる見込みです。同じような仕組みが世界中の同社の工場に広まれば、大きなコストダウンにつながるかもしれませんね。

<ROEの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①から日清食品HDを見てきました。世界で売上は好調なものの、原材料コストや物流コストが利益を圧迫している同社。生産現場におけるコスト削減を世界中の工場で実現できれば、「世界のカップヌードルメーカー」として注目が集まるかもしれませんね。

本記事は、ROEを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。