「会社四季報」読みこなしの達人である渡部清二さんに、その活用法についてわかりやすく教えてもらうのがこの連載企画です。今回は、個人投資家の間で非常に高い人気を誇る株主優待についてクローズアップ。優待株選びで「会社四季報」をどのように役立てられるのかについてレクチャーしてもらいます。渡部さんが自分で考案した新しい投資指標も登場するので目が離せません!
第14回「消費増税時はニッチ・シェアリング・キャッシュレス銘柄に注目!」を読む
3月決算企業の配当や株主優待が届くのは6月頃から
各々の上場企業が開催している株主総会が終わった後になりますね。3月決算企業の場合、本決算の結果を発表するのが4月下旬〜5月上旬で、株主総会は5月末〜6月に開催されるというスケジュールになっています。
国際的には1年の最後である12月を決算期としている企業が主流ですが、日本の上場企業の6割以上は3月と定めています。したがって、大半の企業の株主優待は6〜7月頃に送られてくることになりそうです。
決算期が3月ではない企業の場合も、期末月を起点に1ヵ月弱〜1ヵ月半後に決算発表、3ヵ月以内に株主総会がおこなわれます。正確な時期を知りたければ、各社のホームページや日本取引所グループのホームページでも確認できます。
株主優待は日本の上場企業特有の制度で、海外ではあまり例を見ません。そのルーツは1899(明治32)年の「 東武鉄道 」と言われており、同社の社史によれば、開業と同時に株主優待を導入したそうです。
「会社四季報オンライン」で配当利回りをチェック!
もちろん、「会社四季報」は株主優待に関する情報も充実していますよ。「会社四季報」の巻末には、株主優待を実施している企業とその内容が掲載されています。
掲載ページをめくって自分好みの株主優待を実施している企業を見つけ出すのも一考ですが、よりお得な内容になっているところに焦点を当てるという作戦もあります。それは、優待利回りの高い企業をピックアップするというものです。
優待利回りとは、株主優待の内容を現金価値に換算したうえで、それが1株当たりでどの程度の利回りになるのかを示した数値です。つまり、配当における配当利回りと同じような感覚でおトク度を判断できるわけです。
有料メニューとなりますが、「会社四季報オンライン」のスクリーニング機能を用いれば、優待利回りで銘柄をピックアップできます。「検索条件を作成する」から「株主優待→優待利回り(%)」の順に選択し、検索ボタンをクリックすればOKです。
ただ、いくら優待利回りが高くても業績が不安定だと、株価の下落や減配、無配(配当の減額・停止)の恐れも出てきます。優待利回りとともに、収益性や財務健全性、業績修正などといった検索条件も加えれば、そういった不安を抑えられそうです。
人気優待品のおコメに目をつけるならROEを要チェック!?
現金に近い性質のQUOカードが人気を博していますが、自社製品やサービスを優待品としている企業も多く、こちらも高い支持を集めています。たとえば「 カゴメ 」のように、かねてからその会社の製品・サービスのファンだという人たちが、優待目当てで株主になっているというケースもよく見受けられます。
一方、日本人にとって主食であるおコメを優待品にしている企業も多く、こちらも個人投資家の間で大人気です。しかも、おコメの場合は新米のシーズンに届くケースが多い点も喜ばれているようです。
そこで、私は新たに「ROE」という独自の投資指標を考案してみました。以前から同じ略称の指標は存在していますが、そちらは「リターン・オン・エクイティ(自己資本利益率)で、私のオリジナル指標のほうは「ライス・オン・エクイティ」です。
その計算式は、「優待でもらえるおコメの重さ(kg)÷その銘柄の買付代金(万円)」です。投資1万円当たりでどれだけの重さのおコメを手に入れられるのかを示したもので、その数値が高いほどおトクにおコメを手に入れることができます。
おコメの優待を実施している企業をこのROEで見比べてみると、最もROEが高かったのは「 アトム 」で、10位の「 マックスバリュ東海 」と1.9倍近い差がありました。このように、同じような優待内容であってもおトク度には少なからず違いが見られますから、きちんと比較してみたほうがいいでしょう。
アトム 、 ティア 、 コロワイド 、 カッパ・クリエイト 、 りらいあコミュニケーションズ 、 田中精密工業 、 前澤化成工業 、 マックスバリュ東北 、 久世 、 マックスバリュ東海
さて、私の連載企画もいよいよ次回が最終回です。これまでご紹介した「会社四季報」の上手な活用法をまとめていきたいと思いますので、ぜひ復習する意味でも最後までお付き合いくださいませ!
・3月決算企業の場合、株主優待が届くのは株主総会を終えた6月以降に
・「会社四季報」の巻末には、株主優待を実施している企業の情報が載っている
・「会社四季報オンライン」なら優待利回りで銘柄をスクリーニングできる
・おコメの優待品に注目するなら、ROE(ライス・オン・エクイティ)で見比べよう