「会社四季報」をカンペキに読みこなしている渡部清二さんから、カンタンで役立つ活用法をレクチャーしてもらうのがこの連載。前回に引き続き、2019年度の主なイベントと注目ポイント、その関連銘柄について教えてもらいます。多くの人が気になる消費税引き上げ。そういった歓迎しづらいイベントでも、むしろ株価が上がる可能性のある会社が見つかるのでしょうか?
第13回「2019年度は『改元』関連と『70周年企業』に注目」を読む
ラグビーW杯、増税、新国立競技場竣工など、注目イベントがズラリ!
まずは主だったものを順に挙げてみると、9月にはラグビーのワールドカップ日本大会を控えています。アジアでは初の開催となるだけに、近隣の国々からも観客が訪れそうです。そして、10月1日(火)には消費税の引き上げが予定されています。またその日、楽天が第4のキャリア(通信事業者)として携帯電話サービスに参入する見通しです。11月には神宮外苑に、東京オリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」が竣工予定です。12月には有明アリーナ(体育館)も竣工する見通しで、「いよいよ開催が目の前に迫ってきた!」というムードが一気に高まってきそうです。
さらに、年が変わって2019年度の終盤に入ってくると、米国では2月から州ごとに予備選挙や党員集会が行われ、大統領候補の指名準備が進められていきます。その動向は、世界的にも大きく注目されることになるでしょう。
やはり、後半のイベントで最大の関心事は消費税の引き上げ!
やはり、国内の景気を大きく左右しかねない消費税の引き上げです。これを機に消費を手控える動きが出てきそうですし、デフレ(物価の下落)に逆戻りしてしまう恐れがあると私は考えています。
実は消費税引き上げの1年前の時点で、すでにデフレの兆しを察することができたのです。「会社四季報」2018年4集秋号において、中国・四国・九州を地盤にスーパーを展開する「 イズミ 」に関して記者が記したコメントに「デフレ感」という言葉が用いられています。
そのうえ、「同社の一斉値下げはまれ」と書かれていました。つまり、従来ならばやらないことにまで取り組む必要に迫られるほど経営環境が厳しいということです。
他にも滋賀県が地盤のスーパー「 平和堂 」は、「毎日が低価格」という路線を2018年以前から打ち出していました。また、「かっぱ寿司」の「 カッパ・クリエイト 」も1皿50円での提供を目玉に業績を建て直そうとしてきました。
「 ヤマトホールディングス 」が宅配料金を引き上げたり、食品でも価格改定が相次いだりするなど、世の中は値上げの方向に動いているように思われます。ところが、実際にはそうではありません。
また「 メルカリ 」のフリマサービスや「 カカクコム 」の比較サイトが人気を博しているのは、モノやサービスに支払うお金をできるだけ抑えようとするムードが強まっていることが一因と考えられます。リサイクルやリユースに加えて、シェアリングエコノミーも時代のトレンドです。消費税が引き上げられると、さらに倹約を心がけるようになって、デフレが進むかもしれません。
消費増税で注目すべきは「ニッチ」「シェアリング」「キャッシュレス」
リーマン・ショック以来、10年ぶりに価格を改定した接着剤最大手の「
コニシ
」のように、デフレが感じられる中でも逆に値上げに踏み切ることができる会社が該当します。AIやロボットなどに取って代わられないアナログ的なビジネスや、他にやっている会社がほとんどないニッチなビジネスなどに多いので、「四季報オンライン」サイトの中央上部にある検索マドに、「ニッチ」などのキーワードを入れて検索してみるといいでしょう。
「世界シェア1位! ニッチな市場をガッチリつかむ企業セット」を読む
もしくは、金融や携帯電話、公共交通機関など、これまで国の規制によって守られてきて料金が海外と比べて割高な業界において、まったく新しい手法で価格破壊を起こすような会社も脚光を浴びそうです。海外で言えばライドシェアのウーバーであり、日本の会社ではシェアリングに舵を切る「
ソフトバンクグループ
」が挙げられるでしょう。
「【2018年注目テーマ②】経済効果は10兆円以上!? いま注目のシェアリングエコノミー企業」を読む
さらに、消費増税を実施した場合に消費が落ち込まないように、政府はキャッシュレス決済で5%のポイント還元を実施する方針です。これは国内でキャッシュレス決済を普及させることも狙いとなっています。
「『PayPay』100億円還元キャンペーンが終了! QRコード決済を支える企業たち」を読む
私がこうした構想に関連する銘柄として注目しているのは、プリペイドカードやポイントサービスなどのシステムを開発する「 バリューデザイン 」です。また、ソフトバンクグループも「 ヤフー 」と共同でPayPayというキャッシュレス決済に力を入れています。
ただ、デフレに逆戻りするのは政府にとっても非常に困ることですから、消費税の引き上げを見送る可能性も十分に考えられます。したがって、今後の動向を注意深く観察したほうがいいでしょう。
さて、この連載シリーズも残すところ2回。次回は、個人投資家の間で大人気の株主優待にスポットを当てる予定で、私が独自に考案した「株主優待指標」も紹介しますから、どうかお楽しみに!
・今年度後半で最も気になるイベントは、消費税の引き上げ
・消費税が引き上げられると、デフレに逆戻りしてしまう可能性が考えられる
・デフレ局面でも値上げができる会社や、規制業界で価格破壊を進める会社に注目!