「ROEで読み解くJT」を読む
日本株マーケットの約6割の売買シェアを握る海外投資家。そんな海外投資家が重視する指標の1つがROEです。ROEとは、「Return On Equity」の略称で、日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言います。ROEは1株あたり利益(EPS)を1株あたり自己資本で割ることで計算でき、5%、10%というようにパーセンテージで表されます。日本企業の場合、一般的に8%が資本効率の1つの目安であると言われ、それを上回ると資本効率が良いと判断されます。
(ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100)
高ROE&経営目標で高く評価されているケース
前回は、ROEが高いにも関わらず、業績の先行き不透明感により、株価が低迷しているケースを見てきました。今回は、ROEが高く業績も好調なだけでなく、経営目標としてしっかりとROEを打ち出すことにより、投資家から高く評価されているケースをご紹介します。
case2:ソニー
今回取り上げるのは、ゲーム機「PlayStation®」や、液晶テレビ「BRAVIA」などを手掛ける「 ソニー 」です。同社は、リーマン・ショック以降、当期利益がマイナスの時期もありましたが、2016年3月期以降3期連続で黒字化。リストラや販売戦略の転換などの構造改革が足元でようやく実を結び始めています。
2018年度の予想ROEは20%台へ
ソニーのROEは2018年3月期実績は18.0%、2019年3月期の予想ベースでは20%台の大台に乗せており、一般的な日本企業の目安である8%と比べると、非常に高い水準にあることがわかります。その前の期である2017年3月期が3%に満たなかったことを踏まえると、大きくジャンプアップしたことになります。
ゲーム分野が好業績をリード
ROEが大きく改善している主な理由は、PlayStation®などを含む「ゲーム&ネットワークサービス分野」 をはじめ、業績が非常に好調に推移しているためです。ハードであるPlayStation 4の販売自体は頭打ち傾向にあるものの、ネット対戦などが可能になる有料会員サービス「PlayStation Plus」の売上が大きく業績に貢献。同分野のセグメント別営業利益は、5期連続で増益となり、全体の2割超を占めるまでになっています。
ROEが最重要の経営指針に
ただ、こうした結果は決して偶然のものではありません。ソニーは2015年2月に発表した第二次中期計画(2015~17年度)の中で、ROEを最重要の経営指針とすることを決め、その水準を10%以上と決定しました。それまでの規模を追うような経営から、収益性を重視する姿勢に転換したことを体現したと考えられます。また、事業ごとに資本効率の目標値を設定するなどして、収益性を重視した経営を推し進めてきました。それが、高収益事業の成長に繋がり、その姿勢も投資家に評価されていると考えられます。
現在もそれを引き継いだ第三次中期計画(2018~20年度)を実行中であり、これからも株主にしっかりと向き合った、収益性や資本効率を重視した経営に期待が集まります。
①これからの業績を考える
②株主還元策を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①と③からソニーを見てきました。好調な業績はもちろん、株価を大きく押し上げる要因になります。しかし、それを支える経営者の意識や目標も、業績に多大な影響を与えます。業績や実際のROE水準に加え、こうした経営指標としてROEが設定されているかどうかも、投資先を検討する際にはチェックしてみてはいかがでしょうか。