「PERで読み解く日本郵政」を読む
ようやく落ち着き始めた日本株市場。そろそろ今年の投資戦略を練り始めている人も多いのではないでしょうか。そんなときにまずおさえておきたいのがPERです。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
株価とPERが資源価格に左右される業種も
商社や資源開発会社などの株価・PERは、石油や鉄鉱石といった資源の価格に大きく左右されるケースがあります。もちろん経営者の手腕や、株主還元策などによっても株価は動きますが、それ以上に業績に与えるインパクトが大きいため、投資家も資源価格に注目せざるを得ないのです。そこで今回は、資源価格の動向に株価やPERの運命がかかっているケースをご紹介します。
case22:国際石油開発帝石(INPEX)
今回取り上げるのは、日本を代表する原油・天然ガスの生産・開発企業「 国際石油開発帝石 」です。同社は世界20ヵ国以上で資源開発を手掛けており、資源の探鉱から掘削、生産など、いわゆるエネルギービジネスの「上流部門」を主な事業としています。
資源生産量のうち7割が原油関連
予想PER(東洋経済予想)は24.6倍と業種平均を上回っていますが、2018年春ごろには50倍に達していたことを考えると、今は大きく低下していることがうかがえます。その要因は主に原油価格にあり、一時1バレル=70ドルを超えていた原油価格が、最近では50ドル台にまで落ち込んでしまっている状況です。同社が採掘する資源生産量のうち約7割が原油関連事業であり、原油価格の動向が業績や株価を大きく左右しているのです。
原油価格を押し下げる2つの要因
2018年の10月以降、原油価格が下落している主な理由として下記の2点を挙げることができます。
1.米中貿易摩擦などによる世界景気減速懸念
2.米国によるイラン制裁が肩すかしの内容になったこと
米国のトランプ大統領の保護主義政策に端を発する、米中貿易摩擦の影響は、いまや実際に企業業績を下押しするまでになっています。その影響で、世界的に景気が減速し、経済活動の源である原油の需要が減るのではないかという思惑が原油価格を押し下げているのです。
また、こうした中でトランプ大統領が、イランにおける深刻な人権侵害や核開発問題などを理由に、2018年11月5日イランへの経済制裁を再開しました。その制裁の中には、原油の輸出禁止も含まれているのですが、中国やインド、日本など世界経済に大きな影響がありそうな8ヵ国への輸出に対しては、180日間の猶予を設けました。これが「イラン制裁による原油の供給量減少は軽微にとどまる」との思惑を呼び、原油価格の下落につながったのです。
原油価格に底打ちの兆しも
しかし、すでにこうした材料は原油価格に織り込まれている可能性が高いうえ、主要産油国による協調減産(話し合いによって原油価格を維持する目的でわざと生産量を落とすこと)も実施されていることから、近いうちに原油価格は底打ちに転じる可能性があります。そう考えれば、現状のPERや株価の水準は、次第に上昇に転じるかもしれません。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①と③から国際石油開発帝石を見てきました。事業の内容から、株価やPERが原油価格の影響を受けやすい同社。原油価格の動向を決めるのは、世界景気に対する投資家の思惑や政治情勢であるケースが多いです。商社や資源開発会社の場合は、資源価格や世界のニュースにも目を向けながら、PERを読み解くようにしてみましょう。